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高齢者の低栄養とその予防
千葉 一博 <2007.3>

介護保険の導入により、それまでの家族が支える体制から社会全体で高齢者を支えるようになりました。その結果、超高齢化と介護の長期化という状況になりつつあります。健康のバロメーターとして「食欲」や、「生きる力」を育む「食」び重要性が認識されてきています。食事の内容の改善や個々人にあった対応、すなわちオーダーメードの対応が求められる昨今になっています。

高齢者の方は、ちょっとしてきっかけで、低栄養状態となりやすく、その結果、もともとの病気が悪化したり、免疫力の低下が起きやすくなります。病気の悪化と免疫力低下の悪循環をくりかえすことにより、長期入院や長期入所となることがしばしば見られることとなります。

高齢になること、加齢による身体機能の変化には、どのようなものがあるかを考えてみたいと思います。食欲が低下する、かむ力が衰える、唾液分泌が減少する、飲み込む力が減弱する、胃液や十二指腸液などの消化液の分泌が減少する、好みが変化する等々の変化が認められます。

高齢になりますと、食欲がかなり低下してまいります。若い頃ほど食べられなくなります。唾液の分泌が低下し、高齢になると唾液の分泌は若い頃の約半分になると言われています。味覚が低下し、特に塩味と甘味の味覚が低下します。その結果、知らず知らずのうちに濃い味つけを好むようになってきます。口渇が鈍くなり、脱水になりやすいということも起きます。歯が弱くなる、歯の老化も生じ、特に何人もの出産を体験した女性では、歯が弱くなることは顕著にみられ、その結果、入れ歯となり、固いものが食べづらくなることも起きます。かむ力は低下(1/3〜1/4になります)し、飲み込む力が低下し、むせやすくなります。胃の粘膜が萎縮し、胃液分泌低下が生じ、膵液分泌の低下も見られます。その結果、脂肪の消化・吸収力低下がみられ、下痢しやすくなります。小腸、大腸の運動能力の低下から消化機能低下や、便秘という状況になりやすくなります。

高齢者の方の、低栄養予防のチェックポイントを考えてみたいと思います。
(1)体重の減少がないか (2)食べる米飯の減少がないか (3)食べるおかずの減少がないか (4)食べる気力の低下がないか (5)動作が不自由になってきていないか 以上のポイントでチェックしていただきたいと思います。高齢者の方が低栄養になりますと、褥創の治癒が遷延し、寝たきり状態になりやすくなります。病気の回復が遷延し、合併症併発率や死亡率が上昇しますので、上記のポイントでチェックし、低栄養にならないようにしていただきたいと考えます。

高齢者の低栄養の原因としての以下の項目に注意しながらお仕事をしていただきたいと思います。食事摂取量の減少、生活活動度の低下、嚥下機能障害の程度、消化機能の程度、味覚低下の度合い、一人住まいかどうかや、老夫婦のみの生活かどうか、無刺激による閉じこもりなどの生活環境要因、精神的要因に注意しながら、介護されたり食事のお世話をしていただきたいと思います。
高齢者の方がどんな物を食べたらよいか、ということに関し調査した結果で興味深い結果があります。動物性タンパク質を多く食べている高齢者の方々のほうが老化の速度が遅く、病気になりにくい。植物性タンパク質を多く食べている高齢者のほうが老化の速度が速く病気になりやすいというデータがあります。動物性タンパク質を効果的に体に取り入れ、体の栄養状態を高めながら生活活動度を高く保つことが大切です。

高齢者の方の食事の注意点を考えてみたいと思います。高齢者の方は摂取する食品が単一的になりやすいので要注意です。また、高齢者の方は食べやすい糖質の多い物が中心の食事となりやすいので要注意です。好きな物だけを食べるのではなく、摂取栄養素の多様性、バランスをとることが重要で、少しずつでも多くの種類のものを食べることが必要です。糖尿病や高脂血症などの病気がない方は、牛乳や乳製品の摂取が有効です。

次に、口から食べることが出来ることの意義を考えてみたいと思います。口から食べることが出来ることにより、五感、すなわち、味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚を通じて脳に刺激が与えられるということがあります。口から食べることにより、人に生きる喜びと楽しみが与えられ、人間としての尊厳を保つことができます。また、口から食べることにより、クオリティーオブライフ(QOL)を高めることができます。以上のことより、可能な限り、口から食べるということが重要であると考えます。
高齢者における食事の意義は、生きる意欲が生まれる、食べることにより栄養を補給する、食べる動作により筋肉を動かす、すなわちリハビリにもなりますし、食を介してコミュニケーションを広げることができるといった意義があります。

以上まとめますと、食事を口から食べることにより、寝たきりを予防し、要介護者を減らしましょう。高齢者の肉体的特徴を理解したうえで、個々人にあった対応をしていただきたいと思います。

(平成18年12月18日、平成19年1月15日(同じ内容で2回開催)に行われました、平成18年度、食と健康スペシャル講座「低栄養を防ぐ介護食と嚥下食」(茨城県立健康プラザにおいて)の講演内容を再構成させていただきました。)

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