トークセッション「新しい政治の波」を聴いて 02. 7. 4

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7月1日、早稲田大学のサークル「政友会」主催のトークセッションを観覧しました。
「新しい政治の波」というタイトルで、衆議院外務委員会で鈴木宗男議員に迫った姿が有名になった原口一博議員(民主)と、レジ袋税構想をぶちあげこれまた話題をさらった杉並区の山田宏区長のトークです。

ひとつの話題を深める形ではなく、いろんな切り口の話題に簡潔に答える形式でしたが、お2人とも近い考えを持っていることもあり、無駄なパフォーマンスや感情論はなし。独自の政策論が展開され、私にとっては充分に中身の濃いお話でした。
話はコーディネーターの質問によって進められ、内容は「自分の学生時代」「政治家になった理由」「松下政経塾」「レジ袋税」「鈴木宗男問題」「日本の政局」「国民総背番号制」「中田宏横浜市長」「会場へのメッセージ」と、質疑応答の「住民の自治意識を向上させるには」「国政と地方政治の比較」でした。

どのお話も興味深かったですが、この中で特に新鮮な驚きを与えられた以下の3点についてレポートを書きます。
なお、この記事は、囲み枠内を含め、トークセッションを聞いて私が取ったメモを参考に書いており、原口議員、山田区長、政友会には一切関係がありません。また、必ずしもお2人の発言の真意が正確に反映されているという保証はできません。ご了承ください。

■ レジ袋税〜国民のライフスタイルのあり方を問う〜 ■

コーディネーター(以下「Coo」):山田区長、レジ袋税を導入しようと思った経緯は。

山田宏区長(以下「山田」):平成8年、「杉並病」といわれる「化学物質過敏症」と思われる健康被害が起こったのが発端。燃えないゴミをどうするのか、問題提起したかった。その手段として税を使った。
それには選択の自由がなくてはならない。
同じ燃えないゴミでも、例えばペットボトルに課税するのは非現実的である。これを払いたくない人は水筒を持ち歩き、店で飲料を量り売りしてもらわなければならないから。しかしレジ袋税なら、払いたくない人は袋をもらわなければいい。袋の代わりを用意するのは比較的簡単にできる。「レジ袋が要らない」=「税を払わない自由」だ。

別に私は税収を上げるのが目的ではない。日本人のライフスタイルを問うメッセージを発信したいのだ。
イタリアでは打ち上げられたクジラの死体の死因を調べたところ胃に大量のビニール袋が詰まっていて、それがライフスタイルを問う議論に発展した。日本人もこの大量消費のライフスタイルを続けていってよいのか、国民が真剣に考えるようになる一番手っ取り早い方法は、コストを意識させる=税を課すことである。
これを杉並区だけの問題にしないで、これを機に自分達の生活について考える癖をつけ、杉並から全国へ発信したい。

Coo:まだ施行はされていないが、なぜすぐ施行しないのか。

山田:反対意見が多いから。よく聞くと「ゴミを減らすのは賛成、課税は反対」という意見が多い。税を掛けずにゴミが減るならその方が良い。さっき言ったように、目的は税収を上げることではなくライフスタイルを問うこと。だからしばらく待って、実際にゴミの量が減るかどうか調べてみよう、ということにした。現在、毎日細かく統計を取っているところだ。

Coo:原口議員はどう思うか。

原口一博議員(以下「原口」):私は以下の3点からこの取り組みを高く評価している。
1.税は支払いの義務があると同時に、その使途を考える権利もある。税を通して策を考えるようになること。
2.自分の自治体で新税を制定し、独自のシステムを創る試みをする首長が現れたこと。
3.メッセージが自治体内にとどまらず、国民全体へ「突き抜けている」こと。

レジ袋税にこんな大きなメッセージがくっついているとは知らなかった。ワイドショーの議論を見ていると、「杉並区の隣の中野区で買い物すればレジ袋税は払わなくて済む。中野区の近くにすんでいる人と杉並区の中心部にすんでいる人との不公平が問題である」という議論が多い。まだまだメッセージが「突き抜ける」には至っていないといえるだろう。他の自治体でこれに追随するという話も聞かない。
しかし、税が単なる財政政策の手段だけではなく、社会のあり方を問うメッセージという、大きな社会政策の手段にもなるという考えを、眼からうろこが落ちる思いで聴いた。税の本来の目的からは少しずれているような気がするし、税の導入がなくても住民が考えるようになるのが理想なのだろうが、それに至るまで、税制によって住民の意識を育てるという考え方には賛同したい。

■ 住民基本台帳法、個人情報保護法案 ■

Coo:山田区長は住民基本台帳ネットワークに反対の立場を取っているが。

山田:今年8月5日に国民全員に10桁の背番号がつく。最初に400億円、以後毎年維持管理に200億円かけていくことになる。一見、便利になる。銀行の口座も、医療の保険も、免許証も、納税も、図書の貸し出しも、全て同じ番号で管理できる。
しかし逆から見れば、国が国民の情報を一元化したい、管理したいという意図が見える。だいたい、人に番号がつけられるという環境は、軍隊か刑務所しかない。人に番号をつけるという行為には必ず管理という発想がある。

Coo:官僚が、国民をコントロールするという既得権益を守ろうとしているのが問題なのか。

山田:その問題もある。もっと大きい問題を挙げれば、国家の危機ということである。
国民全員に一元化された番号がつけば、その番号からその人の出生、犯罪歴、婚歴、中絶したことはあるか、どんな思想の本をよく借りるのか、などどんな情報も手に入ってしまう。もしこの情報を外部に握られたら、この国の政界、官界、財界の指導者が脅される可能性だってある。これはこの国の安全保障につながる問題だ。

