「ホームレス自立支援法」成立へ   01.11. 6

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朝日新聞の一面に「ホームレス自立へ立法、今国会中に成立へ」という見出しが載っていました。 思わず目を止めたのですが、次の「自民、民主が提出で一致」という見出しで釘付けになりました。

朝日新聞ホームページの記事全文  (http://www.asahi.com/politics/update/1106/001.html)
(新聞のサイトで署名のない記事は転載がフリーだという約束事があったような覚えがあって掲載しました。)
 ホームレスの自立を支援するための初の法律が、今国会で成立する公算が大きくなった。自民党と民主党が、自立支援の臨時措置法案を近く提出することで基本的に一致したためだ。ホームレスに対する総合的な自立支援策の実施について、「国や地方自治体の責務」と明記。雇用や住居を確保するよう規定している。

 現在のホームレス対策は、生活保護や就労対策は厚生労働省、河川敷を管理する国土交通省、都市公園なら都道府県などと、行政の縦割りの弊害もあって進まず、自治体などから総合的対策を求める意見が強まっていた。

 法案は急増するホームレスの自立支援をねらったものだが、公園や道路管理者に対して「必要な措置を取る」とする項目もあり、ホームレス排除の法的根拠とされないか懸念する見方も出ている。

 自民、民主両党は5日、与野党共同提案に向けて調整に入った。両党の政策担当者が基本的に合意した法案内容は、国や地方自治体に対し、(1)自立の意思があるホームレスには、雇用や就業機会、安定した住居を確保し、健康診断を実施する(2)ホームレスになる恐れのある人には、雇用を確保し、生活相談を行い、ホームレスになることを防止する。またホームレスに宿泊場所を提供し、生活必需品を支給するなど、総合的な施策の実施を国や自治体の「責務」として求めている。

 国はこのような自立支援策をするために、ホームレスの全国実態調査を行い、基本方針を策定する。都道府県など自治体にも具体的な実施計画をつくるよう義務づけている。

 国や自治体には民間団体との連携も強めることを求めるとともに、国は民間団体の活動を支援するための財政上の措置もとる。ホームレス自身に対しても「自立に努める」としている。

 ホームレス問題の早期解決をはかることから、法律の有効期間は5年間としている。

 ただ、同法案には「総合的な施策を実施しても、ホームレスによって公園や道路などの利用が妨げられる時は、管理者が必要な措置をとる」との規定もある。ホームレスの支援団体などは「ホームレス排除に法的なお墨付きを与えることになるのではないか」と懸念している。

「不運な人」と「怠け者」。日本ではホームレスに対して、どちらのイメージが先行しているでしょうか。
おそらく後者の、「怠け者、自業自得」といったイメージが先行しているのではないかと私は感じています。

確かに、社会の規則に従うのが嫌で気ままな生活を求めて路上生活をしているホームレスもいるようです。また高田馬場などでは酒を飲んだホームレスが自分の状態を棚に上げて、真面目に働いている人たちを馬鹿にした態度を取っている風景もよく見かけます。こんな風景を見ると、「自分で稼いだカネで暮らせるようになってから物を言え!」と言いたくなってしまうこともあるでしょう。

しかし日本にいるホームレスのうち、働くことが馬鹿馬鹿しくて好きでホームレスをしているという人は少数なのだそうです。

仕事と家。たまたま運悪くこの2つを失っただけでホームレスにならざるを得なくなります。

例えば、技術革新のあおりを受けた失業。今まで自分の腕一本で生活してきた印刷工の職人がいたとします。コンピューターの普及によって仕事が目に見えて減っていき、やがて失業に追い込まれます。今まで印刷の仕事しか知らなかった人が新しい仕事を探そうとしても、年齢的なこともあり簡単に見つかるものではありません。数日に一度回ってくる日雇いの仕事で何とか食いつなぎますが、ついに家賃が払えなくなって家を失います。

また例えば、大きな事故による失業。高齢の労働者が事故で大怪我をして、解雇されたとします。入院している間は再就職のための活動もできず、蓄えもなくなって住んでいた家を追い出されてしまいます。

