うぇぶ烏通信 亭主吟詠集

紅い灯からすの

<2003.8>

なにものになるとも知れず日暮して
さかみちはたち反吐して月夜


いくつものあの夏この夏遠い夏
もうなにも待たなくなって今の夏


「生ビール」が発泡酒でもその夜が
紅い灯だったらそいつが一番


吹き降ろす風は忽ち上昇気流
虎溌剌と颯爽とここにあり


でろりんの街への段々ケロケロリン
汗に湿った屁ーこいてViiiB


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<2003・9>

そしてまた夏は終わってトンネルを
やって来たのは電車だけ



熱狂を今や遅しと虎の庭
闘志溌剌秋はいまだき



波の瀬に昨日も今日もゆらゆらと
有象無象も揺られてゆれて


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<2003・10>

金玉とふんどしという名で二軒
なかよしこよし夕焼けこやけ



天下茶屋松虫姫松我孫子道
 あの子が泣いた小橋にたんぽぽ



早足を山のお寺の鐘が追う
キリンレモンの秋のみじか日

行き死にを見つめ続けた地下道の
火葬場に似たタイルと鉄扉

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<2003・11>

夕暮れに目覚めてしまった煩悶と
自嘲を抱いて寝床にこく屁



既視感に振り向いてみる日暮れ時
草に埋もれてなつみかんの庭



明け方に夢がかがんでいた路地の
奥間に鬼の潜んで真昼



一瞬をバスの窓から覗いた家に
笑い声して灯の下あかく

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<2003.12>


軒下に星を飾った家の前
急ぎ行く人手に薔薇の花


手を曳かれええとこええとこ新開地
夢の残滓の眠ってまひる



地下鉄のそのまた地下の底の底
秘密の列車は真夜中始発



あの部屋のあの窓開けてみた夢は
環七あたりにまだぶらぶらと



赤い実に雪の降り積み夕間暮れ
びゅんびゅん鳴るのは電線ばかり

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2004年1月
まほろばの丘のやぐらで昔の人は
何を願うて日の出を見しや


どぶ川に浮いた花びら赤い花
あの子の花はどの赤い花



ぽかぽかを集めて猫は陽だまりに
昼寝が一番ひるねがいちばん



「じゃあまた」と言えばウソになる9番線
泣きっ面を霰の打ってひとり

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2004年2月
三角の家は真夜中船出する
街に浮いては酔いどれ航路


病院の坂を下って振り向いて
青空怖くてすぐ目を伏せた



分かれても水は流れを迷わない
……っておまえは「相田みつを」かい!?

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2004年3月

見てんやないおどればかたれあっち行け
わしは昼寝で忙しいんじゃい

(原文は猫語)


また来てねお別れなんて聞かないわ
さよならさんかく丸かいてチョン



ぽつねんとつくねんの人空見ては
腹が減ったとつぶやいてみる

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2004年4月

風吹いて出会ってわかれてまた春で
ココロ模様の行ったり来たり


路地裏を浮かれ調子のスキップで
あっちもこっちも春色模様



あの人が去った路地(ろうじ)にこびりつく
下駄の響きのこもって曇天



青い空雨露しのぐ家もあり
襤褸は着ててもコッコロの錦



曲がり鼻築地の塀に人影のして
にわかに潜めた声裏返り

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2004年5月

憬れは夢のスキマのはざかいに
さよならこんちはもう日も暮れる


振り向いてさみしそうに笑ってた
うつむいてタバコの吸い殻眺めてた



てのひらで掬いそこねたゆうべの水は
紀伊水道で魚が飲んだ



あかい海群青の海黒い海
波ばかりだったのはどんな海

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2004年6月
たばこ屋の看板娘は毛むくじゃら
「すわん!」と客には禁煙すすめる


あれあんたどこ行かはるの汗かいて
じとじと梅雨にはおうちが一番








ちょっと待ちあんさんもここ座っとみ
地べたから見りゃ世間も別モン


走らいで大汗かかず涙せず
しゃかりきなっても人生とんとん

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2004年7月

あれからもいろんなことがありまして
明日もおそらくかけずりまわる

泣きながら見上げた空には観覧車
きのうもあしたもくるくるくるり

街は溶けシュンシュン脳味噌100℃
空から阿呆が降ってくる


夏の暑さをただ疎ましく憎むほど
イヤになったはいつごろからか


かたまりで夏がドカンと降ってくる
朱色の夏はいつ終わったの?

