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久々のヨネミツワールド | ||||||||||
人の心はわかんない 例え側にいても その不穏な声が聞こえてきたのは、夕方の私の帰り道の事だった。 「人殺し、人殺し〜!!」 私の真後ろからだった。振り返ると、私より少し若いくらいの男の子が、髪を振り乱したおばさんに追いかけられていた。 その男の子とすれ違う瞬間、目が合った。 あらら、私、人殺しと目が合っちゃったよ、などと考えていた。 それは制服の重いスカートが風でばさばさ言う、真冬の事。 それからしばらくして、私は帰り道のコンビニの中にあの男の子を見つけた。フツーに真剣な顔で、マンガを立ち読みしていた。店の中に入って、様子をうかがいながら、そうっと近づいて行って、熱心にマンガを読んでいるその男の子の肩を後ろから叩いた。男の子は、文字どおり飛び上がった。 「よう!!人殺し!!」 「誰だおまえ」 私はニヤリと笑った。 「あんたが人殺しだって言って追いかけられてた時の目撃者よ」 「ああ、あん時か」 「私、テレビも新聞も見ないからわかんないけど、本当に人、殺したの?」 コンビニを出る少年を追う。 「殺してないぜ。…あれは、俺の母親なんだ。頭が少しおかしくて、時々ああなる。逆に俺が殺されかけたんだぜ」 男の子は声をひそめて言った。 「ふうん。何だ。本当に人、殺したのかと思っちゃった」 「人殺しに声、かけるか?フツー」 「私、変人だから。学校でも友達いないの」 「あ、そ」 「名前、何て言うの?」 私たちは二人とも公園で足を止め、話をした。 「名前」 「…信長」 「ギャハー!!偽名にしても、もっと、こう…なんかこう、無かったのかって感じだよね。「信長の野望」か!?それとも「戦国無双」?」 「本名だよ、母親がつけてくれたんだ」 私は笑うのをやめた。 「…ごめん、笑って。私はね、イチカって言うの」 「イチカってどう書くのさ?」 「難しい方の壱万円の壱に、華麗の華」 「カレーのカ?」 「バーカ。…お母さんっていつからああなの?」 「わからねえ。普段、全然普通の時もあるんだ」 「どんな感じ?」 「何が」 「言葉が通じないって、外人とかじゃなく、側にいるのに言葉が通じないってどんな感じ?」 信長は表情を険しくした。 「おもしろがってるだろ」 「違うよ。もしかしたら私、あんたの母親に近いかもしれないからさあ」 「何、おまえ、頭おかしいのかよ?」 「そうかも。頭おかしいから、まわりと言葉が通じないのかも。」 「言ってる意味がわかんねえ」 「ほらね。あんたとも通じないじゃん。…私ね、学校でハブにされてんだ。私が言った事は、無かった事になるの。私の声は、誰にも聞こえないの…」 公園とは名ばかりの、雑草が生い茂った草原で、私は信長に話した。 「…あんた、全然フツーなのにな」 「世界が…」 「何?」 「自分を変えるのが嫌だったら、世界を変えてしまえば良いって、映画かドラマで言ってなかった?小説だっけ?」 私は一息、息をついた。 「世界を変えるにはどうしたら良いと思う?」 「…わからねえよ、そんな難しい事」 「最初はね、自分が死んじゃえば良いのかと思った。でも、そうしたら、私の事ハブにしたクラス全員に笑われる」 私はガタガタ震える指を組んだ。寒さのせいからでは無い。 「だから…だから、誰かを殺してやろうと思ったのよ!!」 ベンチで横にいた信長に飛びかかり、首を絞める。 「く、苦し…」 信長の顔が青ざめる。 「お願い死んで」 「バカか…」 信長は苦しげに言った。その顔からはどんどん赤黒くなっていく。 「…来いよ…」 信長が何か言った、と共に、お腹に信長の蹴りが入る。私は吹っ飛ばされた。地面に背中をバンと打つ。 信長を見ると、口のあたりを拭い、肩で呼吸をしていた。 「…おまえもこっち側に来い!!」 私たちに、ざあと風が吹き付けた。 「俺が…引っ張ってやるから!!」 信長はまだ息も苦しげに続けた。咳き込みながら。 「学校が嫌なら、辞めりゃーいいじゃん!!俺の事、たった1人の友達にしても良い、おまえがこっち側に来い!!」 私の両目からは、信長の言葉にぼろぼろと涙がこぼれた。 信長は、べったりと手の跡の残った首をさすり、 「この殺人未遂犯め!!」 と顔を歪めて笑った。 「おう!!学校変わったのか!!」 違う制服を着た私を見て、信長がひゅうと言った。例によって、ここはコンビニだ。 「うん、今、超楽しい!!」 「良かったじゃん!!俺を人生の師と仰ぎたまえ」 「お母さんは?」 「良くなっていってるよ」 「良かったあ」 私はにこにこした。何でだか、めちゃめちゃに嬉しかった。 「他人事でそれだけ喜べるってのは、めでたい証拠」 「だって、お母さんが調子悪かったら、嫁に行ったとして、苦労するでしょ」 「だぁれが誰の嫁だってぇ!!」 「またまたぁ、テレちゃって!!」 「冗談じゃないぜ、俺ぁ、女二人から命狙われるのかよ!?」 「もうしないって!!」 「やめろ!!ハートマーク飛ばすの!!」 「キャハハハ」 人の心はわかんない 例え側にいたとしても でも信じる勇気をくれたあなただから 私はあなたと共にありたいと願う |
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