ヒナキキョウソウ

6月に入って、よく日の当たる乾燥気味の川堤に約200mにわたって群れて咲いているのを見かけました。高さは

10〜30cmで、茎の頂に小さな(1〜1.5cm)薄紫色の花咲きます。葉(1cm以下)は浅い鋸歯があり互生し、葉腋に

1〜4個の閉鎖花(?)がつきます。種子は子房の上部(ガク片のすぐ下)の壁にできる穴から外へこぼれ出ます。

閉鎖花(?)では子房が2つの部屋に分かれているので、穴は仕切りの両端の部分に2個できます。花(開放花)

は茎の頂に1個咲きます。子房は3つの部屋に分かれているので、種子の出る穴は仕切りの端に3個開きます。

しかし3個の穴の開いた花(穴の開くときには花は既にしぼんだ状態です)を探すのは、その数が非常に少ない

のでなかなか大変でした。閉鎖花(?)ではほとんど全部のものが穴を開けるのに対し、なぜ開放花では穴の

開いたものが少ないのでしょうか? 観察したことからその理由を考えてみました。

 閉鎖花(?)と開放花の子房を開いてみると、閉鎖花(?)では胚珠が詰まっているのが観察されますが、開放花

では花後、子房の中の胚珠が退化してしまうものが多いようです。子房の中に成熟した種子が出来ると外に種子を

出すために穴が開くようです。したがって閉鎖花(?)には成熟した種子ができますから穴が開きますが、子房の中に

成熟した種子が少ないかまたは無い開放花では穴は開かないのです。 

 ここでまた新しい疑問が生じました。せっかく花を咲かせたのに何故開放花では種子が出来にくいのでしょう。

ずいぶん無駄なことをしているように思えます。 ツユクサの仲間には花は咲いても種子ができないものが結構あり

ます。茎の節から容易に発根し、栄養生殖で殖えることができるせいだと思われます。  ヒナキキョウソウも

閉鎖花(?)の種子でとりあえず殖えることができます。  仮にヒナキキョウソウの開放花に自家不和合性があり、

他家受粉によってのみ種子を作るとすると、周囲にある花はほとんど同じ閉鎖花(?)由来の花ですから遺伝子

組成が同じなので、互いに花粉のやりとりがあっても他花受粉にはならず、種子ができないということはあり得ます。 

  開放花の存在理由は、「例え効率が悪くても、花粉の媒介者(ハナアブが飛来しているのを目撃しました)の

助けを借りて、違った遺伝子組成の花との他家受粉をすることにより子孫の遺伝子型を多様化し、長期的にみて

種族を維持させること。」ということかも知れません。

 

 (?):閉鎖花の定義「花冠は発達しないか貧弱で開花せず、同花受粉によって結実する。」(植物用語事典)

ヒナキキョウソウの閉鎖花といわれているものの構造を実体顕微鏡で見ると下の画像に示したように、めしべも

おしべも形成されるところまでいっていないように見えます。これでは同花受粉も出来ないと思いますので、

ひょっとするとヒナキキョウソウのこれらの花は閉鎖花ではなく無融合生殖(apomixis 配偶子が融合しないまま、

つまり受精をおこなわずに配偶体から新しい胞子体をつくる生殖法)で種子をつくっているもの。かも?

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 最近、”なかなか”さんがキキョウソウについてとても興味深い観察結果を報告されています。

 ( http://www.juno.dti.ne.jp/~skknari/  なかなかの植物ルーム 1.帰化植物 キキョウソウの閉鎖花

   を検索)

 キキョウソウの微細構造を調べると、花弁が無い花(勝手ながら仮に”ガク花"と呼ばせていただきます)

にちゃんとめしべもおしべもあり、さらにそのめしべには花粉が付いていることも観察されました。

 したがって"ガク花"は”閉鎖花”なのです。

 キキョウソウとヒナキキョウソウは近縁種なので、ヒナキキョウソウの"閉鎖花”(?)も"閉鎖花”だと思われます。

 

ヒナキキョウソウ                左:茎の上の方

Specularia biflora                   右:茎の下の方

キキョウ科

帰化植物 北アメリカ原産

柱頭の形がこん棒状(開花後数日はこの形をしているー若い花)

柱頭が3つに分かれ反り返る(成熟した花)

 

 

若いつぼみ→開花直前のつぼみ→開花途中の花(まだ

おしべがめしべに張り付いている)

左:開放花。ガク片は5枚。開花後1〜2日は夜になると花弁がゆるく閉じる。

右:閉鎖花(?)。ガク片は開放花に比べ短く、3〜5枚。

左:こん棒状の柱頭。まわりに花粉がたっぷり付いている。

右:3つに分かれた柱頭。表面に細かい突起が見える。

閉鎖花(?):左端のものには凹みが見える→後で穴になる。成熟して

くると、赤茶色になり穴が開く。右端の穴には種子がのぞいている。

子房の輪切り。左:閉鎖花(?)は2つに分かれている。

         右:開放花は3つに分かれている。

子房の縦切り。左:閉鎖花(?)  右:開放花

開放花。若いつぼみの縦切り。 開放花。種子の出る穴の開いているもの。すでに種子が出た後なのか種子

の数が少ない。

穴のある開放花。 穴のできていない開放花。種子の数は少なく、退化した胚珠が見られる。

同じ成熟度合いの穴なし開放花と閉鎖花(?)  縦切り→ 左:開放花。胚珠は退化している。右:閉鎖花(?)。胚珠が詰まっている。

同じ成熟度合いの穴なし開放花と閉鎖花(?)  縦切り→ 上:開放花。胚珠がある。下:閉鎖花(?)。胚珠がある。

同じ成熟度合いの穴なし開放花と閉鎖花(?)  縦切り→ 上:開放花。胚珠が退化している。 下:閉鎖花(?)。胚珠がある。

ヒナキキョウソウの閉鎖花(?)

ガクの中心に見える白いものが花に当たる部分。縦切りにしてみても

花の構造は見えない。

色付いた閉鎖花(?)。縦切りにしてみた。

↓                         

花に当たる部分の拡大。                  →

       

めしべ、おしべの構造はない。→もっと高倍率で観れば

めしべとおしべが見えて"閉鎖花”ということが分かるはず。

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