このように「住所不定」の烙印を押されると、日本でここからはい上がっていくのは実に困難です。住所がしっかりしていないと清掃の仕事に就くことも難しいようです。ホームレスだとわかった途端に採用を取り消す雇用者も決して少なくありません。
住所がないから仕事に就けない。仕事がないから家に住めない。これは悪循環以外の何物でもありません。今の日本のホームレスの多くはこの悪循環に苦しんでいるのです。

私は前期に日本女子大の岩田正美先生の授業を受けていましたが、岩田先生は日本のホームレス問題の第一人者です(上に挙げた労働者がホームレスになる過程の例も、その授業のテキストを参考にしています。)。岩田先生は「外国の研究者が日本でホームレスの現状を目の当たりにすると「日本人はこんなに多くのホームレスを見てなぜ平気でいられるんだ」と驚く」とおっしゃいました。
他の先進国ではホームレス支援の法制化は当り前になっています。


さて、私がなぜ今日の報道に敏感に反応したかというと、国会でお世話になっている山井和則議員がこのホームレス自立支援立法に大きく関わっているからです。
ここから政治色の強い話になりますが、ホームレスの実態、日本の行政の実情が見えてくると思うので読み進めてください。

日本でホ―ムレスの自立支援の立法をするため、まず動いたのは民主党でした。
昨年10月に「ホームレス問題ワーキングチーム」が発足し、鍵田節哉衆議院議員が座長として、そして山井和則さんが事務局長として活動をされてきました。

このワーキングチームでは、実際にホームレスを議員会館の会議室に呼んで意見を聞くということもしました。

以下はその時の様子が書かれた「やまのい和則メールマガジン第161号」の転載です。
◆鍵田議員、土肥隆一議員、近藤昭一議員と私の四人が対応。まず、議員が一言ずつ挨拶。

鍵田議員が、 「こんなに多くの皆さんに国会までお越し頂いて・・」と話すと、 「まだ一杯いるよ。こんだけじゃないよ。公園には一杯入るよ」と、 正面のおじさんが笑う。 私も多少緊張しながら、 「ホームレスの自立を支援する法案を一日も早く成立させ、みなさ んが職に就いて、屋根のあるところに住めるように頑張ります」な どと言った。

拍手もあったが、「きれいごと言ってんなよ!」などとやじも飛ぶ。 すぐに、ホームレスのリーダーさんが駆け寄り、「意見はあとで言 うように」となだめる。

◆1時間半、ホームレスの方々の声を聞いたが、3つどうしても忘 れられない話があった。私にヤジを飛ばしたホームレスの人の発言 だ。真っ黒な顔をして、ひげをはやした50歳くらいの男性だ。

●「俺はよお、法律の難しいことはわかんないけどよお、山谷で15 年野宿してるんだけど、今年の冬は寒かったよ。年が明けて、雪も 降ったよ。俺は毛布かぶって寝たよ。でも、俺の仲間が死んじまっ たよ。のたれ死にじゃねえか。今年の冬に3人も仲間が死んじまっ たよ。隅田川に飛び込み自殺した仲間もいる。宮城から出てきた少 年は、今年、公園で首つって死んだよ。 なぜ、俺たちが路上生活しなきゃなんないの? 俺たちの仲間の間 で、『黙ってのたれ死にするんじゃない』という合言葉があるんだ。 先生たちは、『ホームレス問題は国の責任』と言うけど、そんなこ と1994年から『国の責任』と言ってたじゃないか。その当時から 頼んでたじゃないか。もう我慢できないよ。 人間に文化的で健康的な生活を送る権利があるなら、先生、法案を 通して下さい!」と、最後は涙声であった。
私も目頭が熱くなった。