一元化した方が便利だ、という人は任意でそれに登録するシステムにすればいい。私は情報を一元化せず、ひとつひとつに違う番号を持ちたい。

Coo:原口議員は。

原口:やはり危機だ。だが、この住民基本台帳法は、台帳の濫用を防ぐため、現在審議されている個人情報保護法の成立が前提となっているはずである。最近、個人情報保護法案の成立が怪しくなってきて、「そんな前提はない」という政府側の発言も出てきたが、個人情報保護法がなければ住民基本台帳法は無効。私達国会としては、まず死にもの狂いで個人情報保護法案をつぶすよう力を尽くす。

山田:役所に入ると分かるが、役所内は個人情報だらけだ。介護保険ができ、変な話だが「あのおばあさんは自分でお尻が拭けない」という情報もすぐわかるようになった。

韓国では、1960年に全員に番号がつけられ、全員にICカードが支給された。これは、どこに北朝鮮からのスパイがいるのかわからないような国情からすれば仕方がない事情だった。しかし近年になって、北朝鮮からの亡命者がICカードから住所を突き止められ、自宅前で射殺される事件が起きた。これを機に3年前にICカードは廃止された。日本は逆行している。
この問題には思想の右も左もない。人の自由を守るための問題だ。

原口:人を管理し人を人でなくする力と闘いたい。
地方主権が大事だ。外国に行くと分かるが、訴訟などで「国が勝った」「国が負けた」と表現する国は日本だけ。アメリカでは「ブッシュ政権が勝った、負けた」という言い方をする。日本では「国」は国民と違う場所にあるという発想があるが、国は国民みんなのものという発想を持ちたい。
私の仲間が知事になった佐賀県では、情報公開が徹底的に行われている。画期的だ。

これも初めて聞くことばかりでとても勉強になった。
しかし人の自由に関わる大問題なのに、国民議論は全く盛り上がっていない。自分の消費行動に直接関係ないから、関心を持ちにくいのだろう。聞けば聞くほど、これは国のしくみや、人の自由というところにつながる重要な問題だと思った。賛成にしろ反対にしろ、みんなが一度考えた方がいい。
マスコミは、個人情報保護法の、報道規制という自分の既得権益に関わる部分を取り上げるだけではなく(もちろんそれも大事だが)、問題の根本を分かりやすく報じて、みんなが考える材料を提供してほしい。

■ 地方政治の可能性、首長の取り組み方 ■

会場の質問:住民の自治が大事だという話だったが、日本ではまだ意識が不十分。住民の意識向上のためには。

山田:コストを負担することで意識をする。 コストというのは税。レジ袋税に関しては、賛否両論があったので有意義だった。何のためのコストなのか、考えることが大事。
そのためには、首長が逃げないこと。媚びないこと。次の選挙のために政治をするのではない。
以前地元の商店の人たちと話し合いを持ったとき、やはり反対意見ばかりだったが、「私は袋のゴミの量を抑えるのが正しいと思っている。皆さんはタダで袋を配ることが本当に正しいと思っているのか。本当に正しいと思うことをやらなければ、結局商売は成功しないでしょう。」と言ったら、わかってもらえた。
一番分かりやすいのは税が絡んだ問題だ。地方にもっと自主財源があるべき。
首長が挑戦すれば、自主性は育つ。挑戦しなければ無理だ。

会場の質問:山田区長は国政から地方政治に活躍の場を移したが。

山田:実は一度衆議院選に敗れ、次の国政選挙を狙っていた。首長選の出馬要請も断っていた。しかしある支援者のおばあさんから「いい国をつくりたいというのは分かるが、それは国会でしかできないのか、自治体から国を変えればいいじゃないか」と言われ、出馬した。
やるからには国政には戻らない。首長をやってみて、日本の自治体でも実は相当なことがやれることがわかった。選挙さえ意識しなければ、使える力はかなり大きい。税源が地方に来なくても、いろんな策で地方分権は実現できる。分権を実現すれば税源はついてくる。

このトークセッションで一貫して、山田区長は政治家の「志」の重要性を語った。言葉の端々から、山田区長の強い志、強い信念、強い覚悟というものを感じた。首長というポストは、解散を気にせず4年間の任期に打ち込める。議員のように会派内の調整をする必要もないし、ひとりで決められる権限も大きい。だからこそ信念を貫きやすい立場であるし、また信念を貫かなければならない立場である。
どうしても調整が必要になる議会では得られない視点を教えていただいた。

■ 全体を通して ■

原口議員、山田区長、両名とも非常に強いメッセージを発信されていた。しかし思ったのは、それが国民にはまだまだ届いていないということ。メッセージを発信する人が出ても、それを全体に伝える媒体が不十分なのではないか。
本来、その媒体の役目をマスコミが負うべきなのだろうが、マスコミが自由な産業である以上、消費者が好むものに依りついて報道を提供してしまうのは止むを得ない。消費者の嗜好を変えるための情報を流すことは、情報管理と一緒である。
情報社会に入り、ネットワークの可能性も以上に大きくなっているが、首長などが発信したメッセージが全体に伝わり、また住民の考えがすぐ首長につながるための媒体の確立へ、そうゆっくりしていることはできないと思う。

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