
| 書名 | パラサイト・シングルの時代 | |
| 著者 | 山田昌弘 | |
| 出版社 | 筑摩書房 | |
| 初版 | 平成11年10月20日 |
パラサイトとは寄生虫のことである。表紙見出しに「・・・何の気兼ねもせずに親の家の一部屋を占拠し、自分の稼いだお金でデートしたり、海外旅行に行ったり、車やブランドものや、彼氏や彼女へのプレゼントを買う。このように、学卒後もなお、親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者をパラサイト・シングルと呼ぶ」とパラサイト・シングルを定義している。
著者は現在、東京学芸大学で家族社会を研究する学者である。パラサイト・シングルというネーミングは別にしてパラサイト・シングルが現在の社会現象を解明する鍵を握っているという著者のアプローチは非常に面白い。ついつい引き込まれてしまう。
以前、独身貴族という言葉があった。既婚者は独身者を捉えて自由な身分であるとの羨望の意味も込め独身貴族と呼称していた訳だが本当に優雅に気ままにリッチな生活をしている独身貴族中の独身貴族は独り身で生活している独身ではなく親に寄生し生活条件を親に一切合切おんぶにだっこしてもらっているパラサイト・シングルを言うらしい。
親に寄生しているパラサイト・シングルは定職を持っているので所謂、プー太郎状態ではない。そして自分が稼いだ給料の大部分を小遣いに廻せる日本で一番リッチな一団と著者は見る。このパラサイト・シングルが日本中で一体何人位いるかと言うと、その数、約1000万人という。日本の人口の約1割弱。この数が寄生虫の数らしい。
1000万人という寄生虫はもうあらゆる社会現象を生み出していると著者は見る。その一例として少子化の問題が採り上げられている。女性があまり子供を産まなくなったという統計が昨今よく出る。本書によれば既婚女性が一生のうちに子供を産む数に大きな変化はなく統計上、少子化傾向と出る原因は未婚者が増えているためで、既婚の女性が子供を産み、子供を育て易くする為に保育所を整備するとかいった施策は本質を捉えていないという。女性の多くは結婚後今でも専業主婦を望んでいるが、専業主婦として自立するより親の脛をかじって生活するパラサイト・シングルの方が楽であるという理由から又、普通、結婚適齢期にある男性は収入もあまり高くなく結婚してもそれまでの優雅な生活を維持できないという理由からついつい独身のままでいる、これが少子化の一番の原因と著者は見る。その他、住宅取得者の減少、自動車売れ行き鈍化、家具需要の落ち込み、不動産の売上鈍化等全てパラサイト・シングル現象だと・・・。
しかし著者はこのパラサイト・シングル現象を肯定している訳ではない。著者はこのような依存主義はいずれ社会の衰退を来たすであろうと予測し、若者の自立支援策を早急にたて、親から離れた二十代の青年が一人またはカップルでそこそこ豊かな暮らしができる条件を整えることがパラサイト・シングルをなくす鍵であると結んでいる。