救急現場、救命率アップへの取り組み   02. 6.29

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2002. 7. 7更新

この文章は、今年3月以降の「やまのい和則メールマガジン」の内容を参考にまとめたものです。

■ 問題の基礎知識 ■

救急救命士という職業がある。「救急救命士法に基づき、救急車に乗車して医師の指示の下に救急救命処置を行う者」のことだ。

今年の春になってから、救急車の中で救急救命士が行える行為が限られているために助かるはずの命が失われる例があるという問題がよく取り上げられている。

まず最初に取り上げられるようになったのが、救急救命士の気管内挿管という行為の是非について。
救急救命士が救急車の中で気管内挿管という方法を使えば、命を救えたかもしれない例があるそうだ。しかし現行の法律では、気管内挿管は医師にしか認められておらず、救急救命士が行うと違法行為になってしまう。

現実に、秋田市や酒田市の救急救命士などは、「命を救うためには、必要な場合もある」というやむにやまれぬ思いで、気管内挿管を行っていたそうだ。
しかし、昨年末に現地のマスコミで「違法行為である」と問題になったのがきっかけで、厚生労働省が改めて禁止の通達を出し、気管内挿管は行えないことになった。
その結果、救える命がみすみす失われている可能性が高いということである。

救急救命士の気管内挿管に対する反対意見の理由としては、「気管内挿菅は難しいので、救命士に行わせるのは危険」、「医師のバックアップ体制が不十分」、「気管内挿管を現場や救急車の中で救急救命士が行うことが、生存率をあげるという研究結果が十分に出ていない」などが挙げられる。
課題としては、救命士の研修の充実や、医師との緊密な連携が必要になってくる。
ある学会のアンケートでは、「現時点で救命士に気管内挿管を認めるべき」という回答よりも「将来的には救命士に気管内挿管をさせるべき(研修体制などの整備の後に)」という回答に高い数字が出ているそうだ。
救急救命士の医療行為の拡大には、救急医療行為の検証、救命士の研修の充実、メディカルコントロールなどさまざまな条件整備が不可欠だ。

おおまかに見ると、一般の方や消防庁関係者、救命士本人に気管内挿管推進派、医師や看護士に慎重派が多いようだ。もちろん両者とも人命を第一に考えて意見を出しているわけだが、縄張り意識や利権が絡んでいる可能性もないとは言えない。

ここまで「気管内挿管」中心に書いてきたが、正確には
・気管内挿管に加え、
・除細動(テレビドラマでもよく見かける電気ショック)
・強心剤などの薬剤投与
の3点セットで議論がなされている。どれも、現行の救急救命士法では救命士には認められていない行為であり、認められれば多くの人命が助かる可能性があるというものだ。

ちなみに外国との比較だが、10年以上前のデータだが日本の心肺停止患者の救命率は欧米の4分の1程度だというものもある。その大きな理由は、現場や救急車の中で救命士が行うことのできるる業務の範囲が狭すぎるからだ。
朝日新聞の報道によると、秋田県では過去5ヶ月間で気管内挿管を救命士が行っていれば、命が救えたかもしれない例が3例ある。秋田で3例なのだから、「3点セット」を使えば日本全国では相当数の患者が気管内挿管によって救える可能性があるという数字になる。

■ 改善へ、残る壁は ■

この救急救命士の権限の問題は、1991年の救急救命士法の成立の際にも、今日と同じような議論が国会やマスコミでなされたそうだ。しかしその時に「早急に対応する」と決められたにも関わらず、10年以上も放置されてきたということである。

今年に入ってからの議論の活性化の結果、現在この問題は猛スピードで改善への議論が行われている。
厚生労働省は、今年2月末の時点では「時期尚早」「時間をかけて検討」という見解で、改正に反対の立場だった。しかしまず民主党がこの問題に本腰を入れ出すと、与党公明党も急いでこの問題に取り組み始めた。公明党が積極的になるということは坂口厚生労働大臣が積極的になるということであり、厚生労働省が積極的に動き出すことにつながる。同省は改正へ向けて検討を始めた。

3月の終わりには厚生労働委員会で坂口大臣が、
「除細動を医師の事前指示なしで、救命士ができるようにするのは、早急、年内よりもっと早い時期にする」
「気管内挿管は年内に結論を出す(つまり、改正するということ)」
「薬剤については、難しい問題があるが、検討はする」
と約束した。
大臣は改善へ積極的。政治側は、与野党含め、改善への意見がまとまってきている。
残るは行政側、厚生労働省本体。しかし検討を始めたとはいえ、ここの腰はまだ重いようだ。

こんな言葉も耳にする。
「厚生労働省は、『3点セット』を導入すれば救える人命があることは承知している。導入なんて規則を変えるだけですぐできる。それでも改善はしないという。おかしいだろう?今の規則のままだと命を失う人がいるのは知ってる、それを救える方法があるのも知ってる、でもやらない。薬害エイズの問題と全く一緒だ。」

政治が強いリーダーシップをとれば、役所の政策の転換は実現できる。6年前に菅直人厚生大臣がそれを実証している。薬害エイズ問題のときの菅大臣の役目を、いまの坂口大臣に期待したい。

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