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天木直人『さらば外務省!』講談社、1,500円



 著者は、つい最近(8月29日)までレバノン大使であった人です。
 中近東に駐在する日本の大使たちが、みな沈黙を守り、安全地帯でパソコン やパーティを通じての"情報収集"しかしないようになって久しいなかで、この 前駐レバノン特命全権大使は川口外務大臣や日本政府に対して、中東に住む 人々の心情を報告し、《苦悩する中東の民の心を逆撫でする》米国による大量 兵器の投入への協力ではなく、《中東地域で手を汚していない日本》としてま ともな外交を展開すべきだという具申を送る任務をまっとうし、まさにそれゆ えに解職されたのでした。

 天木氏は、反米の人ではありません。
 むしろ、《これ以上の反米感情の高まりは、米国にとってもけっして好まし いことではありません》(イラク戦争開始後の「具申」)という平衡感覚の持 ち主です。
 11月29日に日本人外交官二人が殺された事件で、一気に外務省への同情が高 まりつつあるのだけれど、外務官僚はこれまで、在外の日本人が殺されたとき にはいつも冷淡だったのです。同僚が死亡したときだけ大々的に追悼するのは、 心情的には理解しますが、そのような深い追悼は心の中で、そして身内で濃密 になすべきことではないでしょうか。

 外務省への同情的雰囲気のなかで、中東の外交官たちが、まともな報告や具 申や提言をサボタージュしてきた事実まで掻き消してしまってはなりません。
 卑劣な殺人者を私も憎みます。しかし、日本の外交官たちが真の外交や具申 をサボり、米英による戦争を阻止する努力をまったくしてこなかった事実は消 えません。
 ちなみにレバノンといえば、北朝鮮に拉致された自国民を、政府がいち早く 取り返した国です。レバノン政府の行動とあまりに対照的な、小泉−安倍コン ビの能天気さを、もはや笑って見過ごすわけにはいきません。

 外務省からはすでにこの著者に対する人格攻撃が、身内的記者を通して例の 如く吹聴され始めています。
 腐っている、と私は思います。



(「ガッキィファイター」2003年12月2日号に掲載)






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