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週末に 沖縄から届いた 「宇宙人」の物語 | ||||||||||
我々は宇宙人です。 我々は「我々」と言うことで、かろうじて自我を保っています。矛盾するようですが、「我々」は、他の人間、地球人のように「個人」になりえないからです。 「我々」には「孤独」という感覚は理解できない、いいえ、理解できませんでした。我々、宇宙人は、核の一つから分裂する、アメーバのような存在だからです。我々はもともと一つの存在であり、また、そうあり続けます。地球のどこかで、我々の仲間が、病や、事故や、何らかの事情でその命の火が消える時、我々は、自身の核を傷付けられたように、心に深い痛みを負うのです。 我々は互いの為に存在します。 我々のうちの誰もが、他の何者かにはなりえないのです。我々宇宙人は、そのことをよく知っています。 「地球」は、我々、宇宙人にとって、あまり住み良い星ではありません。まず、四季があるというのが驚きです。夏に暑く、冬に寒い、この星で、我々は時に我々同士で集まり、地球の食べ物や酒といったようなものを口腔摂取し、そしてぼやきます。 DNAに刻まれた、母国の、母星の、夜寝て見る夢以外に、想うことも、想像さえ困難な、ここから遠い、一つの失われた惑星に、熱き憧憬を抱くのです。 我々の中にも、いろいろな職業の者がいて、なかには科学者もいます。 ある時、いつものように我々同士で集まっていると、その科学者が言いました。 「もしかすると、我々は、星から来たのではないのかもしれない」 それまでの我々の他愛も無い近況報告は、その科学者の一言で、打ち切られました。皆、その科学者へ目を向けました。 「我々の星は失われた。皆がその事を記憶している。我々は失われた星の、さまよえる宇宙人なのだ」 地球の酒に少し酔った我々の同志が、そう言いました。 科学者は眉をひそめ、首を振りました。 「どうやらそれは、我々がこの星で生命を維持できると、我々自身が実感してからの、遡った記憶でしかない。つまり、我々は誤った共同幻想を真実だと思いこんでしまったのだ」 「そうするとどうなるのだ」 「我々は「母星」が存在すると、思いこんでしまっていた。こうして我々同士で集まり、今はもう無い、そうしてかつては存在していた「母星」に想い馳せていた。だが実際には、そのような星は存在しなかったのだ」 「だが、我々は地球人では無いではないか。船に乗り、我々は地球以外のどこかから…」「そう。我々は地球人では無い、と思いこんでいる。何の根拠も無く。まずはそこから話そう、我々が徐々に地球到着時のショックから立ち直り「我々」が「我々」である、と思い始めたのは、いつだったか」 我々の誰もが首をひねりました。 「思い出せないだろう。我々の「船」、そして「母星」が失われ、地球にたどりついたというのは「後から作られた記憶」なのだ」 我々のうちの一人が、ぶるぶると唇を震わせ、言いました。 「それでは、我々の「母星」は、「船」は…」 科学者が首を振りました。 「そうだ。我々には「母星」も「船」も存在しなかったのだ」 「それは、科学者としての君の見解かい?」 「見解では無い。「本当」に我々には「何も」存在しなかったのだ」 全員がいっせいにうなだれました。 「我々は単に…そう、おそらく「孤独」から他人と何かを連帯したいと願い、その願いが自分と、遠い他人をも動かしたのだ。そうして「不安」から「宇宙人」というキーワードを探り当てたのだ」 うなだれていた我々全員が、同時に科学者に掴みかかりました。 科学者はぼこぼこに殴られ、首を絞められ、尻を蹴り上げられました。科学者の顔は紫色に変色し、体は異様な具合に骨が突きだしました。 「ついに見つけたぞ!こいつが本当の宇宙人だ!!」 「我々のおとり捜査がこれほどうまくいくとは!!」 居酒屋の店長が騒ぎに駆けつけて来ました。 「おお、ご協力ありがとうございました、店長」 「いいえ、得体の知れない宇宙人だと名乗る人間が増えている世の中、あなたたちのような「宇宙人狩り」のような有志の方々には、頭が下がる思いです」 我々は皆、勝利の笑みを浮かべた。 我々は、我々でしか、ありえない。我々は、母星を持たない、宇宙人。帰る場所も、定住の地も無く、我々の中に迷い込んだ地球人を捕食する。我々はいつ、いかなる時も、一つでなければならないのだ。我々には何の不安も、何の迷いも無い。我々が我々である限り。幻想の中に同志を見いだし、その中で生きていく。我々は独りでは無いのだ。今、この瞬間も。 (了) |
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