プレスプラン編集部編『タバコを吸わせろ』プレスプラン、1,600円

 7月1日から、またタバコの税金が上がります。私は吸いません。正確に言えば、10年ほど前まで吸っておりましたが、たいていかつての喫煙者が「自己肯定の道具」として過激な喫煙運動の先頭に立つのではないか、という仮説を否定しきれないので、むしろ禁煙運動には禁欲的にやってまいりました。

  ただ、タバコの匂いには非常に敏感になりましたし、食事中に横でぷかぷかやられると、お皿を逆さにして頭から中身をかけてあげてもいいかな、くらいのことは思いますが、それだけです。

  会社でも公共空間でも、あるいは自宅ですら、愛煙家がいかに肩身の狭い思いをしているか、ということへの推測くらいは非喫煙者もしておいたほうがいいように私は思います。
  もはや、「紫煙を非喫煙者に吸わす権利はおまえらにはない!」との論理の前に、いかなる愛煙家も返す言葉はない時代に、すでに突入しております。

  独裁者ヒットラーが世界を代表する喫煙撲滅運動家であったことも、愛煙家が税金を相当に負担していることも、少しは知っておいてほしい。近所で、夜ぽつねんと玄関の外でタバコを吸っている男性を見ると、その家を建てるためにあくせく働いた彼らに対し、心から同情したくもなります。くそばばあ。

『タバコを吸わせろ』というタイトルに、まず私は惹かれました。そのような声は、あっていいのです。
  誤解をしてもらっては困るのですが、私は「タバコの有毒性」については、『買ってはいけない』グループより熟知していると、かつて対談をしたときにそう思いました。しかし、ディーゼル車のほうがもっと有毒ですし、「お願いだからタバコを静かに吸わせてほしい」という声にも、やはり静かに耳傾けたいと思っています。

  本書は「未成年者にも喫煙権がある」とか「タバコがだめならコカインだ」
「喫煙者倍増計画」といった、暴論としか受け止められないであろう暴論も少なくないのですが(タバコと酒がOKなのは、国家が税金がとりやすいという以外には正当性を見つけがたいのは事実です)、罰則つき路上禁煙条例を施行した千代田区に突撃インタヴューを刊行した章は圧巻であり、角川いつかさん(春樹夫人)ら6人による喫煙正当化座談会もおもしろいです。

  愛煙家にも、そして禁煙一筋の人はいっそう頭脳と論理を鍛えるためにも、この本をお薦めします。なお、『タバコを吸わせろ』の表紙カバーを裏返してみると、そこには禁煙嫌煙研究会『タバコをやめよう』とタイトルがあり、帯にあたるところには、《あの今までの私の苦労はいったい何だったのだろう。タバコをやめたら、体も快調だし、いいことがいっぱい。タバコをやめられないで苦しんでいる人に、ぜひ読んでもらいたい一冊です。(会社員、32歳)》と書かれています。

  こういう遊び心、いいなあと私は思います。



(「ガッキィファイター」2003年6月29日号に掲載)





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