慶應義塾大学佐藤雅彦研究室『日本のスイッチ』 毎日新聞社、1,050円




 以前この欄で『新しい単位』を推薦申し上げました。あの本を面白い、と感 じた方は、この本を買いましょう。
 冒頭は、こんな質問と回答率で始まります。

《日本人のルイ・ヴィトン購買量世界一は
                    誇らしい   14%
                    恥ずかしい  85%》

《夜道で身の危険を感じたら駆け込むのは
                    交番     29%
                    コンビニ   70%》

 正しいとか正しくないとか、それが妥当かどうかにも関係なく、各国には世 論や、理解をめぐる空気のようなものがあります。

《北朝鮮問題、日本が優先すべきなのは
                    拉致問題   61%
                    核問題    39%》

《「携帯電話をお切り下さい」のあなたの解釈は
                    電源を切る  49%
                    マナーモード 51%》

《福袋に対してあなたが感じるものは
                    お得感    18%
                    売れ残り疑惑82%》

《賞味期限が昨日の牛乳、あなたは?
                    飲みます   65%
                    廃棄する   35%》

《賞味期限がおとといの牛乳、あなたは?
                    飲みます   36%
                    廃棄する   64%》

 こうしてみると、出題者が面白い人、または読者が面白いと思うのはどのよ うな問いかをよく分かっている人、であることが分かります。

《電車の座席、座りたいのは
                    真ん中    8%
                    両端     92%》

  例えばインドでは結果がかなり違うように思います。それにしても、8% も「真ん中」派がいたのかぁ、という新鮮な驚きもありますよね。

《柿ピー、どっちかというと好きなものは?
                    柿の種    55%
                    ピーナツ   45%》

 私は、ピーナツの引き立て役に柿の種があるのだと思っていました。
 とまあ、このような新しい"アンケート調査"に、日本の"空気"が表現されて ゆきます。

《「抱かれたい男」って、なんか勝手だ………67%》

《自販機のおつりの出口は低すぎる……………80%》

 私が個人的に最も驚いたのは、次の回答率でした。

《心神喪失による無罪判決に納得できない……93%》

 わずか5年ほど前まで「心神喪失」という言葉すらほとんど知られていな かったのに。

《松井のニュースを見終わって、ヤンキースの勝敗
                    おぼえてる  21%
                    おぼえてない 78%》

 出題も面白いけれども、やっぱり回答率を見て、なるほど、と思わされるこ との多い本です。

 ときどき著名人が「問題(8個)」をつくります。次の出題者は爆笑問題の 太田光さんです。

《行ってみたい国は
                    イラク    54%
                    北朝鮮    44%》

 ううむ、そうでしたか。

 この本の版元は毎日新聞社です。ちょっと意外ですよね、2002年の秋から 「毎日新聞」紙上でこの連載が始まり、数万単位の人が携帯電話で回答を寄せ 続けている、ということを知らない方々には。



(「ガッキィファイター」2004年5月11日号に掲載)

 




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