Books/2009.01〜12


学校崩壊と
理不尽クレーム

嶋崎政男/集英社新書
★★★★

原稿執筆のための資料として再読。「暴走するセキュリティ」を読んだ直後だったので、関連づけながら読んだ。なかなか感じ入るものがあった。


断る力
勝間和代/文春新書


言いたいことはよくわかるが、この書き方ではだれにも役立たない。話題の著者とはこういうものか。


セックス格差社会
「恋愛貧者」「結婚難民」は
なぜ増えるのか?

門倉貴史/宝島社新書
★★


データが豊富、自分の知らない事柄、つまり新知識をずいぶんと授けてくれた。ただ、もう少し深い分析があるだろう、という気はする。ビジネス畑の人が各本だなあ、という印象。生徒を見ていると、確かに将来の「恋愛貧者」「結婚難民」候補がたくさんいる。面と向かっては絶対に言えないけれど……。


非モテ!
男性受難の時代

三浦展/文春新書
★★


三浦展も落ちたなあ、というのが率直な印象。共同執筆者が書いた分析のほうが断然おもしろい。


期間限定の思想
おじさん的思考2

内田樹/晶文社
★★★★

たぶん前にも読んだことがある。本を整理していたら出てきたので、ちょっとと思って読み始めたら最後まで読んでしまった。この頃の内田樹はエッセイもおもしろかった。2002年の著作。


職員室の社会心理
学校をとりまく世間体の構造

林理・卜部敬康・長谷川太一編
ナカニシヤ出版


タイトルを見て、職員室の社会学的分析と期待して読み始めたのだが、これでも学術書のつもりかと声を荒げたくなるほどの内容。書き手に若手を登用するのはよいのだが、学部生にエッセイを書かせているような趣。これはいただけない。金返せ。分析もバイアスがかかりすぎ。現場人が書いてもここまでバイアスはかからないだろう。


人類を救う「レンタルの思想」
松井孝典対談集

ウェッジ
★★★★


岩井克人・榊原英資・中西輝政・長谷川眞理子・鷲田清一・水谷三公・植島啓司・合原一幸・西垣通・糸井重里との対談集。各界の第一人者との対談によって、時代性を学際的に、領域際的にあぶり出そうという試み。その意図はある程度成功しているように思える。それにしても、こここうした学際的にある視座を抽出しようという試みが増えてきたように思う。もはや専門分化の時代でもあるまい。ただ教育論のように思いつきでものが言える領域があるのも確かなので、それぞれの棲み分けも必要である。


ひとりでは
生きられないのも
芸のうち

内田樹/文藝春秋
★★

プログの記事を本にしたものが何冊も出ているが、その中でもちょっとスカスカ感の大きい本になっている。


暴走するセキュリティ
芹沢一也/洋泉社新書
★★★★

例えば鈴木謙介に見られるような挑発的な姿勢は見られないが、一つ一つ事例とデータを積み重ねながら、誠実に読者を説得しよう態度が感じられる。好感のもてる著者だった。驚かされるような論述はないが、現代社会の問題点をメタ的に明らかにしようという意図はよくわかる。ただこの手の論述にしては語りが大人しすぎる印象は受けた。教育関係者にとっては読む価値はあると思う。


上司の教科書
石山恒貴/洋泉社新書
★★


現代の若者の変容と、管理主義や成果主義に覆い尽くされた会社とのはざまで、「上司」と呼ばれる人々がどのように仕事をすべきか、どのように生きるべきかを語った指南書。言っていることはわからないでもないが、月並みな論述ばかりでつまらなかった。


教育再生の迷走
苅谷剛彦/筑摩書房
★★★★

「webちくま」に連載されていた教育時評に、後の分析を加えた著作。つい二年前の論述なのに、ずいぶんと古く感じられる。教育界がこの二年でずいぶん早く進んだということである。良い方向に進んだとはまったく思えないけれど……。


日本人の行動文法
ソシオグラマー

竹内靖雄/日本経済新報社
★★★★★

今年は、中学生の行動文法をつくる年にしようと思っている。そのためにこの本をメモを取りながら、もう一度じっくりと読み込むことにした。中学生の行動原理の曖昧性が、むしろ西洋文化の風を真正面から受けたぼくらの世代よりも、むしろストレートに日本人的だと直感的に感じたからである。久し振りに読んだが、またまた様々な発見があった。名著である。


ネコ型社員の時代
自己実現幻想を超えて

山本直人/新潮新書
★★★★★

抱腹絶倒。読み物としてこれほどおもしろいものを読んだことがない(笑)。ぼくら世代の人間に上司は手を焼いているんだなということがよくわかった。「研究集団ことのは」は間違いなく、ネコ型社員の集まりである。


