南伸坊『本人の人々』(マガジンハウス、838円)



 もの真似、というジャンルがあります。これは、顔真似と文体模写の本です。

 いちばん最初に登場するのは、あの金正日です。いまは重病に陥っているよ うですが、彼について幾多の罵詈雑言をあびせかけるより、彼をパロディにす るほうが高等な知能を必要とします。
 異才の人・南伸坊は、ここでは完全に「金正日」になりきっています。見開 き2ページの、左側に顔真似した写真が、右側には「金正日」になりきった文 章が載っています。《日本人は、ラチ、ラチ、とそればかりわいめいていて、 それしか言うことはないのか?》で始まる一文もケッサクです。
 顔真似写真の下には、一言「大トロはうまい」と書かれています。

 その次がカルロス・ゴーン。そして養老孟司。椎名誠。しばらく措いて、き たならしい感じの村上龍。
 あまり知られていませんが、かなり笑えたのは田岡俊次の顔真似。その文体 (発言)模写は、こうです。
《具体的現実的な戦略分析的な、まァそういう発想をしがちなところはありま すね、うんうん、うんうん。え? あ、具体的にですか? 具体的にではです ねあのォ、ま、たとえばジャンケンをするとしますね。そうしますと、過去そ の相手とジャンケンをした経験の総和というか、データがありましょう?》  知っている人には、めちゃくちゃおもれえ。

 南伸坊は、有名人の顔真似をするだけではありません。「タマちゃん」にも なりきっています。こりゃあスゴ〜い!
 その次のページを繰ると、今度はあの猪瀬直樹が! めちゃめちゃそっくり です。ていうか、これ本人じゃないの?
 ニセ写真の下には猪瀬直樹の口癖、「だから……」とあり、これもおかすぃ。
 しばらくいくと、山崎拓が、例の裸写真を持って「私かもしれない……」と 言っています。

 アラファトや井上陽水もアニータも鈴木宗男もイチローも清原和博も梅宮ア ンナもデヴィ夫人も中村江里子も土井たか子もみのもんたもマイケル・ジャク ソンもいます。ご本人たちもきっとびっくりです。といいますか、そもそも 「本人」って何でしょうか?
 
 立ち読みや電車の中でこの本は、開かないほうがいいと思います。


(「ガッキィファイター」2004年1月16日号に掲載)





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