『「創造的読み」への手引き』鹿内信善著・勁草書房/再読
鹿内先生の著書を久し振りに読み通した。学生時代に読んだときに違和感を覚えた「フォーカシング法」がカウンセリングの
手法であったのだということを改めて実感した。国語科教育にカウンセリング理論を持ち込むことに,僕が実感として必要感を
感じたのはごくごく最近のことだ。鹿内先生の「フォーカシング法」にも,僕はこれまでどちらかというと否定的だった。授業で
エンカウンターをヒントに授業づくりをしていると,音声言語指導においてカウンセリングの手法が殊の外宇力を発揮し得るこ
とがわかってくる。「フォーカシング法」についても少し考えてみようという気になる。鹿内先生に影響されて学生時代に買った
ジェンドリンも読み直してみようという気になった。
『心理学のなかの論争 [1]認知心理学における論争』丸野俊一編著・ナカニシヤ出版
この本は僕が長く問題意識として抱いていた諸問題について,認知心理学の視点から一つの解答を与えてくれた。例えば,
「認識の原点は『頭』か『身体』か」「認知と情動のからみ:『認知が先』か『情動が先』か」「学習の成立過程は『模倣』か『創
造』か」「認識と文化のからみ:『文化普遍』か『文化固有』か」といった諸問題だ。なるほど納得できる論述も多かったが,?
と思う箇所も少なからずあった。もう少し自分の国語教育理論を構築してから,数年後にもう一度読んで自らの論を検証して
みようと思う。まだ,認知科学を取り入れるのは僕には早い。そう感じている。
『夏目漱石の全小説を読む』(『國文學』平成6年1月臨時増刊号/學燈社)
『夏目漱石事典』(『別冊國文學No.39』三好行雄編・平成2年7月/學燈社)
本来「読み物」ではなく,事典として調べ読みに使うべき雑誌特集である。しかも,各作品の概略しか載っていないものでも
ある。しかし,漱石素人の僕には,たいへん面白く読めた。両方とも何気なく頁を繰っているうちに,あれよあれよという間に最
後まで読んでしまったという感じだ。しかし,この体験で夏目漱石という作家を概観することができた。長い目で見れば,僕の
人生にとっては大きな出来事になるのだろうと思う。
『漱石─「夢十夜」以後─』仲秀和著・和泉書院
『夢十夜』は漱石の,どちらかと言えば初期作品である。夏目漱石という作家にとって,『夢十夜』が彼の作風において期を
画する作品であるとはとても思えない。そう思いながら読み始めた本だ。中身は確かに「『夢十夜』以後」だった。というのは,
『夢十夜』以後の漱石の作品における作品論を並べた本であったからだ。しかし,上の2冊の雑誌同様,漱石という作家を概
観するのには役立った。特に『こころ』は興味深かった。「偶然」と「突然」を対置する論理が,これまで僕の読んだ中にはない
論述の文学論だった。
『やる気の研究』千石保著・講談社
ブックオフで100円。1980年の本だ。いわゆる「千石リポート」を下敷きにして,世代論を展開しているわけだが,1980年
にして,完璧に現在を見越していた人なのだなぁと感じた。夢中になって読んだ。
『マサツ回避の世代 若者のホンネと主張』千石保著・PHP
これまたブックオフで100円。1994年の書だ。1994年には僕も「若者」だったので,自分に重なる論述が随分と多かった。
「マサツ回避」という用語は,現代人を語る上でのキーワードだと,僕もかなり前から思っていた。これまた夢中で読んだ。
『すべての男は消耗品である Vol.4』村上龍著・KKベストセラーズ
このシリーズの4冊目が出ているなんて,正直知らなかった。4冊目どころか,3冊目が出ていることも知らなかった。3冊目
はまだ手に入れていない。さて,なかなかおもしろく読んだが,やはり学生時代に読んだときのような感動はない。僕も大人に
なったということか……。村上龍や村上春樹は,かつての僕らにとって文学ではなく,「ファッション」だったのだと思う。
『いじめ判決文で創る新しい人権学習』梅野正信著・明治図書
これは専門外の本なので,純粋に楽しめた。道徳の授業で「いじめ」を扱おうと本気で思った。第1章第3節の「はじめての判
決文授業 七つのポイント」は圧巻。非常にシンプルであり,素人を動かすに十分な論述である。
『学び方を学ぶ「分析批評」』井関義久著・明治図書
一気に読んだ。「まえがき」と第1章は,井関義久という「ひと」が浮かんでくる文章だった。と言っても,年輩者によくある「振り
返りエッセイ」などではない。この人は70歳を過ぎても,そんな説教臭くなる研究者ではない。「分析批評」をちゃんと前に進め
ようとして書かれて本である。修論を書くときに再び読み返すことになるだろう。
