『言語技術教育11』日本言語技術教育学会編・明治図書 ★
大変残念なことだが,『言語技術教育』にも「惰性」が見えてきた感じがする。やっぱり10年を超えると,どうしてもこういった
傾向は見えてしまうのかも知れない。編集を担当している鶴田先生には申し訳ないが,そういう印象を抱いた。おそらく,この
機関誌の傾向は学会それ自体の傾向でもあるのだろうと思う。学会が発足して10年。新しい論点がまったく提出されていな
い。これは,学会としての研究が進んでいないことを示すのではないか。「教育技術学会」の二の舞は避けなくてはならない。
『「大造じいさんとガン」の〈解釈〉と〈分析〉』鶴田清司著・明治図書 ★★
『言語技術教育としての文学教材の指導』鶴田清司著・明治図書 ★★★
この2冊は,大学院の「国語科教育学特論T」のテキストだ。「大造じいさん…」は2回目,「言語技術教育としての…」はお
そらく10回目くらいに読んだ。後者も随分と新しい本だと思っていたが,もう6年前の本になってしまった。鶴田先生はその2
年後に『文学教材の読解主義を超える』(明治図書)を出したが,ここ4年はこの研究が滞っているような感じがする。僕は鶴
田文学教材言語技術体系のさらなる整理をずっと待ち続けている。
『夢十夜』夏目漱石作・集英社文庫/ちくま文庫全集 ★★★★
これはゼミのテキストになっていて,レジュメ作成の関係上,何度も何度も,何度も読み返している。漱石としては異色の作
品で通俗的な印象を受ける作品だが,漱石の「言語観」が読み取れる作品集である。漱石としては初期作品だが,こうした
時期にこうした作品を書き綴った漱石の「自らが本当に進みたかった方向」がかいま見られる作品だ。もう少し追ってみようと
思っている。僕は実は,今回初めて『夢十夜』を読んだ。新しい地平が切り開かれつつある思いでいる。
『それから』夏目漱石作・ちくま文庫全集 ★★★
ロンドンに留学した漱石が,自らの中に「西洋的自己」と「日本的自己」との分裂を抽象し,それを代助に投影した作品だと
思う。僕の好きなタイプの作品だ。ストーリー自体の面白さはないが,観念小説書き換えられるほどの重厚な主題が随所に
見られる。『それから』を読むのは,実に15年振りである。これも「近代文学特論V」のテキスト。『夢十夜』と平行して読んだ
ことで,漱石をちゃんと読んでみたいという気になってきている。
『言葉の心理と教育』福沢周亮編・教育出版 ★★
この本はずいぶん昔に買った本なのだが,あまりちゃんと読んでいなかった。最近,教育心理学や認知心理学を学ぶ機会
が多いので,読み直してみた。第5章「読みの心理と教育─説明文の場合」はずいぶんと示唆に富む文書だった。「メタ認知
能力」の育成を旗印としている私にとっては,大きなヒントとなった。
『韓信』岡本好古著・PHP文庫 ★★★
『諸葛孔明』立間祥介著・岩波新書 ★★★
『図解雑学 諸葛孔明』渡邉義浩著・ナツメ社 ★★★
『諸葛孔明の兵法』守屋洋編・訳・徳間書店 ★★★★★
最近,兵法をヒントに学級経営の手法を体系化したいと考えている。講義の合間やトイレなどは,すべて諸葛孔明・韓信・
孫子などに関する本を読んでいる。学級経営の手法などのためでなく,純粋に楽しんでしまっている感じの方が強い。それ
にしても面白い。ビジネス書として,兵法を応用しようとするものが多いのも頷ける。
『インストール』綿矢りさ作・河出書房新社 ★★★
17歳で最年少の文藝賞受賞というので年末に買っておいた本だ。時間があったので読んでみた。作品のプロット自体は
それほどの感動はないが,そきしまった文体に恐れ入った。この子が大衆に迎合するタイプの作家になっていかないことを
祈っている。例えば,鷺沢萌のようにはなって欲しくない。
『20世紀言語学入門』加賀野井秀一著・講談社現代新書 ★★
昨年の院生ゼミのテキストだったらしい。概観するには良いテキストなのだと思う。しかし,こういった概論からは何も生ま
れては来ない。この中で,一人の人間が本格的に取り組めるのは一人か二人の研究者だ。
『学び方を育てる先生』柴田義松著・図書文化 ★★
図書文化の「先生シリーズ」の一冊である。すぐに読めて良いシリーズだ。しかし,これはダメ。どうも柴田義松の「学び方」
論は観念的過ぎる感じがする。ちなみにこのシリーズでイチオシは『説明を授業に生かす先生』(海保博之)だ。
『フェティシズムと快楽』丸山圭三郎著・紀伊國屋書店 ★★★
BOOK OFFで100円。丸山圭三郎の『フェティシズムと快楽』が100円で手に入るとは,恐ろしい時代になったものだ。
読むのは15年振りか……。この人の論述は,僕の頭にスーッと入ってくる。ソシュールだのサルトルだのニーチェだのゲ
シュタルトだのと,いろいろ出てくるが,この人の知見は基本的に現象学的だ。そこがいい。教育論や授業論もこういう発
想で研究したいものである。
『柔らかい個人主義の誕生─消費社会の美学─』山崎正和著・中央公論社 ★★★★★
僕は卒論で島田雅彦を三島由紀夫を基軸にして読み解くという「世代論」をやった。当時,この本が欲しくて欲しくてたま
らなかった。しかし,在庫切れ。古本屋にもなかった。12年後,この本は,やはりBOOK OFFで100円で僕の手元にや
ってきた。恐ろしい時代になったものである。山崎正和と言えば,『文藝春秋』6月号で,山口県の次第の学長として迎え
られ,そこで出会った学生の質を回想して,「教育観が変貌した」とまで述べている。阪大あたりの学生だけを見て過ごし
てきた人間には,本来教育を語る資格などないのだ。ざまあみろ! もっともっと,そういう認識を持って欲しい研究者が
いっぱいいる。死ぬ前にわかって良かったね,山崎さん……。