平成19年4月、いよいよ
離婚時の厚生年金の分割制度スタート
年金は奥様と共に去りぬ かも
「来年4月以降に離婚すると旦那の年金の半分を自分がもらえるようになる」、こんなことを書いている記事を目にします。しかしそれは本当なのでしょうか?
答えは、本当のような本当でないような・・・、
どういうことなのでしょうか。極力、専門用語を排し、年金の知識があまりない方でも分かるように心がけながら考えてみます。
なお、便宜上、「妻」を中心に考えていくことにします。
Q.1 「年金の半分がもらえる」 と聞いたけど
本当なのかな?
A.1 「マックス(最大)で半分がもらえるかも
しれない」が正確です。
その割合は「話し合い」で、まとまらなければ家庭裁判所
で決めることになっています。旦那さんが気前よく「半分もって
け!」と言ってくれればいいですが、離婚するほど気持ちが
離れていればその期待は望みが薄そうです。
では、裁判所はどのような決定を下すのでしょうか?
ここからは個人的見解であることを断わっておきます。
この点に関しては、まだ制度がスタートしていませんから
なんとも言えませんが、その離婚について奥さんによほどの
落ち度でもない限り、「半分」に近い線を出してくるような気が
しています。
【筆者注】 やはり家庭裁判所ではほとんどの場合
半分にされるようです。
しかし、その配分に最も大きく影響してくるのは婚姻期間
の長短だと思います。でなければ、「遺産目当て」でなく「年金
目当て」の結婚、そして(短期の)離婚が横行することになり
かねません。法の趣旨から考えてもそうなると思います。
となれば、若い内から結婚→旦那さんはずっと厚生年金
加入→奥さんはずっと専業主婦→60歳近くあるいは以降に
離婚というようなケースでもない限り、旦那さんの「厚生年金の
半分」がもらえる(と決定する)ケースはなか現れないような気が
します。
ただ、もちろんこれらは裁判所の決定についての推測です。
どんなに婚姻期間が短かろうが、仮に奥さんに不貞行為が
あろうが、旦那さんが「いいから半分もってけ」と言ってくれれば
「厚生年金の半分」をもらうことが可能となります。せっかくの
好意は素直に受け取るのがいいと思います。
】
Q.2 旦那の年金の(上限で)半分がもらえるの
ですか?
A.2 厚生年金の(上限で)半分です。
半分は半分じゃないかという気がしますが、
厚生年金のみに加入していたというような人でも、
厚生年金加入期間中は国民年金にも加入していたと
みなされ、すなわちその人がもらう年金は「厚生
年金+国民年金」ということになります。
このことは、年金をもらってる当の本人たちも
ほとんど知らない(意識してない)ことですが。
「私は厚生年金が月20万円もらえる」と言って
いる人でもその中身をよく調べてみると「厚生年金
13万円」と「国民年金7万円」とかになっていたり
します(この両年金の比率は人によって差がある)。
となると、「旦那の年金は20万円か」→「うまく
いって半分もらえれば10万円か」と張り切って交渉
した結果、分割割合で「半分」を勝ち取ったとしても
実際には6万5千円(旦那さんの厚生年金が13万円
だっとして)だったりします。厚生年金の比率(加入
期間)が短かったような旦那さんならよけいにそう
いうことがあり得ます。
上記から分かるように、「離婚時の年金分割」とは
あくまでも「厚生年金」の「分割」であるため、
国民年金のみしかない旦那さんなら。今回の「離婚」
による年金分割」はありません。
Q.3 来年の法改正まで離婚をじっと我慢
している奥さんが多いと言われて
いますが、あまり意味がないようですね。
A.3 そんなこともないですよ。
一つは、その分割割合が決まれば国は両者に直接
振り込むことになります。これは今まで、たとえ
両者が話し合い、年金を分割する話し合いがついた
としてもできませんでした。旦那さんの年金は旦那
さんの口座にしか振り込まれませんでしたから、
旦那さんがシカトすればそれで終りでした。離婚
して妻が子を引き取った場合で、最初から、あるい
は、途中からでも、養育費を払わない(踏み倒す)
夫の多さを考えると不安もあるでしょう。ましてや
別れた相手に振り込み続けてくれるだろうか、という
不安が残るでしょうから、「国が直接自分に払って
くれる」ことの意味は決して小さくないと思います。
次に、旦那さんが亡くなっても関係なく奥様には
振り込まれ続けることになります。今までなら、婚姻
関係を継続している場合に限って、(要件を満た
せば)遺族年金が出ることになっていました。
そして、その遺族年金とも決定的に異なる点が
あります。それは、奥さんが再婚しても、その分割
されて支給される年金(奥さん分)の受給権は消え
ない、という点です。
新しい旦那さんとの結婚生活に活かせます。元の
旦那さんはもたんと思うかもしれないけど。
Q.4 何だか聞いていると面倒くさそう
ですね。一々「話し合い」や「裁判」
をやらなきゃいけないんですか?