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2004年8月

「ねえあんた」呼べば必ずそっぽ向く
ハスリン・ダンあたしのいい人


ねえあんた小さい秋をみつけたの
あんたとあたしのココロのすきまに


アイしてもココロの糸が結べなきゃ
河は深くて暗いまま

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2004年9月

ぽかこんとまひるの道は白くてさみしい
まひるの空はイケズに明るい

グッドバイ父さんおでかけ手をふって
電車に乗ったらトンズラこいた

この夏もいつもの夏の仲間入り
雲はぽっかりココロもぽっかり

あの人が行ってしまった線路端
一面の曼珠沙華曼珠沙華

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2004年10月

窓越しに花嫁衣裳の薄汚れ
風もないのに揺られて揺れて

あの窓に住む幽霊を慰めたくて
ブランコはひとり今日も揺れてる


あの家を出てったしあわせいくつほど?
泣いた子何人?お空に何人?


幽霊をゆうれんと呼ぶ婆さんの
ゆうれんぽつんとひとりで座った

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2004年11月

夕暮れにひとりじゃ寒くて珈琲一杯
煙草の煙に電車が「ポー」

星霜をかさねてエデンはいくたりの
アダムとイブを見送ったろうか


「帰ったの?」肩をたたかれ振り向いて
彼女の肩越し夕焼け見えた


口笛を吹いて歩けば街の灯に
タバコの煙も真っ赤っ赤

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2004年12月

とりあえず今日いまがあり明日は未定
なんてこたない、なんてこたない

百年を空に浮かべてにゃんにゃにゃん
にゃにをきさまらにゃンでも来い


うつむくとくわえ煙草が目にしみて
涙目すがめて家出の荷背負った


今年もねやっぱりイロイロありまして
いっそハレバレ年越しましょか

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2005年1月

あの人のヒコーキが今飛び立って
イッテラッシャイクタバッチマエ


もうすぐね、もうすぐだから今少し
あれから何年待ちぼうけ


くもり空くもり空なんでこんなに
ココロも寒くてこんなくもり空


雪も舞いあの日の朝も曇天で
ふと見りゃ東は真っ赤っか


さりとてもゆわんこっちゃないゆわれても
後悔ばかりを吐き空は冬
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2005年2月

いれたまま出してもいいのよあたしのね
おなかの宇宙に飲みこんであげる


男根は街の臓腑を突き破り
お前の精子を今地下へ吐き出す

幾星霜あのしあわせやらこの不幸
トンネル行き来の電車に見てた


恥ばかり思い出す夜は誰だかの
哄笑聞こえて布団をかぶった
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2005年3月

とうちゃんが帰って来るまで待っている
風景になって待ちつづける

寝るときも人待ち顔な犬だから
いつもさびしいいつも待ってる


行き過ぎるさみしい人やつらい人
黙って見てる午後なのでした









どっちせえおまえはコロでおれはポチ
ふたりでいればそれでしあわせ

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2005年4月
振り向けばうしろの正面春一番
おでんに燗酒つけましょか

待ちぼうけ四月そよ風かすみ空
ひとりが気ままと強がってみる


汗ばんでいつのまにやら花も散り
またあの夏が……と倦んでみる


待ってても誰も来ないと思ってみても
それでもやっぱりとりあえず……

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2005年5月
恥ばかり思い出しては夢の中
見知らぬ駅に飛び降りてみる

ささくれたココロにあてがう酒まずく
闇にかろころ竹薮の鳴る


耐えきれず思わず降りたがこんな駅
野糞より他に方策はなし……


立ち止まると風が吹いていてベンチがあって
ゆっくりと煙草に火をつけてみる


振りかえってもふりかえっても恥ばかり
いっそ小田急で逃げましょか

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2005年6月
路地裏に逃げ込んではほっとするそんな日は
いっそ帰って寝てしまいたい

「忘れて」と小さくつぶやく声残し
角を曲がって消えた人


叫びつつ酔ってしゃがんでゲロ吐いて
自意識ばかりが尖ってあのころ


あの角を曲がるときっと明日には
いいことあるぞと浮かれて月夜

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2005年7月
また夏が線路を越えてやってきて
あの夏この夏今年の夏は?

