3.<年金履歴書>の作成

 さて、このイベントは官民協同で行うものであり、大臣も「国民に、ぜひ協力してほしい」と訴えており、「ねんきん特別便」の内容をよくよく確認して欲しいと呼びかけています。TVや新聞等のマスコミでも一斉に呼応して<自分の年金記録を調べよう>キャンペーンを展開しております

 とはいえ、「ねんきん特別便」の記録を見て、思い出してとか、記憶を呼び出してとか言っても、それだけではせん無いことでしょう。具体的な処方箋がないのでは、不親切なだけではなく、無策と同義になってしまいます。

この点については、政府も大分批判されており、「切れる老人」や「行列のできる社会保険事務所」というミスマッチが発生しています。国民サイドにも、社会保険事務所へただ行けばいいというものではなく、事前にやるべきことがあるはずです。それを以下にお話しします。

人間の記憶とは、前後を関連付けたり、連想で結びついたり、集中していると突然浮かび上がったりするものです。そのために必要なのが、ご自分の人生の棚卸し、全人生の履歴の洗い直し、つまり、<年金履歴書>の作成ということになります。

 1枚の紙(年金履歴書)に、逐年でご自分の全履歴を書き上げていくのです。学校時代から就労時代へと順次記載することによって、記憶は確かなものになっていくでしょう。

仮に不明部分があっても関連事項を記載しときましょう。たとえば、会社名は思い出せなくても業種、建築関係だとか、社長名だとか、場所だとか、何かヒントになるものを書いときましょう。

その記載例が次の帳票です。

●年金履歴書の作成

 初めの第一歩は、「年金加入期間確認」です。これを成功させるために、下記のような「年金履歴書」を作成します。

< 記 入 例 >

年 金 履 歴 書

フリガナ

氏 名

 コウノ サブロウ

   河野  三郎

フリガナ

旧 姓

イトウ

伊藤

フリガナ

誤読名

カワノ

サンロウ

誕生日

昭和20年4月2日

基礎年金番号

  3160 ― 99977x

別誕生日

昭和20年4月1日

国 籍

日本

 

最終学歴 

所在地

在学期間

アルバイト有無

備考

中学校

 

 

高校

 

有・無

 

太平洋 大学

B県A市

S.42〜46

有・無

中国大飯店

大学院

 

有・無

 

 

会社名等 

所在地等

勤務期間等

年金

記号番号等

1. 国民年金

千葉市栄町3

40/4〜42/1

あり

不明

2. 中国大飯店

A市銀座通り

44/8〜6/.3

 

3 広島築炉有限会社

広島県幸町

46/4〜47/9

あり

 ?

4. 絵画新聞社

千代田区神田

49/4〜49/9

あり

2100-32145x

 

海外勤務

海外在住

沖縄在住

生活保護

結婚

    S44/3  

脱退手当金

配偶者の

厚生年金等

S.42/6〜43/6

2101-12365x

配偶者の

国民年金

S.40/4〜42/5

7100-98745x

備  考

誕生日が戸籍謄本を見たら違っていた。

別番号の年金手帳・ABC厚生年金基金の加入員証あり(添付)。

 




































【出所】
http://homepage2.nifty.com/hitosama-no-okane/opm/index/nenkinrirekishoyoushi.pdf

●氏名等

はじめに、氏名等の欄をしっかり記入しましょう。社会保険事務所等のコンピューターで検索をかけるとき、カタカナ氏名と和暦誕生日で行います。旧姓があるとき、要注意です。とくに、男性の場合。また、名前を誤って読まれるときなどはそれを記入します。例えば、「和子」はカズコとフリガナし、誤読名にカヅコと記入しましょう。清音や濁音も明確に書きましょう。更に、誕生日が何らかの事情で幾つかある人はその全てを書きます。別の誕生日を使ったことがある場合はそれも記載します。

●学歴

学生の特例や就労開始時期確認のため学歴を記入します。在学中にアルバイト等したことがあればその勤務先名等を備考欄に書きます。

●職歴等

職歴は古い順に、転勤や無職の期間も含めてすべて記入します。昭和17年以降、軍需工場やGHQなどで働いた経験の有る人も記載します。脱退手当金をもらっていない期間も記載します。

国民年金加入期間については、その時期の住所をできるだけ詳しく書きます。出来れば、その住所を証明する戸籍謄本・住民票等を持参します。保険料領収書等があれば添付します。

