かつてのの不動産登記においては、例えば売買の場合、司法書士が売渡証書を作成し、この他売主の権利書及び印鑑証明書や、買主の住民票など必要書類を添付して法務局に登記申請をすると、この売渡証書に法務局の受付印が押印され法務局より返ってきました。
そこで、その返ってきたものに登記権利証書などと書かれた上質の表紙をつけて買主の方に権利書としてお渡しし、買主の方はこれを、次に物件を売却したりするまで金庫などに大切に保管されていました。

 しかし、電子政府構想の実現、いわゆるe-japan構想により、不動産登記もオンラインによる申請に対応することが求められ、今までの不動産登記法の改正の検討が始まりました。 そしてその結果、単なるオンライン申請のための部分的な改正というに止まらず、105年ぶりに不動産登記法が抜本的に改正されることになりました。

 大きくは下記の点が変更になります。

登記原因証書の廃止、申請書副本の廃止→登記原因情報の必要的提供
登記済証(権利証)制度の廃止→登記識別情報の導入 (←それぞれの管轄法務局のオンライン指定により順次)
保証書の廃止→事前通知制度、資格者による本人確認情報制度 

登記原因証明情報の必要的提供

 
 登記原因証明情報とは従来の原因証書に近い新概念で、例えば売買なら売買についての具体的事実を記載したものに当事者が署名押印したものです。従来、売買登記や、抵当権設定登記の場合、原因証書(売渡証書や、抵当権設定契約書)は、法務局で調査した結果、受付印が押印されて返却された(これが登記済証なり権利書となった)のですが、改正法後は、登記原因証明情報を法務局に提出すると、法務局は申請書とともに、これを保管することに変わりました。また、従来、契約書などがなくても、登記申請はできたのですが、改正法後は、なんらかの登記原因のわかる書面等を用意しなければならないことになりました。

※例えばこれまで、抵当権抹消などの場合、金融機関によっては、特に弁済・解除証書等の書類の交付はなかったのですが、改正法後は、この書面を提供しなければなりません。
※また、売買に関する具体的事実の交付を義務付けられたことにより、登録免許税を逃れるための中間省略登記もできなくなりました。

登記識別情報の導入


 2005年3月の改正法施行日以降、各法務局は順次指定を受け、指定を受けた法務局より登記のオンライン申請が可能になっているのですが、オンライン申請が可能になると、売買登記など、新たに権利を取得される方については、登記済証(権利書)は交付されず、替わりに登記識別情報という12桁の英数字のパスワードが交付されます。このパスワードは、権利を取得された方が、次回不動産を売却したり、抵当権を設定する場合に、法務局にそのパスワードを提供することによって、所有者であることを証明していくことになります。


  ただし、このパスワードを他の誰かに知られてしまう=権利証を奪われるということになるので、誰にも見られぬよう大切に保管しておかなければなりません。
このパスワードの保管が不安であれば、登記識別情報の不通知を申し出ることも可能となりますし、見られた可能性があれば失効させることもできます。


事前通知制度、資格者による本人確認情報制度

上記のように、登記識別情報の不通知・失効を申し出たり、あるいは単に紛失・失念したりして登記識別情報がない場合、又、オンライン指定前に権利証を取得した人が権利証を紛失した場合において、次に登記識別情報(権利書)を必要とする登記を申請するときには、事前通知制度といって、例えば売買登記の申請をした後、法務局から、売主宛に本人限定郵便で、売主に間違いないかの通知があり、売主は、郵便局員等から本人確認を受けた上、法務局にその通知書を届け出て、法務局が登記の処理を進めるというものです。

 しかし、実際の不動産取引においては、売買の決済と、登記申請は同日に行うため、このような方法では取引に支障がでることも考えられます。そこで、登記申請の代理を業とする我々司法書士が、売主の方の本人確認、所有者であるかの確認、売渡意思の確認を行ったうえ、その情報を法務局に提供することで、事前通知をすることなく、登記申請を受理してもらうことができる制度が、「資格者による本人確認情報の提供制度」として新設されました。

その他、次の点でも注意が必要です。


前住所通知

 売買などの所有権に関する登記の申請について、申請前の3ヶ月以内に、売主の住所について住所変更の登記がされているときは、法務局が登記上の前住所にあてて、売買登記の申請があった旨を通知します。これにより、もし真の所有者が、自分の知らない間に、住民票上の住所を移転され、名義が移されるというなりすまし登記行為を防げるわけです。


原本還付制度の変更

従来、印鑑証明書、住民票、会社の代表者資格証明書など、すべての書面において、原本還付は可能でしたが、改正法後は、印鑑証明書(申請書、委任状、承諾書につけるもの)および委任状等の当該登記のためだけに作成したものと判断される書類についての原本還付はできなくなりました。



なんといっても105年も続いていた現行不動産登記法の全面改正ですので、他にも出頭主義の廃止など論点はとても書ききれないほどありますが、主だった部分だと思われる点について挙げておきました。 

本来の目的であるオンラインによる申請ですが、やはり、すべての書類を電子データ化できることが条件となります(印鑑+印鑑証明書は電子署名+電子証明書による)ので、新法施行後法務局がオンライン指定となったからといってすぐに一般的になるこは考えられませんが、将来的には取引の現場より申請もできてしまうということになるかもしれません。


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2005年3月7日より、不動産登記法が大幅に変わります