からまわりくるくるくるりとからまわり
涙こらえてまた橋わたる


この雨がやめばあの人来るはずで
ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん

ピーカンの空にぼんやり不安の影が
気圧の谷間にうろうろと


河原には虫のおとこと影おんな
夕日を浴びてたたずんでおり
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2005年8月特別編
虎燃ゆる庭に夕陽のさしかけて
暮るるや熱気はいやましにまし















【今月の風景】 阪神甲子園球場 
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2005年8月
ひぐらしの声に歩を止めふりかえり
だれかとここで既視感の夏

ひぐらしは行こか帰ろかかなかなと
灯ともしころの思案投げ首


遠ざかる遠いあの夏あの記憶
追いかけるごと影もおぼろに

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2005年9月
さりとても行こか戻ろか飲むまいか
日もまだ高いがビールに負けた

お彼岸に狸と猫が見合いして
ぶらぶら金玉ひっかいて「チョン」


素面ではお月さまにも逢えぬわえ
忘れたいこと多くて忘れた


しかたないしょうがないからしかたない
クソッタレなお日さままだ沈まない

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2005年10月
黄泉という森の紅きのその奥の
逢魔がときの宴は一瞬

あかあかと燃ゆるもみじもJFK
鍛えてここに甲子園の秋

(やや錯乱気味……)


クソタレな夏は二度とこないから
真っ赤なドレスを君におくろう


かさこそと鳴るは落ち葉かココロの中か
さみしい人がまたひとり来る
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2005年11月

涙を拭いてよおまえにつられ
空が泣いたらまた雨になる

マフラーをあなたを捨てた夜に落とし
だから首から風邪ひきました



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2005年12月
電線がびゅんびゅん鳴ってあの猫も
急ぎ足してもう日が暮れる

あの街この町陽が暮れて
今きたこの道明日はどっちだ?

来てみればこんなに狭い道だっけ
こんなに寂しい通りだっけか


寒くって眠れないまま丸まって
明け方あなたの夢を見ました
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2006年1月

一年の初めの決意はムダだから
とっくにやめたお正月なのです

ドア際で泣いてあの子は外向いて
雪ばっかりを眺めていました


あの日にも壊れた街に雪が舞い
ただ呆然とつっ立ってました


突っ立って電車の窓の外は雪
しおどきかなとつぶやいてみる

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2006年2月

あのころのことはあのころのことで今日
小さく舌打ちしてから歩く

うしろ向き前向き横向き逆さ向き
あげくの果ての宙返り


あの日から二十一個の春と秋
サヨナラひとつありがと二つ
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2006・3月

うき事は春にはますます晴れ遠く
京阪電車で逃げましょか

行きましょか明日晴れたら電車に乗って
昔あんたが死んでたあたり


テレ笑いっかないんか俺はアホやから
死にとうなっても月は地球のまだ真裏


ずっとずっとずっと待ってこれからも
いつものあそこのあの場所で

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2006年4月

としつきを幹にきざんでさくらさくら
あの日のことはまだないしょ

迷いつつふわふわふらり宵の灯に
頬を染めにし君に降る花


降る花を浴びておでんを食う君の
濡れた頬にはピンクがふたひら


迷いつつふらりふわふわ雲の上
花にまみれた君を抱きしめ


ざあざあと花の散る音聞きながら
コロッケパンをかじって歩いた




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2006年5月
もうじきね、五月になればと見上げて曇天
不安かき消す根拠もないけど

やみくもに走ってみたけど日暮れ道
あの人の待つはずもない帰り道


きらきらの波を背にして笑った人を
寝覚めの床に夢見て泣いた














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2006年6月
踏み切りのあっちとこっちで「じゃあまた」と
その日を最後に三十二年