『国語の基礎・基本の学び方』柴田義松編・明治図書
意図はわかるが僕には響いてこない本だった。「読み研」の柳田さんの論述でさえいまいちだった。
『エンカウンターで道徳 中学校編』諸富祥彦・齊藤優編著・明治図書
取り入れるのには抵抗を感じる……そういう実践が残念ながら7割を占めた。エンカウンターを実践する人たちは,エンカウン
ターの手法を信用しすぎているのだと思う。実践する人たち自身がそれを疑う目を持たなくては,なかなか浸透はいないもので
ある。そういう「いやらしさ」がこの本にはある。
『最新 中学国語の文法の授業』岩田道雄編著・民衆社
これはいい本だ。すぐに役立つ。文法の授業をやりたくなる。民衆社の本を「買って良かった」と思ったは本当に久し振りだ。
『小説教材の作品論的研究』田近洵一・足立悦男編・教育出版株式会社
昭和58年のブックレットである。「中学校国語科研究シリーズ5」とある。第T部の府川源一郎の「『鳥』(安房直子)論─愛
のメルヘンの構造」,そして第U部の「共同討議 教材研究はどうあるべきか」と題された足立悦男・須貝千里・田近洵一・山
田有策の座談会は興味深く読んだ。ブックオフで100円。こういう掘り出し物がブックオフにはある。
『司書教諭のための学校図書館概論』潟沼誠二監修・清野隆・吉田裕男・潟沼潤著・翰林書房
潟沼先生や清野先生が司書教諭養成の抗議テキストとして作った本。学校図書館についてはよくわからないが,こんなにも
大袈裟に考える必要はないのではないか……という感想をもった。
『現場から見た教育改革』永山彦三郎・ちくま新書
あまりにも現場感覚的な発想から,ここまで社会や時代を断罪して良いのか……そういう印象。あまり頭の切れる人手はな
い。新学習指導要領については,知らなかったことが幾つかあった。
『ロックの感受性 ビートルズ,ブルース,そして今』仲井戸麗市著・平凡社新書
少々「寄せ集め」的な印象の強い本だ。ファンしか読まないだろうなぁ……という残念な本。ファンである僕は興味深く読んだ。
『論理的思考』宇佐美寛・メヂカルフレンド社
既に国語教育界では古典的名著として知られる本書。今回は,原稿執筆のネタとして10回目くらいの再読である。「文の七
原則」は普遍である。
『坂口安吾全集04』ちくま文庫
映画『白痴』をビデオの見たのを機に,久し振りに『白痴』を読みたくなって繙いた。しかし,読み始めると『白痴』にとどまらず,
この文庫をすべて読んでしまった。安吾文学は学生時代から,三島由起夫・高橋和巳と並んで,僕にとって必要不可欠な思想
であった。僕は生き方としては,いまだに安吾の一人一人の地に足をつけた人間達と拘わりながら,観察しつつ影響され続け
るという独自の無頼を参考にしている。
『最終弁論 歴史的裁判の勝訴を決めた説得術』
マイケル・S・リーフ/H・ミッチェル・コールドウェル/ベン・バイセル著・藤沢邦子訳
これは選択教科のネタになるではないかと読み始めた本だが,それぞれの裁判事例に惹きつけられた。と同時に,選択教科
にはまったく役立たないことも実感された。猟奇的な殺人事件や政治犯罪,戦争犯罪などで勝訴を勝ち取った最終弁論を具体
的に記述した本である。評決ものの映画をよく観るが,現実は映画なんかよりもずっと壮絶で論理的で運命的である。
『声』柳美里著・小学館
柳美里の連作エッセイの第四弾である。だんだん筆が荒れてきている感がある。僕自身が少しずつ飽きてきているせいかも
しれない。江角マキコの主演で映画化が決定したらしい。
『教室で学ぶ社会の中の人間行動』吉田俊和・廣岡秀一・斉藤和志編著・明治図書
副題に「心理学を活用した新しい授業例」とあり,これに惹かれて買った。一言で言えば「ライフスキル」の授業書である。あい
さつスキルをはじめとしてコミュニケーションスキル,葛藤処理スキル,そして自己開示スキルである。たぶん僕はこの本の内容
は生涯使わないだろうと思う。企画は江部さんである。江部さんがこんな本を作るのが意外だった。
『必読書150』柄谷行人・浅田彰・岡崎乾二郎・奥泉光・島田雅彦・スガ秀実・渡部直巳著
著者7人が大きく影響を受けてきた哲学・現代思想・文学の入門書・専門書を150冊紹介している。デカルトやプラトンもある
が,ゴンブロービッチやザミャーチンもあるというアンバランス。入門書編と専門書編に分けた方が売れただろうと思う。しかし,
これだけ変人が揃えば,やはりこういう本になるのだろうなぁ……と妙に感慨深かった。
『ゲーテ格言集』新潮文庫
原稿に引用できるようにゲーテの格言集のデータベースを作成した。こんな文庫を読んだだけで,ずいぶんと深い思考がもた
らされた。この作業は非常に楽しかった。どうやらゲーテは実践人であったらしい。