●次のホームレスの男性は言った。 「今日もまだ朝からメシ食ってない。今着てるこの服は、粗大ゴミ で拾って、池で洗濯して着ている。私たちにとったら、衆議院議員 は雲の上の人。 雲の上の人に頼んでも何をしてもらえるかわからないが・・・。 先生方はこの集会のあと昼メシを食うだろうが、おそらく食堂で好 きなものを食べるんだろうが、私たちは一日の食料が配給の乾パン の一袋。あとは公園の水を飲んでる。 この乾パンを先生方、食べて見て下さいよ。こんなちっぽけな、乾 パンで生きてるんですよ。こんな状況を何とかしてほしい」 この発言に、ホームレスの方々から割れんばかりの拍手がまきお こった。
◆私の目の前にその乾パンが置かれた。6センチ四方くらいの立方 体の乾パン。オヤツでも足りない。 心が痛んだ。確かに、この集会のあと、私は、議員食堂で10分 くらいの早食いとは言え、定食を食べる。 ふと考えた。もしこの150人のホームレスの方々を議員食堂に案 内し、「好きなものを食べてください!」と言えば、皆さん、どれ ほど喜ばれるだろう。
ただ、私は自分に言い聞かせた。それが根本的な解決ではない。
私たちが国会でホームレスの問題に必死で取り組み、ホームレスの 自立を支援する法律を成立させ、この集会に来られている方々がめ でたく仕事に就くことができ、自分で稼いだお金で食事をしてもら う、こうすることこそが私たち議員の仕事である。

●次に神奈川でホームレスを支援するボランティアの人の発言。 「油断をすると野宿者は襲撃される。先日も野宿者が公園で食事を していたら、高校生くらいの若者が、「うまそうだなー」と声をか けてきた。野宿者が、「うるせえなー」と不機嫌に答えたら、その 少年が近くにあった看板で、その野宿者の頭を殴った。 その野宿者は脳挫傷で意識不明の重体になった。その直後に自分が パトロールして発見し、病院にかつぎこんだ。命に別状はなかった が、危ないところだった。

また、妊婦のホームレスがいた。 福祉事務所に生活保護の申請に行ったら、『アパートを借りて居住 地をはっきりさせたら生活保護の申請を受け付けますよ』と職員か ら言われた。もとからアパートを借りられるんならば、誰も野宿な んかしていない。野宿者にアパートを借りてから、申請に来いとい うのは全くのナンセンス」

以上、書き出せばキリはない。多くのホームレスがもともと日雇 い労働者だったが、今は仕事がない。みんな働く意欲は持っている。

◆このように切実なホームレス問題であり、ホームレスの自立を支 援する法律の成立が早急に求められている。

しかし、私たち民主党がつくった議員立法「ホームレスの自立を支 援する法案」は、「今通せば民主党の手柄になる」というような理 由で他の政党から賛同が得られず、成立の見込みは立っていない。 別に、私も鍵田議員もホームレスの問題で手柄を立てようとなん か全く思っていない。超党派で一日も早くこの法案を通したいもの だ。 政治家の党利党略をこのような問題では離れて大同団結すべ きである。


そして民主党は今年の6月14日に議員立法としてホームレス自立支援の法律を提出しました。

以下は法案提出の様子が書かれた「やまのい和則メールマガジン第159号」の転載です。
民主党の議員立法「ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法 案」について。ホームレス問題ワーキングチームの鍵田節哉座長と、 事務局長の私で記者発表。

(明日も、厚生労働省で同じく記者会見。)

「先進国でホームレスについての法律がないのは日本くらい。ホ ームレスと言えば、怠け者、というイメージがあるが、実際にはホ ームレスのうち約7割が職を得て、働きたいと希望している。今ま でホームレス問題は地方自治体にその対応が任されてきたが、国の 責任と財政支援をこの法律によって明確にした。早急に法律を成立 させたい」と、まず、鍵田座長が挨拶。

次に私が、「現在3万人とホームレスは推定されるが、小泉首相 の財政再建や構造改革により、ますます増えようとしている。 ニューヨークでさえホームレスは、1000人以下なのに、大阪で約 12000人、東京で約6000人ものホームレスが放置されているのは、 行政の怠慢である。日雇いの建設労働が減った今日、ホームレスが 増えたのは、本人の怠慢というよりは、日本の労働政策の問題だ。 就労意欲のあるホームレスの人々に仕事を斡旋するのは行政の責務 である」と前置きした上で、法案の条文を説明した。