ふみきりはチンチンカンカン鳴るばかり
あの人今日も渡ってこない


汗ふいてアイスがりりと噛み砕き
踏み切りわたって金借りにゆく


赤い靴ひとつぽつりと踏み切りに
片足裸足でいった子どこの子


踏み切りを渡ればぷんとカレーが香り
なんとはなしに駆け出す夕暮れ

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2006年7月
裏窓から投げ捨てられた哀しみや
希望や失意やゴミくずが転がる路地裏

べそかいて歩くに路地ではあまりにも
似合いすぎててちょっとイヤ


寄りそうてふたつの影の揺れながら
ラブホの裏の路地の奥闇


雨あがり路地のスキマにキラキラと
あのこの捨てた指輪がひとつ









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2006年8月
あの人の顔忘れてんのに今日気がついた
だからわたしはこの街出るの


人知れずいっそどこかの知らない街へ
見上げた空には電車がゴンゴン


寝つかれずビール求めて熱帯夜
パンツ一丁怪しい男











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2006年9月

もういいの夏と一緒にあの人は
行ってしまって歯ブラシ二本

重くって放り出したい現実を
よいしょひと声カラ元気

便所から見上げた空は曇り空
クソと一緒にあのこと流した


振りかぶり投げたふりして豚饅ひとつ
レールに沿って食い食い歩く








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2006年10月

ぽっか〜んと馬鹿らしいほど青空で
電車を降りてお好み焼き食った

昼酒のおでんゲップにこみ上げて
へっちゃらだいと虚勢を張る秋空


コロッケの油をズボンにぬぐっては
ただ立ち尽くすコスモスの原


ドック・オブ・ザ・ベイやな……と呟いて
行き暮れ港のクレーン見上げた

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2006年11月

雲垂れてココロも谷間の日陰道
あのこの笑顔が見たいとおもう

鉄柵に凭れ「こんにゃろ」と呟いて
たこ焼きひとつ谷間に投げる

ふいうちに角を曲がると街夜景
どこかの家からカレーの匂い


思うてもいまさらどうにも日も暮れて
安ウィスキー一本買うて帰ろう













【今月の風景】 神戸市長田区・神鉄丸山駅付近 
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2006年12月

この辺に豚まん売る店あるはずと
何十年以前の記憶を頼り


菊水も猟奇も果てて夢野原
コロッケ匂うて湊川はたそがれ


もういくつ寝るとお正月
お正月には……なにしてんだろうか?


あのころのことこれからのことよりも
今日の酒の一杯が大事で日暮れ








【今月の風景】 神戸市兵庫区・夢野商店街 
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2007年1月

この道はいつか来た道 ああそうだよ
昨日も通った明日も通る道だった

昨日とおった路地で匂った鯵の干物を
なんでかふいに思い出して青空


コンビニで買った豚まんかぶりつつ
歌をのせたき唇さむく


伝えたいなにかがあるのにことばにできず
絶句のあげくに啼いてもみたり











【今月の風景】 小野市・加古川畔 
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2007年2月
海見に行ったり電車に乗ったり
おでんで酒を飲んでもみたり

ふとなにか見えた気がして電車を降りて
なんにもないのはわかっていたけど

あのころはあのこがあそこであの水着
波音ばかりがあの日と同じ


ねえあんたあの頃そうねよかったけどね
今だってそんなに悪くはないのよ













【今月の風景】 須磨浦海岸 
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2007年3月
あんたの目ン中海がきらきら踊ってたよね
この坂だっけかあれはいつの春だっけ


あの日のコトバは本気じゃないんだ
冗談なんだと言い訳しいしい坂から海へ


道端に犬の糞あり彼方から
「ボオ」と汽笛の霞を割いて春


猫町に迷いこんだる日暮れ過ぎ
温い灯の下誰かが笑った








【今月の風景】 須磨・離宮道 
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2004年4月
踏み切りがも一度鳴ったらあきらめて
涙は見せずにうちへ帰ろう

