森永卓郎『年収300万円時代を生き抜く経済学』より『<非婚>のすすめ』
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森永さんは、一読即決のコーナーで取り上げた「年収1,000万円! 稼げる人の仕事術」にも登場していました。
そこで彼は、PHPという版元に気を許したのか、こう言っています。
《会社に"正社員"として残るだけのキャリアは、どうすれば身につくのでしょうか。
そのために必要なのは、じつは資格でも特別なスキルでもなく、「上司に可愛がられる能力」です。〔中略〕
「ここぞ」というときは、残業もいとわず頑張ること。肝心なときに、上司のソバにいないようではダメです。さらに、一度上司が決断するや、今度は頭を切り替えてそれに従います》(『THE21』2003年9月特別増刊号)
テレ朝系「TVタックル」で、新著『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社、1400円)に話題が及んだ際、「この本が売れたおかげで、年収1,800万円になっちゃいましたよ」と照れくさそうに告白なさった森永さんでしたが、あなたの所属銀行は大丈夫なのでしょうか?
竹内宏さんのように、偉そうに他企業や政府を斬っていたら、ご自分を総研トップとして雇っていた銀行が潰れてしまった、という例が繰り返されないよう祈るのみです。
PHPの月刊誌では迎合的世界観とイケイケぶりを遺憾なく発揮されていた森永さんですが、『年収300万円時代〜』は"弱者の味方としての彼"が書いたものです。
簡単に言えば、今後は年収300万円と1,000万円に勤労者は二極分化していく、しかも、300万円もらえば御の字なのだ、サラリーマンの9割は確実に「負け組み」となる、と脅しをかけつつ、だから1,000万円というような見込みの薄いイケイケ・ビジネスマンを目指すより、現実的に300万円で幸せに暮らす道を追い求めるべきだ、というのが『年収300万円時代〜』の趣旨です。
《収入が100倍違えば、競争も100倍熾烈になるのは当然だ》という森永さんですが、この本が20万部も売れて収入が増えたことで、何か競争が激化しましたか?
してないでしょ。
競争が100倍とか、自由時間が100倍とかいう話は、フィクションだと私は断言しておきたいと思います。ただ同書で、アメリカのトップ・エリートに対する見方は、非常に体験的かつ冷静です。
ベストセラーになった同書より、森永さんの本としては『<非婚>のすすめ』(講談社現代新書、640円)を私は推します。
まず、偽善的でなく、建設的で独創的な主張に溢れています。家族論、夫婦論としても、考え抜かれた秀逸な論も随所に見られ、実は全体が冗談ではないかという読後感(笑)をうまいこと打ち消しているのも不思議な魅力です。
《終身結婚制〔一度結婚するとなかなか離婚できない戦後日本の結婚制度〕を側面から支えたのは、敗者復活を許さない再婚の仕組みだった。〔中略〕これは終身雇用制の仕組みとよく似ている。結婚相手も会社も替えられるのは若いうちだけなのである。〔中略〕このように、日本の家族の仕組みは、政府や企業の直接統制を受けていた「社会主義」の時代から、効用の最も高まる家族のスタイルを、個人の自由で選択するという「市場経済」の時代に移行しつつある》
顔がでかすぎて五頭身に見えるかわいい森永さんは、かつて「新しい愛のパターン」というものを提案したことがあります。経済アナリストとしては出すぎた真似ですが、この愛嬌が彼の彼たるゆえんです。
《1仕事に家庭と恋愛を持ち込まない、2恋愛に仕事と家庭を持ち込まない、3家庭に仕事と恋愛を持ち込まない、という三つを私は「仕事と家庭と恋愛の三権分立」と名づけ、これさえできれば、皆が一生いきいきと暮らせる生涯恋愛社会の構築が可能になる》
でも、彼が言いたいことは要するに、中年になっても《同時に複数の恋人を持つこと》(P73など)なのですよね。莫迦たれ。
(「ガッキィファイター」2003年8月27日号に掲載) |
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