会社名は、本社・本店所在地とか、勤務先の営業所・工場名とかも記入します。親会社名で登録されている場合もあります。同じ会社で、単身赴任とか、転勤も書き込みます。とくに、海外派遣等、落としがちです。

勤めていた会社に「厚生年金基金」という企業年金があった場合はその事実も記載します。

倒産・解散等であっても会社が保険料納付していれば、記録されています。

会社名を忘れていても、どんな仕事であったか、業種名を書いときます。自分で年金はなかったなどと勝手に決め込まないですべて書き込みます。

アルバイト・パート・フリーターでも、年金加入がある場合もあります。

共済とか船員保険とか農林年金とかも記入します。ただし、共済についての年金加入期間確認は各共済組合でないとできません。共済組合の事務所に「年金加入期間確認通知書」を請求してください。

年金番号等のわかっているときは、その番号を記入します。

年金加入期間確認のための年金履歴書ですからあなただけが知っている「事実」を記入します。このことについては、誰からも、どこからもとがめだてなどありません。なりすましでなければ。

ともかく、無職の期間も含めて全職歴を網羅しなければ、意味がなくなります。無職の期間も含めて、全職歴を網羅するところが秘術です。これは、あなたご自身以外、誰にもできないのです。つまり、あなたご自身の次のライフ・ステージに向かって棚卸をするということになります。

職歴がたくさんあり用紙が足りなかったら、ご自分で工夫されて継ぎ足してください。

●特記事項

特記事項も、該当がある場合はしっかり記入します。結婚もすべての結婚の記録を書きます。とくに、女性の場合等で以前の結婚の事実を確認するため、「原戸籍(げんこせき)」を事前に用意します。




さあ、あなたご自身の「年金履歴書」を書いてみましょう。

年 金 履 歴 書

フリガナ

氏 名

 

フリガナ

旧 姓

 

フリガナ

誤読名

 

誕生日

 

基礎年金番号

       

別誕生日

 

国 籍

 

 

最終学歴

所在地

在学期間

アルバイト有無

備考

中学校

 

 

高校

 

有・無

 

大学

 

有・無

 

大学院

 

有・無

 

 

会社名等

所在地等

勤務期間等

年金

記号番号等

1.

 

 

 

2.

 

 

 

3.

 

 

 

4.

 

 

 

5.

 

 

 

6.

 

 

 

7.

 

 

 

8.

 

 

 

9.

 

 

 

10.

 

 

 

 

海外勤務

海外在住

沖縄在住

生活保護

結婚

脱退手当金

配偶者の

厚生年金等

配偶者の

国民年金

 

備  考

 

 










































 *在学期間、勤務期間等は和暦表記。                     (OPM
研究会作成)




4.「ねんきん特別便」のチェック

 仮に、このようなことをしないで、国から送られてきた「ねんきん特別便」の記録のままでOKにすると、国家管理のお仕着せ人生ということになってしまいます。とんでもないことです。逆に、国民が政府をチェックしましょう。

 この<年金履歴書>をまず作成し、国から送られてくる「ねんきん特別便」の記録をチェックすることになります。ベースはあくまでもあなたが作成する<年金履歴書>です。これで、政府をチェックします!

前記1.で触れましたように、「ねんきん特別便」が郵送されて来ない場合は、次のようにします。年金受給者の場合はこの<年金履歴書>を社会保険事務所に年金証書・年金手帳等とともに持ち込んで調べることになります。在職中の方は会社に住所変更の依頼をして、その後送付された年金記録を詳細にチェックします。国民年金の方はまず市区町村の窓口で住所変更の手続きを取ります。

 該当者不明の約5000万件の年金記録のうち、1975万件が社会保険庁の「名寄せ」作業では本人特定ができないことを大臣が明らかにしました。ここは、今度は、国民の出番です。「ねんきん特別便」の記録を詳細な<年金履歴書>でチェックし、疑問な点がある場合は直接社会保険事務所に出向いたほうが宜しいでしょう。

 この<年金履歴書>を社会保険事務所へ持ち込めば、不明年金や宙に浮いた年金や紛失年金手帳等の発見に結びつく度合いが高まります。ということは、受けられない年金も受けられるようになるかもしれませんし、年金が増額になることもあります。

