『戦後日本病人史』と『20世紀にっぽん殺人事典』




  メルマガ年間購読料をいただいておいて、追い討ちをかけるようでなんですが、川上武編『戦後日本病人史』(農文協、12,000円)と福田洋『20世紀にっぽん殺人事典』(社会思想社、4,600円)をお薦めします。
  後者の版元は異変が起きてしまい、入手できないかもしれません。

  この2冊はまったく厚さが同じで、並べて上に珈琲を置いてもこぼれませんでした。そういう問題ではなく、レファレンス・ブックとしても価値が非常に高いうえに、通読それが無理なら目次を見て興味深い節だけを拾い読みすれば、賢くなれると思います。

『戦後日本病人史』は、目次だけで24ページもあります。
  第2章「経済復興期の病人」の五節は「らい予防法廃止までの遠い道」。第3章「高度経済成長から成人病の時代へ」の二節は「がんと闘う病人」で、さらに(1)がんの増加、(2)改善した治療率、延命率などと続きます。第9章「認定と補償の責任論」などという章タイトルに、私などはむずむずしてしまいます。第10章「精神障害者と心を病む人びと」の例えば四節は「心の病の戦後史」、第12章は「寝たきり・痴呆老人の戦後史」、第13章「難病患者の苦悩と挑戦」の三節の(1)には「あるALS患者の体験から」もあり、その網羅性に驚かされます。
  これらが第T部として「戦後日本病人史の諸相」と大きく括られ、第U部「現代医療のパラダイム転換と病人・障害者」の例えば第2章は「性革命から生殖革命へ」となっている、といった具合。

  本文の組み方も非常にゆったりしていて、分厚いわりにはスムーズに読めます。各ジャンルの参考文献も網羅的に引用、紹介されており、医療分野に関心のある人には、あらまほしき作りです。文章の基調は"きれいごとすぎる"つまり"左翼っぽい"嫌いがありますが、とにかく「病」に関するデータベースとして使える本であり、盛り込まれた統計や歴史的記述も正確です。

『20世紀にっぽん殺人事典』は、もし手に入らなければ、日本の殺人事件のデータベースとして、http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/j.htm があります。
  同書はレファレンス本として、つまりニュースを一過性のニュースとしてだけ見るのでは飽き足らない人に、役立ちます。昔から、おかしな事件はたくさん起きており、本当の「特色」は何なのか、などを見極めるのに必要なデータです。類似本のなかでこれをお薦めするのも、その正確さゆえです。

  本屋さんに行って、新刊ばかりあさらず、ときどきこのような役立つレファレンス系の本も手にとって見ませう。


(「ガッキィファイター」2002年11月11日号に掲載)





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