今まではホームレスに関する法律がなかったために、その対応は 地方自治体に任されていたが、財政的な限界や、さらには、ホーム レス対策に力を入れるとその自治体にホームレスが集まる(「呼び 寄せ効果」と呼ぶ)もあり、法律をつくり、国による施策の基本方 針の確立や責任の明確化を求める声が高まっていたのだ。

◎ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法案
  目次
 第一章 総則
 第二章 国等の責務など
 第三章 基本方針及および実行計画
 第四章 財政上の措置など

 法案のポイントは、
(1)ホームレス問題への国の責任を明記
(2)ホームレスの人々の就労・職業訓練・住居の確保・医療の確保などの支援
(3)NPOなどの民間団体との連携
(4)都道府県に実行計画の策定を義務付ける
(5)ホームレスの全国規模の実態調査を行う
(6)「自立に努める」というホームレス自身の自立への努力を求める
(7)「国民の協力」として、「国民は、ホームレスに関する問題について理解を深めるとともに、地域社会において、国及び地方公共団体が実施する施策に協力すること等により、ホームレスの支援等に努めるものとする」
と書いている。

これは、ホームレスの自立支援センターや宿泊所、グループホー ムなどを地域社会につくる際に、しばしば地域から反対運動が起こ るが、その問題に対する理解を求めたものである。

ニンビー(NINBY)という言葉は、ホームレス問題ではよくアメリ カでも使われる。not in my backyard、つまり、「ホームレスの自立 支援には賛成だけど、自分の家の裏庭にだけは、その施設は建てな いでね」という意味だ。
そうならないように、国民の理解も求めているのである。
 以上のような内容。

◆記者会見のあと、鍵田議員と共に赤松広隆国会対策委員長に挨拶 に行き、その後、衆議院の事務総長に法案を持って、提出に行った。 NHKのテレビカメラが取材に来ていた。

私にとっては、議員になって初めての議員立法の提出。 鍵田先生から「ホームレス問題の議員立法をしたいので手伝ってほ しい」と、声をかけられたのが昨年10月なので、かれこそ8ヶ月 かかった。 このようにして法案を国会に提出するのか、と感慨深いものを感じ、 このような重要な仕事を私にお声がけ頂いた鍵田先生に対して感謝 の気持ちで一杯だ。

◆しかし、問題は法案のゆくえ。日に日にホームレスは増え、路上 死も増えている。一刻も早くこの法律をつくらねばならない。
当初は他の政党も民主党の案に賛成し、超党派で法案を提出し、 成立させる予定であった。しかし、残念なことに法案提出が選挙前 になってしまったために、 「ホームレス法案を成立させると原案をつくった民主党の得点にな る。参議院選挙前に民主党にいいカッコされてはたまらない」とい う思惑もあるようで、他の政党は私たちの法案にノーと言っている。
鍵田節哉議員も、「こんな問題は、どの政党の手柄とかは関係な く、超党派で取り組んで一日も早く法律を成立させないと、結局は、 ホームレスの人々を苦しめてしまう」と嘆いている。

とにかく、この国会中に審議してもらえるように赤松国会対策委 員長に頼み込んだ。

 この法案の全文は、私のホームページ
http://member.nifty.ne.jp/yamanoi/siryo/houan/h_r.htm
に掲載されています。ご覧下さい。


残念ながら6月の通常国会中には成立しなかったこの法案ですが、自民党と民主党の法案共同提出という形でこの臨時国会中に成立しそうです。ホームレスにとっては最も厳しい冬がやってきています。これ以上先送りされなくて良かったと思います。

不運にもホームレスになってしまった方々にもチャンスが与えられる制度が整い、ホームレスを一律に差別してしまっている雇用者の意識改革をリードしていける法律になることを期待したいと思います。

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