花見ても春の気鬱は年ごとに
去年のいまごろなにしてたっけ


ほろ酔いの桜並木に陽はまだ高く
「バカ」とひと声あの人泣いた


若干のしあわせひとつ噛みしめて
都会の真ん中なみだがひとつ


踏み切りの向こうの坂道駈けてきて
アカンベしながらあの娘が笑った




【今月の風景】 京都・嵐山 
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2007年5月
あしたにはお空の向こうのどこかから
なにかがやって来そうでうれしい

メシ食えば忘れてしまえるほどちっぽけな
憂さをはらってこれから帰る


さて今日はなにを食べよか考えながら
まだ陽も高い家路を急ぐ















【今月の風景】 三田市・武庫川畔 
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2007年6月
あの角を曲がるとおうちはすぐそこだけど
今日もあの角曲がれない帰れない

忘れよう忘れたいから涙を拭くわ
水に流せるティッシュで拭くわ

ぎんいろの雨に打たれた上着には
モツ焼く煙が夜まで匂った


コロッケもハンバーグだってなんもなも
「牛100%」が旨いわけでもなかろうに









【今月の風景】 東大阪市 
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2007年7月

べた凪の風ひとつなく瀬戸海は
お月さんさえ気だるそう


潮くさい風をたどって海へ出て
汗拭きながら煙草が苦い


気がつけば真夏の黒シャツ塩ふいて
電車に乗るのをふと躊躇する














今月の風景】 加古川市別府港 
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2007年8月

こんにちは暑いですなほんまにね
せめて晩飯ゃ精出るもんで


遠い日に「じゃあまた」と言ったきり
逢えない人にもいつかどこかで


濡れ縁に西瓜の種の乾いていたり
ダリヤの赤とか麦わら帽子


いちめんの吾亦紅あの日の吾亦紅
夕立が来そうで二人駆けだして


カンカンと鳴るは踏み切り酒だけを
思って躓き犬が笑うた







今月の風景】 大津市・坂本 

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2007年9月
坂道をあの人汗かき帰ってきたら
あたしは大きく手を広げよう

ともすればややもすればさりとても
憂鬱ひとつがしゃがんで坂道


汗拭いあの日あのときこの街で
振り返ってもただ白い坂


こんな風に一日が昨日も過ぎて
いったっけかと見上げる空に夕焼けの気配











【今月の風景】 神戸市北区鈴蘭台 
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2007年10月

闇雲に電車を降りてはみたけれど
ふと見りゃ空も泣き模様

「待ってるわ」そのひとことだけで
どこでも行けるなんでもできる


闇に立つ炎と見まがい舌打ちし
カンナむしって逃げ出す深更


くれなゐの夕陽を受けて甍の上に
正義の味方は今日も淋しい








【今月の風景】 高砂市曽根 
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2007年11月

あの人を待ちぼうけして帰り道
栗の実十個拾って煮ました

顔そむけ「ちぇっ」と地面を蹴ってみた
どんぐりころころ転がった


あの人はまっかなもみじの樹の下で
降り返っては「じゃ」とつれなく行きました


工場のサイレンの音聞きながら
川原に座ってビスケット食った


長い影引いたあの人背伸びして
踏みきり待つ間に柿もいで笑ろた







【今月の風景】 神戸市北区道場町 
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2007年12月

夜明け前あの日あの朝あのときだけは
あんたの目ン中あたしでいっぱい

性懲りもなくまた夜が明ける朝が来る
今日も今日とて風まかせなるがまま


夜が明けたらうちに帰ろう淹れたての
珈琲と君の待つうちに帰ろう


夜明けの珈琲二人で飲もうとあの人が
言ったあの日も海にはやっぱり波ばかり









【今月の風景】 明石市二見町 
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2008年1月

待っていた待っていたけど来ないから
探しに行きます汽車に乗ります

さようならまた逢う日まで……は明日かも
知れないけれどもあなたに肘鉄


線路の上を猫が横切ってまた横切って
五度横切っても汽車はまだ来なかった













【今月の風景】 加西市法華口 
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2008年2月

山の向こうの海より遠いあの人の
心臓めがけて窓からナイフ

白菜は四半分が七十五円
外は雪です今日も鍋です












【今月の風景】 西宮市名塩 
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2008年3月

三月は駆け足しながらやって来て
いつもわたしのなにかを奪って去ります


はるかぜの気鬱にふいて駅ひとつ
乗り越してみつためいきひとつ


春なのにコスモスみたいという歌に
コスモスは秋と教えてもらった
あれは二十歳の春でした


何年も前に見た櫻の花は
この花よりもっともっときれいだったと
毎年毎年思うのはなぜ?










