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野口悠紀雄『「超」文章法』(中公新書、780円)




 この方は、マニュマル本のおもしろさを日本人に広く知らしめた功績大なるものがあります。また、マニュアル本に揶揄や皮肉を存分に入れ込むことに成功した人でもあります。

《本を書くことの最大のメリットは、書いている途中で発見があることだ。あるいは、それまで漠然と考えていたことを、はっきりと意識することだ。「知らないことがあったら、本を書いてみよ」と言われるほどである》(プロローグ、P5)
  確かにそうかもしんないけど、誰がそう言ったのよ。

《私は、インタビューの機会を大事にしている。話しているうちに、それまで気づかなかった視点を見出すことが多いからだ。インタビュアーの言葉に見出すのではない。私自身が思いつくのである。それをメモしている。インタビューを受けているのではなく、じつは、こちらがインタビューしているのだ(ただし、これは、インタビュアーが有能な場合のことである)》(第1章 メッセージこそ重要だ、P34)
  ちゃっかり( )内でも、この方はよく皮肉をかまします。

  ポイントを的確に、ばしっと断定するのもこの著者の魅力の一つです。
《複雑な論理や抽象的な概念をわかりやすく説明し、印象的に伝えるための方法は、比喩、具体例、そして引用である。〔中略〕これらをうまく使えるかどうかは、蓄積してきた知識量に依存するところが大きい(とくに引用は)。だから、一夜漬けは難しい》(第4章 筋力増強――説得力を強める)
  この人、たぶん性格は悪いと思う。他人のことは言えませんがね。

《何十回も推敲を重ねた原稿を、勝手に直される場合がある。雑誌ではあまりないが、新聞ではよくある。大新聞においては、かなり頻繁にある。〔中略〕インタビューを原稿化してくれるライターさんはこちらの修正を受け入れてくれるが、大新聞の記者となると、自尊心が強いためか、もとの原稿どおりにしていただくことすら簡単にゆかない。〔中略〕こうした人たちが「言葉」を扱う職業についていることに、私は怒りを覚える》(第6章 化粧する――100回でも推敲する、P224)
  また出ました皮肉です。しかも話が逸れています。いいですよ。実は、こういう文章こそが、この方の怖いところかもしれませんね。私なら大新聞とは書かずに、実名でいきますがそれがどうかしましたか。

  あとがきでも、やっぱり、かまし続けます。そのような断定には、哲学が含まれること、しばしばです。
《「何が好きか」と表明しても人格が明らかになるわけではないが、「何が嫌いか」の表明は人の内面を暴露する》(あとがき、P253)

  本書の副題は「伝えたいことをどう書くか」。インターネット時代に、「書く」量の総和はおそらく人類史上すでに最高地点に達しており、これから下がることはないでしょう。そういう基盤で読まれる本です。




(「ガッキィファイター」2002年12月16日号に掲載)





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