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タイトルは、いかにも小難しそうな専門書然としていますが、現代日本の医療問題について、実に的確にまとめられた好著です。
サラリーマンの医療費負担増に、なぜ医師会が反対しているかと言えば、儲からなくなる、という理由です(「来院者が減ることによる病院経営の悪化」と言っていますが同じことです)。私のような自営の国保加入者は、毎月6万円前後も払い続けているわけですが、にもかかわらず医療費はずっと前から「3割負担」です。
個人の負担が重くなるからという理由だけで制度改革を潰してしまうと、あらゆる改革は前に進みません。ですから問題は、その改革に、負担増を強いられる人々を説得するだけの正当性があるかどうか、ということになります。あたりまえのことですが。
旧態依然の医療制度にあって、「特区」を設けようとの試行がすでに始まっています。どう考えたらいいのでしょうか。
可能なら、性と生と病と老と死にかかわる医療と法の諸問題をそれなりに把握したうえで、日本の医療制度にも問題意識を持つ人が増えたらいいのにと願い、本書を薦めます。
本書を推す第1の理由は、執筆者が集団でよく議論を重ねて、分担執筆されていることです。第2に、それだけに独善的にならず、つまり予想される反論を踏まえて書かれているため、一般読者にも説得的だからです。第3に、注釈がおもしろい。
例えば「第1章 医療施設に関する制度」の冒頭は「I.わが国における医療制度の略史」という、これまた恐ろしいほど味気のない章−節タイトルではありますが、本文はよくこなれています。
《明治維新以前においては、医師のほとんどは漢方医であって治療はもっぱら患家における薬の投与が中心であったから、入院加療という考え方はなかった》というのが本書最初の記述ですが、私はこのような潔(いさぎよ)い筆致に好感を覚えます。要するに、なるほど、と思うわけです。
この文中にある「漢方医」には注釈番号(1)がつけられており、その注釈を見ると、以下のように書かれています。一般的に考えられているものより、この手(集団で議論されて書かれた本)の注釈は(本文には入れられなかったけれど、分担執筆者がどうしても触れておきたかったものだけに)示唆に富む記述が多いのです。
《(1)もっとも漢方という単語は、明治維新以降、それまで「蘭学」といわれていた西洋医学が主流になっていった中で、それまでの伝統的な医学を西洋医学から区別するために後付けで与えられた名称である》というような注釈が各所につけられており、なるほど、の連打です。
生殖補助医療、中絶、安楽死、緊急医、精神病治療、感染症、脳死と臓器移植、末期医療など、実に多彩なテーマが各分野の専門家によって、しかも充分な論議に基づいて手際よくまとめられています。
このようなタイトルと編集では、売れなくて良いと思って作っているとしか思えないのですが、本文は奇跡的に含蓄ある良書だと断言しておきたいと思います。
(「ガッキィファイター」2003年2月18日号に掲載)
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