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準 備 書 面(3)
平成13年6月26日
東京地方裁判所民事第11部 御中
被告指定代理人 河野道孝 同 森岡清和 同 小川正明 同 大谷良二 同 江川宏 同 大内山高幸 同 片岡和則
第1 原告主張の論理的矛盾について
原告は、自己が従事した学習コーディネーターの職は、実質的には特別職ではなく一般職であるから非常勤特別職として任用したことは違法であり、本来原告は常勤一般職として任用されるべきであった、あるいは被告区における非常勤職員制度には適法な給与等の格差があり、ひいてはそれが女性差別を内包する制度である等の理由を挙げて、常勤一般職として任用された場合における相当の給与と実際に原告が受領した報酬等との差額を損害としてその賠償を求めるものである。
しかし、仮に原告が主張するように原告の職務内容が一般職のそれと同一であり、その任用が違法であったとしても、また、上記格差や差別等の理由により、原告の非常勤職員としての任用が違法であったとしても、平成12年12月15日付被告準備書面(1)で述べたように、そもそも原告が常勤一般職として任用されることは法制度上あり得なかったのであるから、常勤一般職として任用されるべきであったとの仮定の事実を前提とした原告の上記主張は論理的に成り立たないものと言わなければならない。
すなわち、民間企業などの例では、女性であるが故に正当な昇進が認められなかったような場合、その取扱いが違法、無効とされることの結果、しかるべき昇任措置がとられるという効果を生ずるのであるが、公務員制度においては法制度上常勤一般職としての任用が不可能な場合に、非常勤職員としての任用が違法であるからといって常勤職員としての地位が取得きれることはないから、上記原告の主張は成り立ち得ない。このような場合、単に違法な任用に基づく非常勤特別職としての勤務が事実上なされていたというに過ぎないのである。
以上であるから、仮に本件非常勤特別職としての任用が違法であり、また、常勤職員と非常勤職員との給与等における格差が違法であるとしても、原告の非常勤特別職としての任用が違法であることを理由として、当然に常勤一般職としての給与相当額と原告が実際に受領した非常勤特別職としての報酬等との差額について損害賠償を求めることはできないものと言わなければならない。
第2 学習コーディネーターの職に非常勤特別職を充てたことの適法性について
原告は、原告が従事していた学習コーディネーターの職は、恒久的な職であり、また、その職務の実質も他の常勤一般職が行っている職務内容と同一であることを理由に非常勤特別職としての原告の任用は違法であると主張する。
しかし、そもそも学習コーディネーターの職は、中野区女性会館学習コーディネーター設置要綱(以下「要綱」という。)に基づいて平成元年度に設けられた職であり、必ずしも恒久的な職ではなく(現に平成11年度からはこの職は廃止されている)、また、既に平成12年12月15日付被告準備書面(1)で述べたように、職が恒久的であることが直ちにその職に常勤一般職を充てなければならないことを意味するものでもない。
また、学習コーディネーターの職は、要綱に定められているように、女性問題講座の充実と区民の女性問題に関する学習活動の普及を図るため、@女性会館主催講座の運営、A女性会館以外の女性問題講座の主催者に対する情報提供及び相談、B区民の自主グループによる女性問題の学習活動についての相談等を、女性問題に関する専門的知識、経験を有する者の立場から推進していく職として設けられたものであり(要綱3条)、当初からその職には一定の専門的知識、経験を有する者を充てることが予定されていたものである(要綱4条)。したがって、そのような職に非常勤特別職の職員を充てることは本来の姿でこそあれ、原告が主張するように常勤一般職職員を充てなければならないということはまったくない。
原告は、学習コーディネーターの職がそもそもそのような専門的知識や経験を必要とするものではないから非常勤特別職としての任用は違法であると主張するのであるが、学習コーディネーターの職にどのような知識、経験を期待するかはその職を設けた任命権者の意図の問題であり、任命権者が特別の専門的知識や経験を必要とする職として学習コーディネーターの職を設けた以上、学習コーディネーターには、その職にふさわしい専門的知識、経験を有する者を充てることが本来予定されていたと言うべきである。原告の主張は、行政遂行上必要とされる職を設ける任命権者側の意図、すなわち任命権者が当該職にどのような職務遂行を期待しているかという特別職設置の趣旨をまったく考慮しないものである。
いずれにしても、どのような職を置くか、その職に対しどのような職員を充てるかは任命権者の裁量的判断に任されているところであり、その判断に基づく任命行為が直ちに適法、違法の問題を生ずる余地はない。
したがって、学習コーディネーターの職には常勤一般職の職員を充てなければならなかったとの前提に立つ原告の主張はその前提において誤りである。
第3 勤務の実態が常勤一般職と同一であることを理由とする原告の主張について