A.4 多額のお金のからむことですから
ある程度は仕方ないですね。
しかし、自動的に配分される人たち
もいます。
平成20年4月以降の婚姻期間については自動的に
二分割されます。片方が厚生年金加入者(国民年金
第二号被保険者)、片方が専業主婦(国民年金第三号
被保険者)の期間についてですが。ですから、今の若い
人たちには初めから「将来別れたら年金の半分は自動
的に夫婦の相手方に行く」状態となるわけです。
Q.5 旦那は税理士でずっと国民年金。私は
ずっと会社勤めで厚生年金。何にも
メリットはなさそうね。
A.5 そうかもしれませんね。でも奥さん、
気を付けた方がいいですよ。
冒頭にもお断りしたとおり、ここまで、なるべく
話を分かりやすくするために、意図的に、旦那さんが
厚生年金、奥さんが専業主婦、というパターンで話を
してきましたが、そうとばっかりは限らない、という
点にも触れておかなければいけませんね。
法律は、旦那さんの年金(の内の厚生年金)の受給
権の一部を奥さんに渡すことだけを想定しているわけ
ではありません。当然、条件に当てはまれば、奥さんの
厚生年金が旦那さんの方に行くことはあり得ます。
また、両者に厚生年金がある場合に、旦那さんの
厚生年金のみを奥さんに付け替えるとなれば、著しい
不公平(男性ばかり不利になる)となりかねませんので、
それもありません。そのような場合は両者の厚生年金を
合算して考えられます。
例えば、厚生年金の金額が旦那さん7、奥さん3、
という割合であるような場合には、旦那さんの年金の
内、2が奥さんに行くのが上限となります。つまり、
(7+3÷2=5)ということです。
夫及び妻とも厚生年金がある場合には、両者の厚生
年金を合算した金額の半分までが相手からもらえる
上限だということです。言い換えれば、「旦那さんの
厚生年金の半分がもらえる」のは、奥さんが自分自身の
厚生年金がまったくない場合ということになります。
現実には、そのようなケースも少ないと思います。
Q.6 分割の話がついたらすぐに年金がもらえる
るようになるんですか? あるいは、旦那
が年金がもらえるようになってからかな?
A.6 いいえ、違います。
奥さん自身が年金をもらえる年齢になった時から
です。その時点で旦那さんが年金の受給権が発生して
いることも必要です。
ということは、旦那さんが年上又は同い年の場合は、
奥さんはすぐに受給できることになりますが、旦那
さんの方が年下の場合は、旦那さんの年金の受給権が
発生するまで待たなくてはいけませんね。
Q.7 長年夫婦同然の生活をしてきた相手方に
最近ほとほと愛想がつき、このような
関係の解消を考えています。私のような
者には、今回の「年金分割」は関係あり
ませんよね?
A.7 あるかもしれません。
いわゆる「内縁関係」というヤツですね。
社会保険の世界では「内縁関係」を「戸籍の入った
夫婦」とまったく同様に考えてくれます。
「内縁関係」の立証がなかなか大変ですが、
それさえ出来れば、普通の「夫婦」と同様に「年金
分割」が実行される余地が出てきます。
蛇足ですが、社会保険の世界では、いわゆる「本妻」
がいても「内縁関係にある相手方」の方が優先される
ことすらあります。そちらの方が、夫婦としての実態
があると判断されるような場合です。
「社会保険」は、この点についての考え方が「相続」
とは根本的に異なります。
Q.8 他に何か気をつけることはありますか?
A.8 お金だけは判断しない方がいいですよ。
ただ銭金のことだけを言うのなら、「離婚による年金
分割」よりも「遺族年金」の方が有利になる場合があり
得ます。でも旦那さんが死ぬのを指折り数えて待ってる
みたいでそれも何だかなあ・・・と考える方があっても
おかしくありませんよね。
今回の改正はこれまでの「家族単位」の年金設計から
「個人単位」の年金設計という流れの中から生まれて
きたことと言われていますが、本当にそうなのか、と
疑問を感じる点もあります。
亭主関白な旦那さんが「奥さんに捨てられるかも
しれない」との危機感を基に、これまでの夫婦生活を
省みて、優しくなったりして、夫婦の関係が良く
なったりすれば、それはそれでこの改正の一つの効果
とも言えるのかもしれませんね。
さて、離婚をしてしまえば、「遺族年金」はもちろん
ですが、先ほども触れたように、旦那さんの遺産の相続
も受けられなくなります。しかし、「お金なんか要らない
からこんな旦那(あるいは奥さん)とは一刻も早く
別れたい」ってのもあるかもしれません。
「お金」を取るのか「自由」を取るのか、それは各人
各人が自身の価値観や人生観でで判断すべきことです。
しかし、その時には「親」のことも「子」のことも
決して無視はできないでしょうね。
よそ様の夫婦関係について、他人である私が軽々しく
言えることはありませんが、一つだけ言えるかなと
思えることは、とにかく熱くならず冷静にお考えくだ
さい、ということだけです。
えっ? なんですか? 「これが冷静でいられるかっ
ちゅーんだ!」? そこまで言うならならさっさと離婚
してください。
今回の「厚生年金の離婚分割」を一言で言えば、「両者
共倒れ」ということになりましょう。それらを煽るような
記事(新聞やテレビは比較的冷静、雑誌や書籍は「離婚イ
ケイケ」多し)やサイトなどもありますが、その後生活が
立ち行かなくなったとしても、面倒を見てくるわけではあ
りません。「決めたのはあなたでしょ」と冷たく言い放た
れて終わりです。せいぜい年金手続きで小銭を掠め取ろう
というだけのことでしょう。そんな話は聞かない方がいい
ですよ、きっと。余計なことですが、キンキン声の萩原弘
子は「離婚するなら65歳まで待つべし」とかテレビで言っ
てましたけど、あれが「お金だけで考える」FPや評論家の
限界だなあと思ってみてました。
「年金相談」とは「人生相談」とイコールであるべきな
のです。 おおっ、我ながらかっこよく締めたけど、本当
に、そうなのです。