表紙に戻る

理科の発展的学習と他の領域との関連をどう図るか〜総合的な学習と教科学習との連携〜

                      内山 裕之(神戸大学発達科学部附属住吉中学校)
@はじめに

 教科学習では系統的な知識を学び、総合的な学習では現実的な課題を学ぶと両者をはっきり区分するのは、いかがなものか。なぜかと言えば、このような区分によって、生徒は教科の学習内容が生活とあまり関係がないと思いがちになる。これでは、生徒は教科で培った学力が、学校を出ても生きてはたらく力になると感じないだろう。そこで教科において発展的学習を実施することで、教科学習と総合的な学習をつなげ、生徒に教科学習を生活に役立つ有意味なものととらえさせたい。
 その意味で、総合的な学習もできる限り学際的な内容(教科と教科の狭間にある学習内容)を実施し、2つの領域が互いに連携をとることが大切である。

A教科の発展的学習をつなぐ総合学習とは

 現在社会では、専門化、細分化をすすめてきた教科を学ぶだけでは、とうてい対処できない課題が噴出してきている。そのために、困難な課題を自らすすんで解決しようとする資質や能力をもった生徒を育成することが急務になっている。別の言い方をするなら、21世紀の教育のねらいとは、全ての教科で培った学力を自ら融合し、新たな課題に果敢に挑戦し、解決しようとする資質や能力を持った生徒を育成することである。とするならば、総合的な学習の時間を設ける意図は、道徳や特別活動と明確に区別する領域を新たに増やすことではない。単に総合的な学習の時間を増やすだけなら、領域が1つ増える分、教育現場にしんどさを持ち込むだけになる危険がある。そもそも総合的な学習の時間とは今までの教科の枠では扱えない端境部分に着目し、それらを融合した内容を学習する時間のことであった。単に一領域を増やすのではなく、今までの領域をつなぎ、生かすための時間である。その意味で総合的な学習の時間において、教科の延長線である学習課題を扱うことこそ、最もその意義にそった取り組みと言える。このような総合的な学習は、複数の教科にまたがる学習内容を、いくつかの隣接する教科が協力して実施するような課題なので、学際的な総合学習と呼ぶ。続いて、理科教師の立場から教科の発展的学習について述べたい。

B理科の発展的学習に適した環境学習 

 環境教育と理科教育の目標はどの程度、違うのだろう。1975年にベオグラードで開催された国際環境教育会議で、環境教育のねらいを明確にしたベオグラード憲章が採択された。この憲章では個人及び社会集団が具体的に身につけ、実際に行動を起こすために必要な目標として、関心、知識、態度、技能、評価能力、参加の6項目を示し、環境教育の目標が単に知識の習得だけではないことを示している。この環境教育と理科教育の目標を比べたとき、環境を自然の事物・現象に置き換えたら、2つはほぼ同じ目標になってしまう。T関心・意欲・態度、U思考・判断力、V技能・表現力、W知識・理解の観点別学習状況評価の柱は、ほぼ同様に環境教育の目標にあてはまる。実際、理科教育のねらいは「身近な自然にふれることで感受性を豊かにする」、「自然との直接経験を通して生命を尊重しようとする態度を育てる」等、環境教育のねらいに通ずるものである。

C必修教科と選択教科は違うか?

 選択と名が付いていても、選択は教科に変わりはないわけで、選択教科の目標は必修教科と同じである。あえて違いを言うならば、選択が必修以上に中学校学習指導要領の内容(最低基準)を超えて専門的な学習へ進んだり、逆に小学校の基礎的な内容を中心に補習したりできるという点である。とするならば、教科(含、選択)の発展的学習として、総合との連携を考慮するなら、環境学習を取り入れることは、非常に有効と考える。

D環境教育は総合や発展的学習に最適

 学習指導要領にある総合的な学習の時間には内容的な縛りはない。自ら課題を見つけ、その解決のための資質や能力、さらには自己学習力を育てることがねらいと書かれているだけである。しかし、環境教育こそ総合的な学習の時間に取り上げるべき最適な学習内容である。その理由は、今日、次々に起きている地球規模の重要課題の多くが、環境に関する事柄だからである。地球規模の環境問題を放置していれば、最悪の場合、人類の存続すら危ぶまれるだろう。その意味で、目まぐるしく変化する環境に主体的に対応し、環境から学び、自然と共生しようとする態度を生徒に育成する上で、環境教育は最適である。

E理科における発展的学習の実際例

 学校が取り組むべき課題は、先ず教科の基礎基本とは何か、個々の学校が自ら問い直すことである。しかしそれだけでは不十分で、次なる課題は、学校が地域の特性や個々の生徒の個性に応じて発展的学習を仕組むことである。生徒は地域に根ざした応用的な(正解が簡単に割り出せない)課題に取り組むことで、学習が有意味なものと感じるだけでなく、思考し判断する能力を養うことができる。

T甲子園干潟の教材化

 私の住む阪神・神戸地域は六甲山と大阪湾に挟まれた都市である。海岸線の殆どはコンクリートの岸壁とテトラポットに変貌している。しかし、そのような中にあって西宮だけにわずかに砂浜や干潟が残っている。生徒は実際の干潟の生物調査から「何故、干潟に動植物が多いのか」、「何故、干潟は海水の浄化作用があるのか」、「何故、干潟に渡り鳥が来るのか」等の発展的学習に取り組む。
 このような環境学習は総合的な学習や他教科の学習(以下に示す内容)とリンクしやすく、地域環境と人間との共生のあり方を考える上で適している。

《総合的な学習でのアプローチ》

 甲子園干潟は地域住民の自然保護活動によって埋め立てられずに残っただけでなく、昔を留める美しい景観ということで、市民に安らぎを与える憩いの場になっている。このような価値の再評価を文化的、社会的な観点で学習していく。