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ダンス・ダンス・ダンス村上春樹/講談社文庫/2004年10月/上・下巻とも648円(税込)

■80年代,僕らの世代は村上春樹に狂っていた。70年前後の全共闘世代が大江健三郎と「朝日ジャーナル」を傍らにするのと同じ意味で,
僕らの世代にとって,村上春樹とジャック・デリダは「バイブル」であり「ファッション」だった。90年代が「失われた10年」と呼ばれるのと同じ
意味で,僕らは90年代に村上春樹もジャック・デリダも読まなくなった。僕が『ノルウエイの森』は読んでいたが,『ダンス・ダンス・ダンス』を
読んでいなかったという事実は,その時代に呼応しているようでもあり,就職が僕の精神を「現実」に向けていったことの証左であるようにも
思えてくる。いずれにしても,今回読んでみて,僕は初めて『ダンス・ダンス・ダンス』が初期三部作の続編であることを知ったのだ。それを
知っていたなら,当時の僕は何を措いても読んでいただろうに。雪が降り,地下鉄通勤になって,白石駅のキオスクにこの二冊が置かれて
いなかったら,僕はもしかしたら,一生『ダンス・ダンス・ダンス』を読まなかったかも知れない。運が良かった。『ダンス・ダンス・ダンス』は確
かに,80年代の「不確かさ」を描いている作品だった。(2004.12.22)
■昔からそうだが,村上春樹を読むと落ち込む。自分の中にある「わからなさ」が露呈してくるからだ。主人公の「僕」はわからないことをは
っきりと「わからない」と言う。それが僕らの世代には心地よい。世の中はわからないことだらけなのだ。なのに,僕らの実生活はどうだ。生
徒や保護者に某かの質問を受けたとき,訳知り顔で愚にもつかない助言をする。時に,そうした自分自身に反吐が出そうになる。
                                                                         (2004.12.29)
■最後まで読んでがっかりした。こんな結末では,戦後派作家と同じ結末じゃないか。山川健一とさして変わらないじゃないか。丸山健二
の方が,同じことをずっと深く描いているじゃないか。長く作家をやっていると,結局,この結論に至ってしまうということなのだろうか。上巻を
読んでいるときには,しばらく村上春樹にはまるかもしれないとも思ったものだが,それはなさそうだ。(2005.01.03)
■ただし,いろいろなことを考えるきっかけになったことだけは確かだ。(2005.01.03)


容姿の時代酒井順子/幻冬舎文庫/2004年4月/495円+税

■この著者のエッセイを読むのは5冊目くらいだろうか。女性特有の,ちょっとエロティックな視座が興味深い。と同時にその洞察力には鋭
いものがあり,勉強にもなる。しかし,残念ながら,この本はちょっと思考が粗雑……というか思いこみが過ぎると感じられる部分が多かっ
た。まあ,深刻な話題の本でもないので,充分暇つぶしにはなったのだが……。


統率術谷沢永一/潮出版社/2001年6月/1500円+税