ハワイアンセンターに学ぶ構造改革   01.12. 7

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準大手のゼネコン、青木建設が経営破たんしたというニュースが各紙のトップを飾りました。テレビ報道などでは、構造改革に伴う「痛み」の表れだという表現がくりかえされました。
談話を求められた小泉首相が「構造改革が順調に進んでいる表れでしょう」と発言したことも取り上げられ、経営破たんを「評価」するような口ぶりを批判する声もあがりました。

私はこのような言葉尻を取った批判はしたくありませんが、しかし小泉首相の談話には全く賛同できません。一体どこをどう見れば構造改革が進んでいることになるのでしょうか。

確かに、小泉首相の取る政策は今までの政府が取ってきた政策とは異なります。
青木建設は、借金が多く収益も低いという「死に体」の企業でした。それでもこれほどの大企業が倒産すると関連産業への影響が甚大なものになるため、橋本、小渕、森の歴代首相は「死に体」の企業に国からの援助をつぎ込んで必死の延命治療をしてきました。しかしこうした必死の対策を行っても景気は回復せず、国の借金ばかりが膨れるという結果になってしまいました。
そんな中で登場した小泉首相は、国がむやみに援助をしても借金が増えるだけだという反省から、国債発行額30兆円以内を堅持するなど財政のスリム化を打ち出し、借金を多く抱えた企業は不自然に延命するよりも自然に倒産させるという政策を取っています。

森首相までの、景気回復のために国の予算をバラまく政策が、もはや通用しないということはわかっています。ですから小泉首相が行うように国の出費を抑え、弱体化した企業は倒産やむなし、という態度を取ることに関しては理解ができます。しかし小泉首相はそれだけなのです。緊縮財政を維持しながら市場の淘汰を待っているというだけであり、構造改革といえるものではありません。
自らの政策が失業者を大量に生み出すことが分かっていながら、失業者に対する配慮は全く見えてきていません。

構造改革は単なる財政政策ではなく、社会政策であるべきです。
採算性の低い部門を単に切り落とすのでなく、切り落とされた資源は次にどこへ行くべきかを明示しながら切らなければなりません。

以前朝日新聞に載っていた「ゼネコン淘汰」の記事が印象に残っています。倒産した建設会社に勤めていたある社員は、「業界の整理・淘汰は必然だ。」と冷静に受け止めながらも、「構造改革に直撃されるのは私達なんだろうが、さあITだ介護だと言われても、私達の居場所は建設業しかない。」と嘆いています。
日本の労働者の中堅以上の方々は転職に対して抵抗感を持っています。まして建設業界の中堅以上の社員には日本経済を支えてきた誇りもあるでしょうし、そう簡単に産業構造の転換の波に乗れるものではありません。だいいち、他の業種で頑張ってみようと前向きに決心したところで、そのための訓練ができる場がありません。日本の職業訓練制度の貧困さは何度も指摘されています。

年齢の高い失業者に対しても転職がスムーズに行くように職業訓練などのハード面を整え(雇用・能力開発機構は特殊法人改革の対象になっていますが、今が一番活躍すべき時なのに整理縮小の対象となるのはおかしな話です)、また現在は産業構造の転換期なのだから転業はむしろ必要だという意識を首相主導で国民に波及させるなどソフト面での改革も進めて、失業者の再雇用を促す必要があるのではないでしょうか。
「次の構造」が見えない限り、構造改革にはなりません。

今日、たまたま見たテレビで「常磐ハワイアンセンター」ができるまでを知りました。
もともと炭鉱で生きていた街が、石油へのエネルギー転換によって閉鉱に追い込まれました。石炭業者は倒産寸前で、2万人以上の鉱夫とその家族が路頭に迷うことになりました。しかし鉱夫と家族達のことを案じた石炭業者の社長は「日本のハワイ」と銘打ったリゾート施設を開くことを決断し、従業員は全員、鉱夫と家族を雇うことを決めます。
鉱夫たちは、接客業の訓練のためにホテルに出向して研修を積みました。鉱夫の娘達はフラダンスのショーの練習を続けました。
暖房の工事が間に合わず、施設内に植えた熱帯植物が冬の寒さで枯れそうになると、街中の住民が自分は寒さに耐えながらストーブを提供し、ひと冬の間熱帯植物を守り続けました。
やがて街全体が協力して作り上げた「ハワイアンセンター」がオープンすると、フラダンスや熱帯植物も人気を呼び、予想以上の来客を迎え、炭鉱の閉鎖で寂びれる寸前だった街はそれまで以上に活気を取り戻したということです。

この話を要約すると、「街が今までの産業でやっていけなくなることが分かると、次に目指すべき産業をリーダーが明確に打ち出し、住民も全員がその意識を共有して転業に挑戦し、ついには第2次産業(鉱業)から第3次産業(観光業)への産業の転換に成功する」という話になります。
この「ハワイアンセンター」の話は、今の日本がとるべき道の縮図になっていると思います。

次代の社会構造ビジョンが示されてこその構造改革です。現状でむやみに「改革は進んでいる」と言われても、私の耳には空しく聞こえます。

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