凜とした人 卑しい人
なぜ大人たちは恥知らずになったか

山崎武也
講談社+α新書
★★
言いたいことはわかるし、具体例も豊富なのだが、著者と世代が離れすぎていて、ぼくには説得力がない。まあ、こういうふうにおじいちゃんたちは考えているのだな、という勉強にはなる。


社会構築主義のスペクトラム
パースペクティブの現在と可能性

中河伸俊・北澤毅・土井隆義編
ナカニシヤ出版
★★★★


「社会構築主義」という語をこの本で初めて知った。ただその理念自体はさして難しくない。というよりも私たちが日常的に感じている「社会によってつくられた観念」として様々なものを見ていこうという立場である。まあ、社会学と同義と考えても差し支えないくらいだろう。土井隆義の編著の一つとして手に取った本書だが、「少年犯罪」「児童虐待」「司法改革」と幅広い具体例で論じられていて、学術専門書としてはかなり読みやすい。


若者はなぜ殺すのか
アキハバラ事件が語るもの
芹沢俊介/小学館新書
★★★★

芹沢俊介を読んだのは何年振りだろうか。山下くんのお勧めで手にした本書。確かにネットコミュニケーションに関する題材の収集にはもってこいの本である。


逆接の民主主義
格闘する思想

大澤真幸/角川新書
★★★★

目次には「北朝鮮を民主化する」「自衛隊を解体する」「デモクラシーの嘘を暴く」「『正義』を立て直す」「歴史問題を解決する」「未来社会を構想する」と並ぶ。できないと思われることからこそ発想する。逆接の民主主義というタイトルは言い得て妙。


ワークショップ・デザイン
知をつむぐ対話の場づくり
堀公俊・加藤彰著
日本経済新聞出版社
★★★★★

ワークショップのテキストとしては、これが一番よくまとまっていると思う。手元に置いておいて間違いない一冊。


格差社会と教育改革
苅谷剛彦・山口二郎著
岩波ブックレット
★★★★

北大で行われた苅谷剛彦の講演録とその後の協議、苅谷剛彦と山口二郎の対談で構成されたブックレット。ブックレットではあるが、内容は重厚。お勧め。


まなざしの地獄
尽きなく生きることの社会学
見田宗介/河出書房新社
★★★★★

文体が読みづらく、薄い本なのにずいぶんと読むのに時間がかかった。しかし、内容は大満足。永山則夫が他者の「まなざし」に地獄を見ていたとする分析は、高度経済成長以後、70年代から80年代にかけて青春期を送った者には、痛いほど実感のある論述である。大澤真幸の「不可能性の時代」とあわせて、是非とも読むべき書である。


軋む社会
教育・仕事・若者の現在

本田由紀/双風舎
★★★★


1964年生まれ。東大教育社会学の新星。苅谷さんと比べれば、少ないデータで大きなことを言ってしまうきらいがあるが、また対応策を提案する場合に現実的でないことを言ってしまうきらいもあるが、今後どのような思考をしていくのか、どのように発展していくのか、楽しみな研究者に思えた。読んでいこうと思う。


不可能性の時代
大澤真幸/岩波新書
★★★★★

大澤真幸を久し振りに読んだが、キレのいい内容だった。特に「現実からの逃避」ではなく「現実への逃避」の時代が来ているという論述には目を見開かされた。


〈いじめ学〉の時代
内藤朝雄/柏書房
★★★

分析には目を見張るべきものがあるが、それを踏まえての提案には見るべき者はない。それがこの本の印象。ただ、現場教師にとっては読む価値があると思う。


「個性」を煽られる
子どもたち
親密圏の変容を考える

土井隆義/岩波ブックレット
★★★★★

「友だち地獄」の著者がブックレットとして、わかりやすくまとめた本。この本から入って、『友だち地獄』、そして『〈非行少年〉の消滅』へ、という流れがよい。いずれにしても、土井隆義は現場教師にとって必読の社会学者である。


日本はなぜ
諍いの多い国に
なったのか
「マナー神経症」の時代

森真一/中公新書ラクレ
★★★★★

『自己コントロールの檻』以来、この著者も学校教員にとって必読の社会学者だと思っている。2005年に刊行されている本だったのだが、私の目には触れていなかった。読んでみると、目を見開かれる論述の数々。お勧め。