【今月の風景】 兵庫県高砂市 
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2008年4月
行ってしまった人の声街間に聞いて振り返り
乗るべき電車はまだ来ない

「ヒメオドリコソウ」と教えてくれた
あの花は今年もあそこに咲きました


ツルキキョウばかりはびこって紫の
星ばかり主なき家の庭の春


たんぽぽとぺんぺん草の天麩羅で
飯食いながら「オツ……か?」と呟く






【今月の風景】 京都・太秦蚕ノ社 
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2008年5月

あのころのあの日の反吐を幾たびも
幻視しつつも幾たびめかの夢に酔う

うっすらとそら見たことかと笑ってる
あいつを殴って走って逃げる


精液のにおいを放つ山を降りれば
しみったれた夜が今日もまたはじまる


汗ばんで生ビールまであと三歩
電車が轟と頭上を過ぎた


酒の味なんてわからへんわと高い酒
飲んでみたらばヤケに旨くて二十歳だった







【今月の風景】 神戸・三宮楽天街 
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2008年6月

坂道をえっちらおっちらなんだ坂
こんな坂登りつめたら行き止まり

てろれてろらばてろる坂踊り候へ
紅い真っ赤な濡れ花畑

まっかっかがあんなにいっぱいあんなに真っ赤で
あたしのお目目もまっかっか













【今月の風景】 神戸・山本通 
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2008年7月

不意打ちにまっかな躑躅が窓いっぱい
ぬらぬら真っ赤であまりに真っ赤で……

月見草は真昼過ぎても咲き残り
寝ぼけた黄色がやや恥ずかしい


あの子はたあれたれでしょね
なんなん棗の実はまだ青くてすっぱい


ノウゼンカズラの朱色がぽっかり
闇夜に浮いて赤い踏切チンチン鳴った












【今月の風景】 京都・等持院 
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2008年8月

せみの声ばかりが聞こえる坂道を
転げ落ちてくわたしの心臓

アホめあほめと呟きながらふと立ち止まり
どっちへ転ぼか思案なげくび


しゅわしゅわと昭和の蝉が鳴いていた
あれはハタチの長い長い夜の朝


「天地無用」を真逆の意味で覚えたと
気づいたあれは三十真夏の日










【今月の風景】 神戸・再度筋 
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2009年9月

山のあなたの空遠く犀はアフリカ虎インド
山は富士なら酒は白雪

遠い日のゆめのあとさきまぼろしの
花火を聞いて空を見上げた


トッカッカッカ…カーブのたんびに吊革鳴って
夢の入り口まぼろし電車













【今月の風景】 京都・宇多野 
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2008年10月

裏窓からなにかのたんびに投げ捨てた
あたしのあれは海まで流れて行ったでしょうか


1974年秋の京都は憂鬱を
映して空にも雲垂れ込めて


『ミスター・クラウディ・スカイ』という唄が
そう言やあったと呟く朝の道端に菊


京都の秋の夕暮れはコートなしでは
さぶいくらいであんさんのこころを
雪にしてしまいますねん












【今月の風景】 京都・紙屋川 
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2008年11月

またおいでまた来るよって言いながら
あれから何年また冬がくる

いきなりにやぶからぼうにとつぜんに
いつのまにやら冬で青空


秋の夕日に照る山紅葉の真っ赤な頬は
恥のゆえやら怒りのゆえやら















【今月の風景】 兵庫県加西市 
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2008年12月

アリスという名の川沿いを少女は歩き
オオカミに出会って恋して今日家を出る

なによりも帰り道こそ楽しくて
だからしあわせかみしめて夕焼け


かみしめてしみじみとまたかみしめて
ああそうだったねと踏切渡った


車折御室太秦蚕ノ社
西院山ノ内帷子ノ辻











【今月の風景】 京都・有栖川 
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2009年1月

バシバシとなにはなくとも八百八橋
川から元気がやってくる……か?

