村野薫『日本の大量殺人総覧』(新潮社ラッコブックス、780円)


  本号の「情報源の話」で、比較的詳しく触れておきました。戦後日本の大量殺人事件を、被害者数別に列挙し、その事件の概要を数ページずつで解説したコンパクトな本です。

  私がこの本を薦める最大の理由は、次のようなものです。
  凄惨な事件が起きると必ず、テレビのコメンテーター諸氏が、「稀に見る」とか「これまでに例がない」とか「記憶にない」とか「信じられない」とか
「戦後最悪の事件」というふうに、あまりにも安易に口にする場面が多すぎるので、もちろんそういうふうに言いたい気持ちはわからないではないですが、しかしそれらは事実ではありません。そのような歴史的事実を弁えるうえで、とても簡便な本だと思います。

  諸外国との比較は、影山任佐『テキストブック殺人学』(日本評論社)の18章「大量殺人・連続殺人」と19章「西欧の大量・連続殺人」が、よくまとまっています。この問題に興味をもたれた方は、いずれも邦訳ですが、『連続殺人の心理』(上下、河出文庫)、『大量殺人者の誕生』(人文書院)、『快楽殺人の心理』(講談社)などへお進みください。

  なお、「大量殺人」というのは村野氏の本では「5人以上」の犠牲者をさしていますが、警視庁や警察庁では明確に定義されていません。したがって、日本では「大量殺人」の対概念(「単数殺人」「非大量殺人」「一般殺人」というような)もないことになります。

  ちなみに、米国FBIは大量殺人を「4人以上の犠牲者」と明確に定義しています。それ以下は「複数殺人」と「単数殺人」です。まあ、それだけあちらでは異常な犯罪が多いわけですが、「単数」については語尾に s がつかないだけなんだけどね。



(「ガッキィファイター」2003年7月6日号に掲載)






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