性欲の文化史2
井上章一編/講談社選書メチエ
★★★★★

民族によって「萌え」の対象がずいぶんと異なること、日本民族がどのように性と知を融合させてきたのかということ、そんなことをけっこうまじめに考えさせられた。もう一度、澁澤龍彦を読みたくなった。


「お笑いタレント化」
する社会

山中伊知郎/祥伝社新書
★★★

朝読書、生徒の前で「性欲の文化史」もなんなので、期待しないで読み始めたら意外とおもしろかった。テレビは「空気を伝えるもの」というフレーズが何度も出てきたが、読めば読むほどなるほどと感じた。


若者を見殺しにする国
私を戦争に向かわせるものは
何か
赤木智弘/双風舎

★★★

ある意味、爽快な本だが、この物語に共感できるのは就職氷河期世代のみだろう。いずれにしても、ぼくのようなバブル就職世代は、10年下にこういう世代があることを心して仕事をしたほうがいいのかもしれない。ただ、城重幸にも感じることだが、どうもこの世代には「労働」「収入」「消費」といった人間を規定する諸事象にぼくらとは決定的に違う感受性があるようだ。ぼくの10年上と言えば新人類、20年上と言えば団塊だが、彼らとぼくらとの間にはこれほど決定的な感受性の違いはないように思う。もちろんぼくも、10年上との労働観の違いにずいぶんと上の世代から揶揄されたものだが、何かを生み出すことが労働の価値であって、収入と消費と安定が第一義だとは決して思っていなかった。


「生きづらさ」について
貧困、アイデンティティ、
ナショナリズム

雨宮処凛・菅野稔人
光文社新書
★★


言いたいことはわからないでもないが、政治で改革していけることとそうでないこととをごっちゃにして、権力を批判している感じがして、論理性が感じられない。「素人の乱」という運動があることを知ったこと、久し振りにリストカットの構造について、新たな知見を得たことが収穫。


学力と階層
教育の綻びを
どう修正するか

苅谷剛彦/朝日新聞出版
★★★★


朝起きてトイレで読み始めたらやめられなくなった。結局、最後まで読み切ってしまった。原稿を書かねばならなかったのだが、まったく進まなかった。まあ、いまのぼくにはこの本の方が必要だったということだ。これは苅谷さんの読者には新たな提案はないのだが、一般書として書かれているのでたいへん読みやすく、それでいていま考えなければならないことを網羅している、そんな印象の本である。おすすめ。


ゼロ年代の想像力
宇野常寛/早川書房
★★★★★

いい本なのかどうか、著者の分析が新しいのか否か、その辺りは微妙。政治と文学、政治とサブカルチャーといった語り古された問題構図を再浮上させているだけとの見方もあると思う。ただ、90年代から00年代にかけての、僕のアンテナには引っかからなかった文学的表現・思想的表現の意味・意義、社会的背景について深く考えさせてくれた。特に「バトルロワイヤル」や「リアル鬼ごっこ」といったベストセラーについて、新たな識見を得たことは大きかった。


美人論
井上章一/朝日文芸文庫
★★★

論争を巻き起こしたといわれるこの本も既に20年近く前の著作になった。当時はあまり感じ入るところのなかった本だったのだが、少し若者の「モテ」「見てくれ」「性」について考えてみようと思うに至った。そのスタートとして考えるのにこの本を出発点にすることにした。今年の前半はこういうことを考えていこうと思う。「空気」や「スクール・カースト」を考えるうえで、外形の問題が不可欠と思われるからだ。外見よりも中身という昭和的なテーゼは休息に失われてしまった。もしかしたら、カーストを上げようとしても上げられない運命論・宿命論がありうるのかもしれない。宇野常寛の「ゼロ年代の想像力」を読んだことが大きかった。


日本の女が好きである
新・美人論
井上章一/PHP研究所
★★★

17年振りに書かれた「美人論」の続編というが、風俗評論家としての面目を保ったまま、遊び心満載の内容ですぐに読めた。ただし、「美人論」の続編は嘘だなと思う。


パンツが見える
羞恥心の現代史
井上章一/朝日新聞社
★★★★

書名はウケねらいだが、中身はなかなかの逆転発想。物理的なものが記号化して新たな精神構造を流布させる、その代表が「パンツ」である。「恥ずかしいからパンツをはくのではない、パンツをはくから恥ずかしいのだ」は名言である。


性欲の文化史1
井上章一編/講談社選書メチエ
★★★★★

考えたこともないこと目白押し。納得の論述の数々。これはすべての教育者が読んだ方がいい。こうした欲望が社会を動かしてきたことも一方の真実である。