拍手SS -アリオスBirthday Ver.-
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夜明け前の宮殿の廊下を、アリオスは自室へと向かっていた。思いのほか任務が長引いて、ようやくさっき聖地に戻ってくることができたのだ。時間も時間なので、足音を密やかにする程度の気遣いはしている。しんと静まり返った中を、半ばぼんやりと移動していたから、不意に行く手の扉が開いたときには、さすがのアリオスもぎょっと身構えた。が、そこからするりと出てきた人影を見て、アリオスの体から緊張感が抜ける。 「・・・お前、何でこんな時間に起きてるんだ。まさか、昨夜から寝てないとかいうんじゃねぇだろうな?」 「・・・・・・」 冗談で発した言葉に、気まずげな沈黙で答えられて、アリオスの眉間にシワが刻まれる。思わず額を押さえてため息をついてしまったアリオスに向かって、アンジェリークは、一応の反省と共に主張する。 「・・・ごめんなさい。でも、今日は一番にアリオスに会いたかったから・・・」 「何だ、それは」 「だって・・・今日はアリオス、誕生日でしょ?」 そういえばそうだったか、とアリオスは一瞬虚をつかれて考え込んだ。だが自分の出生を考えると、祝うような日だとは思ったこともなかったし、そもそも、今の自分は転生した身であるのだから、誕生日が意味をもつものだとも思えなかった。 「お前が起きて待っていてくれたのは有り難い・・・だが、俺は誕生日だとかはどうでもいいんだ。悪いな」 そう言って、アリオスはぽんぽんとアンジェリークの頭を叩いて、彼女の部屋に戻るように促した。自分を待っていてくれたことは嬉しいが、徹夜などしていたら、今日の執務に差し支えることは間違いない。夜が明けるまでの僅かな時間でもいいから、一眠りさせておくべきだ。自分の誕生日なんぞよりアンジェリークの体を優先させるのは、アリオスにとって、自明の理以前の事柄だった。だから、アンジェリークがいきなりアリオスの手を逃れて、くるりと振り向き、その大きな瞳で見つめながらはっきりと逆の主張をしたときには驚いた。 「あなたの誕生日がどうでもいいなんて、私には思えない」 彼女の声は、大きくないときでもよく通る。静寂が支配する廊下にこれ以上いると、眠い目をこすりながらでも興味津々の観客が出てきそうなので、とりあえず、自室に彼女を引っ張り込んだ。扉を閉めた薄暗い部屋の中でアリオスの手をぎゅっと掴み、碧の瞳を瞬かせてアンジェリークは再び静かに主張を始める。それは、アリオスに口を挟ませない雰囲気を持っていて。 「あのね・・・・・・私は、あなたが生まれてここに存在していてくれることが、とても嬉しいの。だから、あなたの生まれた日は、私にとってはとても大切な日なの。・・・言いたかったの、おめでとう、って。ここにいてくれてありがとう、って」 その真摯な瞳に、アリオスは視線を逸らせなくなる。見つめあううちに、彼女の言葉がじわりと沁みこんできて、体の力がふっと抜けていくのをアリオスは感じた。 「そうだな・・・俺としてはむしろ・・・今日はお前に感謝する日なんだろうな。闇に生まれて闇に堕ちた俺に、手を差し伸べてくれたお前に。お前がいなきゃ、俺はここまで生きてる意味もなかったんだ」 そうしてアリオスは、目の前の存在を、しっかりと抱きしめる。その温もりを、体で確かめる。誕生日というものに、今まで考えてもみなかったこんなに幸せな意味があるのを、アンジェリークは気づかせてくれた。 「アリオス・・・お誕生日、おめでとう」 雰囲気が和らいだことにほっとしながら、アンジェリークがそっと囁く。答えを返すかわりに、アリオスはアンジェリークを抱く腕に、更に力を込める。まだほの暗い部屋の中で、二人は、一つの影になっていた。 -Fin.- |
アリオスお誕生日。
お祝いを確実にできるのは、エトワから、ですよね。
てことで、エトワ設定で。