糸井重里監修『言いまつがい』(東京糸井重里事務所、1,575円)




 本を出版する、というスタイルは、どうにだってなるのだな、と痛感しまし た。工夫の余地はいくらでもあるのですね。装丁も、紙の断ち方も、印刷の方 法も、販売の仕方も。まだまだ挑戦の余地は、きっとたくさんあると思います。

 こうじゃなくちゃいけない、と思い込んでいたり、本が売れない責任を他人 になすりつけあったりしている暇があったら、自分たちでやってみよう。
 それを実地に教えてくれたことが『言いまつがい』の功績の一つ。
 誰にでもできることでは全然ありませんが。

 もう一つは、これだけ「取り扱い注意」の本はやっぱりあのサイトでないと できなかった、ということ。
 とにかく、笑えます。
 例えば電車のなかとかで読むのは、やめたほうがいいと思います。

 いろいろ引用してみようかと思いましたが、ご自分で買って読んでください。 部分的な引用では、おもしろさは充分に伝わらないと思います。言いまつがい 体験には個人差があるからです。
 でも、ちょっとだけ。

《仕事でのメール、「それが理由ではない気がします」と打ちたかったのに、 「それが理由で鼻息がします」となっていた。気づかないでそのまま送信して しまった。》

 異人さんに連れられて〜という歌がありますよね。
《わたしは「♪赤い靴〜」のあと、「いいじぃさんに連れられて」だと思って いた。良いおじいさんも誘拐する奴かもしれないっていう教訓の歌だと思って いました。》

《モロビさんとコゾリテさんが誰かを迎えるのかと思ってました。》

《クリスマスといえば思い出す「清しこの夜」。「きよしこ」って何だろう、 とずーっと思っていました。》

《姉のともだちは、バイトで初日に緊張していることを彼氏に伝えたくて、 ケータイのメールで、「初めてのバイトでかんちょうしています」と送ってし まった。》

《先輩と、とある会社での打ち合わせの最中。スケジュールの話になって、先 輩が「来週の水曜は何曜日だ」って聞いて来たので、「来週の水曜日も再来週 の水曜日も水曜日です」って当たり前に答えたら、なんでか、しばかれまし た。》

 こういうのが700連発もあるわけです。

 糸井さんはその昔、「週刊文春」で「萬流コピー塾」というのを家元として やっておられました。家元から毎週出される「宿題」に、読者が自作コピーを 送って採点してもらい、出来の良いものには松(5点)、竹(2点)、梅(1 点)、毒(半点)が与えられ、こうして、その加算点数に応じて見習、弟子、 名取、師範の順にえらくなっていきます。
 あのときよりさらにパワーアップして、けれども糸井さんご自身の作業とし てはかなりラクをしておられるらしいです。

『オトナ語の謎。』と同様『言いまつがい』も、どれだけ大量のおもしろいや つが集まってくるか、にかかっているわけですが、多少類似本と言えるものに 『ヘンな家族、だから大好き』(亜紀書房)があります。これは、朝日新聞の 日曜版の人気コーナー「いわせてもらお」からセレクトしたものです。が、い かんせん、800万人だかの読者がいながら、投稿数が「ほぼ日刊イトイ新聞」 より2桁くらい少ない。残念っ。

 大変なことがネット上で起きているなあ、と思ふけふこのごろです。

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(「ガッキィファイター」2004年8月9日号に掲載)





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