テレビ朝日アナウンス部『アナウンサーの話し方教室』(角川oneテーマ21、686円)
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本書は、《アナウンサーを目指している人たちのために書いたものではあり ません。人とのコミュニケーションを大切にしたいと考えている人に読んでもらえれば と願ったものです》。(P13)
今年6月に文化庁が発表した国語に関する世論調査で、例えば「流れに掉さ す」がわからない人は63・6%、「確信犯」の意味がわからない人は57・6%、 「役不足」は同じく62・8%もありました。
流れに掉さすを逆の意味にとっている人が多い、という話はよく聞きますし、 まあここまで誤用が進めば「意味が転じる」というところまであと一歩ですが、 「彼は確信犯でやっている」というふうに言った場合に半数以上が「わからな い」というのは、ちょっと困ってしまいますね。
とりわけ「役不足」ともなれば、何かを仰せつかったとき「いやあ、私には 役不足で」と謙遜したつもりが、本来の意味からすると、「私ともあろうもの に役目が軽すぎ!」と言っていることになってしまいます(この三語に関して 正しい意味は同書P11〜12を)。
正しい日本語とか間違えやすい常用句といった、この手の用語集はけっこう ありますが、しかし、本書は放送の現場から書かれているので、とても実用的 です。つまり、今も日常でもよく使われる言葉ばかりであり、誤用すると赤っ 恥をかく日本語が、効率的にピックアップされています。
《「依存」を「いぞん」と読む人が増えていますが、本来は「いそん」と読む べきで、「いぞん」と読めば「異存」になります。〔中略〕
読み方を間違えやすい言葉を以下に挙げておきます。
よく使われる単語では、「他人事」は、たにんごとではなく「ひとごと」。 「発足」は、はっそくではなく「ほっそく」。〔中略〕
ニュースなどで出やすい単語としては、「年俸」は、ねんぼうではなく「ね んぽう」。〔以下略〕》(P142〜P144)
《二つ以上の言葉が混同されがちなものもあります。
「おざなり」と「なおざり」の違いはおわかりでしょうか。〔中略〕
素人はだしという言葉も存在しません。〔以下略〕》(P148〜P149)
このほか、例えば「この映画はご覧になられましたか」は二重敬語になって しまうとか(P77)、「元旦の朝」や「犯罪を犯す」や「一番最初」は重複表 現なので、おやめなさいとか(P163〜164)いった、きわめて実用的な注意だ けでなく、なるほどと膝を打つ話も満載です。
《テレビの世界には「放送禁止用語」というものがあると思っている人がいる かもしれませんが、実際にはそうした規定はありません。ただ、差別表現やワ イセツな表現などは、放送上好ましくない言葉として留意しています》(P15 0)
私自身、活字系の記者から「テレビのタブーについて特集を組みたいので詳 しく話せ」と言われたことはあります。彼の所属する出版社からは「これはス ポンサーの関係で使ってくれるな」と訂正を求められたことはありますが、こ れまでテレビやラジオでそのような要求をされたことは一度もありません。た だし、私が「くだらない」と思っているニュースに関しては、俺に話を振ると ヤバいよ、という暗黙の了解はありますが。
話を戻します。
テレビ朝日のアナウンサーが、「片手落ち」と言ったゲストの言葉尻をとら えて「ただいま、不適切な発言がありました。お詫びして訂正いたします」な どとしゃしゃりでる場面を私は何度も見たことがありますが、同局ですら公式 にはこういうことになっています。
《差別表現として取り上げられることが多い言葉に「片手落ち」がありますが、 そうした障害を持つ人に対して使われなければ差別表現ではありません。「片 手落ち」というのは、"片方に対する配慮が欠けていること、えこひいき"を意 味します。この言葉の語源は、人間ではなく「天秤」で、もともと差別的な発 想はありません》(P150〜P152)
ただし、この言葉を聞いて気分を害する人がいるかもしれない、という配慮 はあっていい、例えばこのように言い換えたらどうか、という趣旨の解説が同 書には続いて書かれており、ご一読を薦める次第です。
なお、私は書き言葉に関してはいちおうプロなので知っていましたが、話し 手としてど素人ゆえ、その道のプロにとってはイロハのイとはいえ、例えば以 下のような原則がためになりました。
話上手になるための法則は――
《お腹から声を出す。〔中略〕口を縦に開き、話の最後はしっかりとしめくく るように心掛けるだけでも十二分の効果が得られるはずです。そこに、もうひ とつだけ付け加えるとするなら、できるだけ、いい姿勢を保つようにしてくだ さい》(P53〜P54)
はい。わかりました。努力します。
(「ガッキィファイター」2003年10月21日号に掲載)
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