『悲の器』高橋和巳作・新潮文庫 ★★★★★
主人公正木典善の独白を読むのは,大学3年の秋以来,実に12年振りである。かつての23歳の私には見えなかった事どもが今回は深く
染み込んでくる気がした。高橋和巳は39歳でこの夜を去ったが,私は自分が彼の年齢を越えたとき,もう一度この小説を読んでみようと考え
た。もちろん,この作品を書いた彼の年齢を既に私は越えている。しかし,高橋和巳がその晩年にこの自作をどういった思いをもって自負して
いたか,そこに興味がある。高橋和巳は決して天才ではない。しかし,昭和が生んだ作家の中で,私にとっては三島由紀夫と並ぶ地位を占
める。かつての大学時代の心象,森田との語らい,それらが高橋和巳の小説で甦ってくる。この小説は「人生の書」かもしれない。
『高橋和巳の思い出』高橋たか子著・構想社 ★★★★★
昔読んだときもそうだったが,「かわいそうな人だといつも思ったこと」という一文が心に沁みる。こういう性は男ならば誰もがもっているよう
な気がしてならない。女はこのように見ているのか……と実感させてくれる一冊である。忙しい時期なので,高橋和巳関係を読むのはこれで
やめようと思う。これ以上読むと,久し振りに,とてつもない虚無に陥ってしまいそうだ。虚無僧にでもなりたくなる。
『法則化運動は現場からの教育改革である』杉田久信著・明治図書 ★★★
久し振りに読んでいて気持ちのいい本である。公立学校の管理職が書いた至極まっとうな本だ。書名と内容にはあまり関係性がない。お
そらく樋口さんが売るためにつけた書名だろう。その企ては成功している。この書名でなかったら,私も買わなかっただろうから……。高橋和
巳から抜け出すために読んだ本で,大きな収穫を得た気分である。この著者には今後とも期待したい。
『聖域の殺人カルテ』由良三郎作・集英社文庫 ★★★★★
出勤・退勤の地下鉄のお供。それにしても由良三郎のミステリーは面白い。人間関係の洞察力と医学知識の賜物になのだろうと感心させ
られる。こんなミステリーはやっぱり医学の素人には絶対に書けないだろう。そもそもこんな発想自体が浮かばないに違いない。
『北海道212
俳句の旅』福永法弘著・北海道新聞社 ★★★★★
板橋雅憲先生が先日の4サークル合同研修会で紹介していた本である。旭屋書店で平積みになっていた。どうやら売れているらしい。読
んでみて,板橋先生がかなり練って教材化していたことがわかった。駄作もけっこうあるし,わかりにくいものも多々ある。ともあれ,いい本
だ。「研究集団ことのは」メンバーはもちろん,北海道のすべての国語教師が教材化するに値する本だと思う。必読書だ。というよりも,絶対
に手元に置いておくべき本だ。
『響くものと流れるもの』福田和也・柳美里著・PHP研究所 ★★★★★
久し振りに夢中になって読んだ。これを著作として出版できる二人の文学者を讃えたい気分だ。柳美里の感情的な論述,福田和也のいや
らしい知識人気取り,ともに鼻につくことは事実だが,やはり人間なんてこんなものなのだという気もする。暇があったら,みなさんも是非。た
だし,あくまでも「暇があったら」でいい。仕事に役立つタイプの本ではない。
『高橋和巳という人 二十五年後の後に』高橋たか子著・河出書房新社 ★★
ここまで来ると,もう高橋和巳とは無縁の書になってしまっている。高橋たか子の馬鹿さだけが目につく本だ。でも,やはり最後まで読んで
しまう自分が哀しい……。
『教師のためのロールプレイング入門』金子賢著・学事出版 ★★
国語科として「ロールプレイング」を用いるのには適切でない本だ。というよりも学びの少ない本だ。少々,個体史的な色合いが強すぎる本
でもある。もう少し厳格に「ロールプレイング」とは何なのかを,しっかりと語って欲しいものである。
『ロールプレイで学ぶ
中級から上級への日本語会話』山内博之著・アルク ★★★
ロールプレイ的手法を用いた日本語教育のテキストである。教材化できそうなネタの宝庫だが,あくまで実践編に使うべきネタばかりで,理
論編として使える本ではない。しかし,2200円は安い買い物だった。実践編には間違いなく,大きく役立つ本ではある。
『信長 秀吉 家康
勝者の条件
敗者の条件』津本陽・江坂彰著・講談社文庫 ★★★★★
歴史関係の読み物はほとんど読んだことがなかったので,とても面白かった。特に信長の独創性は学ぶべきところも多く考えさせられた。
『エンカウンターで学級が変わる 中学校編』國分康孝監修・片野智治編集・図書文化 ★★★★
『エンカウンターで学級が変わる Part2 中学校編』國分康孝監修・國分久子/片野智治編集・図書文化 ★★★
『エンカウンターで学級が変わる Part3 中学校編』
國分康孝監修・大関健道/藤川章/吉澤克彦/國分久子/編集・図書文化 ★★★
すべて〈ロールプレイ〉の巻のプロット検討及び原稿執筆のため。「エンカウンター」は馬鹿にしていたのだが,読んでみるとけっこう面白い。
まだまだ続々と読む必要がありそうだ。理論的な裏付けがもっともっと欲しい。