くるくるとめぐる月日はゆく川の
あの日ももはや海の彼方へ


さびしい真っ赤なりんごの実ひとつ
ぷかぷかふらりと流れてきえた


あとひとつ橋を渡ればあの人の
待つ店だけどくるり踵を返して夜空











【今月の風景】 大阪・堂島川 
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2009年2月

いくつもの河はいくつもの別れを流し
涙は海でまた雨になる

トンズラをこいてバックれふと振り返り
あの娘は今日もあの橋の上


欄干にゆうべのゲロのこびりつき
アタマ痛イタ後悔の朝


小便をせんとて落ちた酔払いの
靴が片方浮かんで朝靄















【今月の風景】 大阪・端建蔵橋西詰 
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2009年3月

串カツのソースバットの油の虹を
みつめて街にはまた春が来る

スキマからスキマを選って這うように
歩きつ飲みつゲロ吐きつ


















【今月の風景】 神戸港 
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2009年4月

うすら寒い三月が過ぎ四月になれば……
希望的観測と座る白い便器

満月の夜には散歩もしたんだぜ
塔はにやりと振り向いた


春うらら浮かれ騒いで日が暮れて
ふと哀しくて振り向けば花






















【今月の風景】 大阪千里・万博公園 
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2009年5月

五月五月とつぶやきながら
見上げた空には希望が見えた?

モーツァルトは毎日五時に火の見の塔の
スピーカーからジャカジャンガンガラ喚きだす


五月とは名前ばかりの冷たい風が
ひゅるる運んだインフルエンザ














【今月の風景】 神戸市北区鈴蘭台 
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2006年6月

砂浜に流れついたる浣腸を
じっと見つめて空にはトンビ

海を見に感傷電車乗り越して
屁こいて帰ってあれから三年


年毎にあの夏この夏あんな日々
薄紫の記憶の彼方へ


七夕にケッコンするという人は
湯気の頭に陽が照り真っ赤











【今月の風景】 神戸・須磨海岸 
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2009年7月

あらあんたまた泣いてんのねだからさあのね
雨がやんだらまた泣きなさい

今日もまたあの町この街雨が降る
あの子はどこで濡れてんだろか


のされてものされてもなお空からは
やさしい雨が降る日もあるのさ


七月が終われば今年もまた八月が
やってくるのさ性懲りもなく














【今月の風景】 大阪・飛田 
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2009年8月

あの夏の光と陰はなんだこんなところに
捨てられてかと拾って帰る

あの日から39度目の夏が来て
あたしそれでもまだ待ってます


気だるくて熱いはなくて暑いだけ
それでもあるぞおっさんの夏












【今月の風景】 千里・万博公園 
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2009年9月

なんでかな夏の終わりに毎年いつも
昔の夏を思い出す

気がつけばいつの間にやら夏も過ぎ
ただただ焦燥恒例行事


今はもういない人やら会えない人や
思い出しては路傍にコスモス


月見草一輪光って渋滞の
路傍はいつしか日も暮れた















【今月の風景】 大阪・阿倍野界隈 
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2009年10月

窓にさす西陽を布団に避けながら
その日二度目の夢を見ました

この影があっちのビルまで届いたら
電車に乗っておうちへ帰ろう

まっさおな空にモスラがゆらゆらと
飛んで十月ザ・ピーナッツ

あれはそうあの日あのときこの場所で
煙草の火影に面影消えた













【今月の風景】 神戸・三宮 
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2009年11月

寒い寒いよ心も寒い財布も寒い
それでもやっぱり明日があるのさ

あの人に似た人を見たひぐれどき
踏み切りチンカン焼き芋ピープー

めめしさを噛みしめてある夕暮れの
大根一本厚揚げ二丁

大根を噛めばじわりとあのころの
今となってはブルースでもなく














【今月の風景】 尼崎・塚口 
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