また、社会保険事務所で<切れない>ためにも、ぜひぜひ、この<年金履歴書>を作ってみてください。

<年金履歴書>が出来上がりましたら、「ねんきん特別便」とともに社会保険事務所に持ち込んで、年金加入期間確認をしましょう。


●社会保険事務所で年金加入期間確認

詳細な「年金履歴書」が出来上がりましたら社会保険事務所で年金加入期間確認を行いましよう。社会保険事務所等では、厚生年金のほかに、国民年金、船員保険、農林年金の一部、NTT・JR・JTの3共済、厚生年金基金等の年金加入記録を調べることができます。ただし、共済は、各個別共済組合の事務所になります。

実際の年金加入記録確認は、次のような要領で行われます。

@原則本人が社会保険事務所等に出向いて年金相談員に確認依頼をします。代理人は、この年金加入記録確認については、職歴等の細かいところが分からないので、適当ではありません。たとえ妻であっても。ここは、人任せにしないでご自分が出向くべき性格のものです。こういう肝心なところで、手抜きをする人が請求もれ年金につながり易いのです。

持参すべきものは、まずは基礎年金番号通知書、タンス預金している年金手帳、国民年金手帳、厚生年金保険被保険者証等、いずれか。年金の番号の記載されているすべての資料。ついで、前ページの「年金履歴書」。更に、印鑑、古い給与支給明細書・国民年金保険料の領収書等あればそれを持参。問題によっては戸籍謄本と住民票が必要になります。

Aはじめに、年金相談員が氏名(カタカナ)と和暦誕生日を社会保険庁の端末コンピューターに入力して基礎年金番号を確認します。

B次に、氏名(カタカナ)と和暦誕生日、旧姓、別誕生日等を入力して、別番号候補を検索します。それを、「年金履歴書」、または口頭により確認を行います。会社名等が一致すれば本人の記録と判断されます。会社名を忘れている場合は、社名の頭文字だけ言われるので、ここが勝負どころ、なんとか思い出すことが肝心です。クイズみたいな場面になりますが、結構みなさん思い出します。

Cそのうえで、「年金履歴書」に書いた全職歴の年金加入が確認されたかどうか、チェックします。コンピューターでは確認できない記録もありますので、その場合は、「被保険者期間・年金手帳記号番号調査申出書」という書類に未確認分を記入して調査依頼をします。1ヶ月ほどすると、その会社等を管轄する社会保険事務所から文書で回答があります。加入が確認されたら、番号の統合が必要になります。

D本人の加入記録と確認された番号は、その場で年金相談員が統合の手続きをします。多数の番号が明らかになる人もおります。古い記録が出てきたときには、みなさん驚きの声を出します。

E最後に、すべての番号の「被保険者記録照会回答票」を打ち出してもらい、年金の種類と総年金加入月数を把握しましょう。

 このようにして、年金加入記録の漏れが発見できましたら、それはあなたの成功報酬ですから、即、年金請求しましょう。



5.政府と国民のミスマッチを救おう

ところで、5000万件問題の真因は、政府・社会保険庁・企業年金連合会・企業等が指弾されていますが、それは現象面であって、そもそも日本には<人様のお金>を<他人の金>扱いする風潮が蔓延し、信託の観念(フィデューシャリ)が無いことに由来しています。その観念を醸成していくためには、「ねんきん特別便」や「ねんきん定期便」等年金支払団体からの年金加入履歴の年々の通知が不可欠です。

当面は、大臣も困惑しているこの問題に対する具体的解決策は、国民サイド作成の<年金履歴書>と政府作成の「ねんきん特別便」のつけ合わせで、おおよそが解決することになりましょう。つまり、この記事は、政府を救済する具体策の1提案でもあります。

最後に、筆者は、政府・国民、双方にとつてとって、互いに一歩前進できる効果的な具体策<年金履歴書>を提案することで、双方のミスマッチが解消し、双方にほんの少し貢献できるのではないかと考えております。




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*下記Webサイトで、「年金履歴書」用紙が印刷できますのでお使いください。

http://homepage2.nifty.com/hitosama-no-okane/opm/index/nenkinrirekishoyoushi.pdf

又は、「年金カウンセラー」で検索し、「@年金」の<・年金履歴書用紙 印刷して使用可>をクリックしてお使いください。





【筆者略歴】

昭和16年生れ。年金カウンセラー。東洋大学哲学科卒業。著書は『情緒の力業』(近代文藝社)。 某企業の厚生年金基金に25年勤務、その間に基金業務改善、資産運用、年金セミナ−等行う。定年後、社会保険事務所で年金相談員を5年経験し、現在、Webサイト「@年金」で公的年金と企業年金の総合年金カウンセリングを行っている。

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