原告は、原告の従事した学習コーディネーターとしての勤務内容は他の常勤一般職のそれと同一であり、何ら特別職としての実態を有していなかったとして、原告を非常勤特別職として採用した任用行為は違法であったと主張する。
しかし、上記第2において述べたように、学習コーディネーターに本来求められている役割は、専門的知識、経験を生かして女性会館の行う事業を充実させることにあり、そのため、原告を非常勤特別職として任用し、原告自身もそのような内容の職であることを認識し、自己の専門的知識、経験を生かすことを前提としてこれに応じたのであるから、仮に何らかの事情によって事実として原告が他の一般職職員と同一の職務しか行わなかったとしても、それにより非常勤特別職としての任用行為そのものが直ちに違法となるものではない。
また、特別職として任用されたことと、実際にその者がどの程度専門的知識、経験を生かして職務を遂行するかは別の問題であり、特別職として採用された者が実際には期待されただけの専門的知識や経験を有していなかったり、あるいは期待に応えるだけの職務を遂行しなかった場合、それだけの理由から特別職としての任用それ自体が違法になるものでもない。
なお、実際に女性会館では常勤一般職職員と原告(学習コーディネーター)が二人でチームを組み、職務を行っていたのであるから、女性会館の事業における担当職務内容という側面から比較すれば、常勤一般職と学習コーディネーターの職務内容が重複している部分があったと言えるとしても、前述したとおり、専門的知職、経験を活用するために設けられた学習コーディネーターと常勤一般職とでは、当該当担当職務を遂行していく上において求められる役割は自ずと異なっていたのであり、このことについては、平成13年3月30日付被告準備書面(2)で述べているとおりである。
第4 非常勤制度の濫用についての原告の主張について
原告は、被告区においては非常勤制度が濫用的に運用されており、本件における原告の非常勤特別職としての任用もそれら非常勤制度の濫用の一環としてなされたものであるから、非常勤特別職として採用した原告の任用は違法であると主張する。
しかし、この点についても既に平成13年3月30日付被告準備書面(2)で述べたように、当該職に常勤職を充てるか非常勤職を充てるかは、当該職務の内容や業務量あるいは当時の財政状況や社会状況などの点を総合的に勘案し、判断されるべきものであり、また、原告が主張するように「恒常的な職」には必ず常勤職員を充てなければならないというものでもない。
さらに、今日の国、地方公共団体を巡る経済、財政状況から見れば、いかに効率的に行政を執行し、最小の費用で最大の効果を上げるかといった行財政制度の効率的運営は国家的急務であり、地方公共団体といえどもこれら視点に立った非常勤職員制度の弾力的運用に無関心であってはならないはずである。
以上からすれば、被告区の非常勤制度が濫用的に運用されているとの主張は到底肯認できるものではない。
しかも、こと本件に関して言えば、原告の非常勤特別職としての任用は、原告が社会教育主事の資格を有し、大学の研究者であったことなどの経歴等を考慮の上、学習コーディネーターとしての専門的知識、経験を有する者であるとの判断に立ってなされたものであり、これが非常勤制度の濫用としてなされたものとの原告の主張は失当である。
第5 常勤職員と非常勤職員との処遇上の格差とその合理性について
次に、原告は、被告区における常勤職員と非常勤職員との処遇上の格差は、憲法14条の平等原則に反し違法であるから、原告には当然に常勤職員に適用される給料表に基づく給与相当額が原告に支払われるべきであったと主張する。
しかし、既に平成13年3月30日付被告準備書面(2)で述べたように、常勤職員、非常勤職員であることが社会的身分に当たらないことは明らかであり(乙第13号証及び第14号証)、また、終身雇用を前提とする恒久的、職業的公務員と非恒久的、臨時的な職員とは任用における基本的原理を異にするのであるから、両者の間に処遇上の格差が存在すること自体が不合理であるとすることもできない。
もっとも、両者の格差が社全通念上看過できないほどに著しい場合には、その格差が不合理であるとして違法となり得ることは否定できず、原告の主張もこのことを前提とするものと解される。しかし、被告区における常勤職員と非常勤職員の給与等の格差が社会通念上著しく不合理であると解することはできず、この点についての原告の主張には理由がない。
しかも、被告区における常勤職員と非常勤職員の処遇上の格差とりわけ給与等の支払額の格差が仮に社会通念上看過できないほどに著しいとしても、社会通念上許容し得る範囲内の格差自体は当然に是認されるのであるから、当該格差すなわち非常勤職員として原告が受領した報酬の額と常勤職員であったならば受領し得たであろう給与等の額との差額が直ちに損害の額となるわけではない。
以上であるから、ただ単に被告区における常勤職員と非常勤職員との間に給与等の面で格差が存在しているからといって、直ちにその格差が違法であり、当該格差相当額が原告に対して支払われるべきであるとの原告の主張には理由がない。
第6 女性差別の点について
