外来点描7

                   平井誠一

腫瘤触れ小指頭大とアナログ表現もありて我が外来

 学生時代の病院臨床実習の時、リンパ節の大きさを小指頭大と好んで用いる年配の内科教授がいた。私は使ったこともなく、小指頭大という表現がとても印象深かった。1p×1pぐらいを表すのだろうとイメージした。人により多少のばらつきがあるにしてもイメージする大きさはそう大きく違わないだろう。小指頭大に対して拇指頭大があり、2p× 2pぐらいを表すと思われる。

  実習ローテートで外科を回った時である。私はリンパ節の大きさをこの時ばかりと「小指頭大」と表現したのだが、米国帰りの熱血指導医はそんなあいまいな表現ではダメだ、測定して何センチと表すべきだと注意された。それはその通りと理解するも小指頭大のアナログ表現に棄てがたい魅力があった。

 それで我が外来では今も小指頭大との表現が時々ではあるが用いられている。

 

先天性白血病児、今七歳となり明日から夏休み

 先日のこと。夏カゼでの来院であったが、久しぶり。もう一年生となっている。そして明日から夏休み。家族にしてもここまで来られたひときわの感慨があるに違いない。意義深い夏休みとなるだろう。

初診は6年前の生後2ヶ月の時であった。湿疹が出てきたと連れてこられた。診察台の赤ちゃんを見てびっくり。胸や腹部の皮膚に暗紫色のかなり大きな斑状皮疹がある。これが白血病斑と呼ばれるもの。先天性白血病である。私の経験した2例もそうであったが予後は極めて不良であり、正直もうこれが最後になるかと思った。複雑な気持ちで病院への紹介状を書き母親に渡した。受け取る母の手は震えていた。

 その後約6ヶ月の入院で、以後外来通院加療となり、そして5年以上が経過した。もう心配ないだろう。驚嘆すべき治療の進歩だ。  

 

「双眼鏡だ」、「違う顕微鏡」と母、子の意味双眼顕微鏡

 先日の事である。小学6年の男児が診察室に入ってくるなり、顕微鏡を見て「双眼鏡だ」と声をあげた。双眼鏡というものだから、「顕微鏡でしょ」と反射的に母親が言った。

違うお母さん、この子供の意味するところは「双眼顕微鏡」である。顕微鏡に興味を示す子供は多いが、単眼、双眼と区別した子どもはこの子がはじめてであり、ちょっとびっくりした。「双眼顕微鏡とよく知っているね」と言った。周囲も注目した子供のことばという事で一つ思い出した。

 あれは中学2年の美術の時間であった。エッチングの実習があり、いよいよインクをふき取り腐食線にインクを残し、手回しのローラープレス機にかけて白い紙に転写した。その描線クッキリと出来上がった作品を見るや私は「鮮明に写っている」と声をあげた。その時先生はちょっと驚いたようで、「鮮明、良いことばを知っているね」と言ってくれた。私の用いた言葉に先生が驚いてくれたことがなんともうれしかった。思えばこれがことばに対して幾分のこだわりをもつ私の原点となっている。

教師の一言の影響は時としてとてつもなく大きい。