Q:もし可能ならば「戦略」の定義を教えてください。「戦略がなくて戦術だ
け」とか使われますね。会社の戦略をどのように考えて作成していくべきか。
考えているうちに分からなくなってきました。
(神奈川県、50代、会社役員)
A:戦略とは、わかりやすく言えば、見取り図のことです。なぜ見取り図が必
要なのか。夢や理想の実現のためだけでなく、他方で最悪の事態も想定しつつ、
それを避けるためです。
戦略なき交渉は、時間の無駄遣いか、ただの博打(ばくち)になってしまい
ます。
戦術は、戦略の下位概念です。
軍事的には、一回の戦闘行為における戦力の使用法を戦術、と言います。一
般的には、ある目的を達成するための方法が戦術です。
好きになってしまった相手と共有時間を持ちたい、増やしたい、濃密に交際
したい、という目的をもって、ストーカーという方法(戦術)をとってしまう
と、その夢が破綻するばかりか、逆効果となり警察に逮捕されてしまいかねま
せん。
日本の自立的外交と国益を遵守する、という国家戦略があるのに、靖国神社
参拝という戦術(と相手には見なされる)により、肝心の国家戦略を破砕する
のも同様の構造です。小泉首相には、戦略と戦術の区別がついていません。郵
政民営化を自己目的にしてしまったのも、その表われでした。国債発行を30兆
円以下にする、という公約実現のために増税する(!)、というのも本末転倒
の典型です。
会社の戦略を、例えば「尊敬される会社」や「株主にも社員にも感謝される
会社」とした場合、その戦術として、法令順守や適切な配当や人事や商品開発
や受注システムの改善やリストラなどなどがありえます。この場合にも、法令
順守や株主への配当やリストラなどは目的ではなく、手段である、という認識
が肝要です。
誤った手段(戦術)を自己目的化してしまうと、どういうことが起きるか。
創業家のアホぼんにより今年3月期で2,330億円の連結純損失を出し2年連
続の大幅赤字に陥った三洋電機は、気狂いじみたリストラ(これは戦術の一つ
にすぎない)を自己目的にしてドツボに嵌(はま)っています。
まっとうな戦略を保持し続けるためには、自らの位置と実力を客観視できて
いなければならず、この前提を見誤ってしまえば、いかに戦術を多々もちあわ
せていても敗北は必定です。
戦略とは見取り図のことだ、と冒頭で申し上げたのは、このような意味にお
いてです。見取り図(戦略)なきまま航海に出てしまうと、とりあえず当面だ
けでも無事に過ごせればいい、という発想にならざるをえません。逆に、見取
り図さえ持っていれば良い、という問題でもないのです。見取り図をつくった
うえで、最短距離で行ける方法や、最悪の事態に陥っても回復しうる方法を、
しっかり検討して一歩前に出る、引くときは引く、進むべきときに進む、とい
う在り方を「戦略的思考」と言います。
戦略的思考とは、自分が置かれている状況を正確にマッピングする(客観的
に評価し位置づける)発想なのです。
ご健闘をお祈りします。
(「ガッキィファイター」2006年1月31日号に掲載)
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