原告は、常勤職員と非常勤職員との処遇上の格差は社会的身分による差別に当たるとともに、非常勤職員の大半が女性であることから性による差別すなわち女性差別に当たり、違法であると主張する。
しかし、この点についても前記第5及び平成13年3月30日付被告準備書面(2)において述べたごとく、そもそも被告区における常勤職員と非常勤職員との間には、違法な差別はないのであるから、それを前提とする女性差別の事実もないと言わなければならない。
しかも、被告区における非常勤制度は、それ自体女性のみを対象とするものではなく、直接女性差別につながるものではない。
また、原告は、非常勤制度が直接女性を差別するものではないとしても、結果として女性の多くがこれにより差別的不利益を余儀なくされる場合は、間接差別として女性差別にあたると主張する。
しかし、平成13年4月1日現在、被告区において採用されている非常勤職員309名中、男性は108人(35パーセント)、女性は201人(65パーセント)であり、非常勤職員に占める女性の割合は高いが、これは原告が指摘するほどのものではない。しかも女性の比率が高い原因としては、非常勤という勤務形態が女性にとって働きやすい側面があり、女性の就労希望者が多いこと等の理由が考えられ、女性自身の自主的選択による結果と解することもできるのである。
また、間接差別が認められるためには、当該制度が結果として女性の差別につながることを認識し、それを容認しつつ当該制度を設けるといった事情が必要とされるところ、被告区には女性を差別する意図はそもそもなく、また、制度の内容から判断しても女性差別的な結果が想定される特段の事情も認められない。
以上であるから、被告区の非常勤制度及びその運用が直接であれ、間接的であれ女性差別にあたるとすることはできない。
第7 求釈明
原告は、非常勤特別職であった原告に、地方自治法204条に基づき定められた中野区職員の給与に関する条例に基づく給与を支給すべきと主張するが、その法律上の根拠を示されたい。
第6回 弁論準備手続
日 時:2001年6月30日(火) 14:35〜14:50
場 所:東京地裁13F 第11民事部
出席者:裁判官1名 原告側7名(弁護士4、原告、傍聴2) 被告側7名(代理人5、傍聴2)
記 録:長倉 敬子
裁判官:次回の日程ですが・・・では次回の準備書面提出は7/25、次回は8/3、午前10時ということでお願いします。
裁判官:被告の準備書面は今回の原告の6/18付準備書面に対する反論ですか。
被 告:正式に今回の反論ではなく、時間的に前回までの反論です。
裁判官:原告に整理して頂いて主張がわかります。被告にそれに沿う形で反論して頂きましょうか。違法事由がいろいろ書かれていますが、性差別、差別にあたらなくても非常勤職員ということが違法という仮定のもとに並列的に違法事由を並べているということですね。
原告(中野):そうです。どれからでも構わないということです。
被 告:違法の効果は同じとお考えですか。本来常勤として雇うところを非常勤職員として雇ったことが違法、つまり任用自体が違法無効とお考えということですか。
裁判官:事実関係は若干のくい違いはありますが、争点は特にないと考えていいですか。
被 告:学習コーディネーターをどうして設けたかについてかなり違いがあります。認証を含めた証拠調べをしたいと思います。特別職としての位置付けは事実関係と違いますがあらためて再度書かせて頂きました。
裁判官:そのへんをまとめるということでお書き頂ければ。まとめ直すという形で、重複をいとわずに。(原告に)原告の準備書面のデータをフロッピーで頂けますか。(被告に)被告にもお願いします。
被 告:非常勤制度のもとでの給与体系が差別的だという主張ですが、全く同一でなければ、というのは今の社会では認知されていないことで、仮に差別自体問題だとしても、全く格差が合理的なら許されるものではある、という認識はありますか。合理的裏付けがなければ…あるところまでは格差を社会が容認、共有している場合、その間であれば容認はされるのですか。合理的格差についてはこちらで主張するのですか。一般に合理的かどうか、そちらで主張されるのですか。
裁判官:それも含めて議論した方がいいと思いますが。
原告(中野):これまでならいいという議論をするつもりはありませんが、まとめて頂ければこちらで反論しますが。
被 告:立証責任はどちらにあるかということです。
裁判官:できるところは被告にもやって頂きたい。
被 告:具体的に根拠となる事実を原告に出して頂きたい。
裁判官:特にこれがあるから不合理、というものを出したわけではなくこれまで原告が主張してきたものということです。
被 告:事実についても誤解されている部分があるのでそれについても指摘したいと思います。非常勤職員の報酬について、7ページの違法の根拠として、(3)「年額の上限を88,000円と定めている」というところですが、これは年額の場合であり、原則月額で、現在は上限は35万となっています。一部だけをとらえているのでしょうか。
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