「いちご白書」をもう一度
(荒井由美)


421 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2004/07/09(金) 19:17
「いちご白書をもう一度」

2030年、二回の世界大戦以降、最低の食糧生産高を記録した秋、とうとう、世界保健機構も各国政府も全て
沈黙を保つしかない食料増産計画がスタートラインを切った。それは、唯一、環境に応じた自由な品種改造
が可能になった苺の遺伝子を使って、あらゆる植物を改造することだった。改造した苺は、管理する財力も
気力もない各国の政府機関により、なし崩しに各国の平原、砂漠、山々に植えつけられていった。

やがて、全ての植物と交配し、苺A21129と呼ばれたその遺伝子ウィルスは世界を覆うことになる。全ての植
物は、緑と赤の色彩に覆われ、尚も地球上の土を奪い、町に侵入し、腐敗臭は、都市の片隅に生きる小動
物たちを活性化させた。

そして人類は地底に、海底に、宇宙に移住せざるを得なくなった。果実の実る壮大なジャングルから、救えるものは限られていた。

やがて、宇宙で人類は、いくつかの戦争を経験し、惑星移住を試みることになる。

2830年、800年前の悪夢の始まりと同じ日、皮肉にも、人類は、白鳥座方向のB-9J太陽系の第5惑星に対す
る、7世代に渡ったテラフォーミングを中止し、地球への帰途につくところだった。

宇宙船が、ランディングを開始したとき、しかし、そこに苺の芽が顔を出し見送っていたのを、地球人は誰も知らなかったろう。

3630年。やがて地球人は、静止軌道で、海底で、地底で、あらゆるところに、硬化樹脂製の密封ユニットでのみ生活するようになった。

そして、巨大な外宇宙からの使者が、地球を訪れた。その使者は、とうに地球では失われた、オリジナルの植物遺伝子を持っていたのだ。

それを使えば、また、多様な自然を取り戻せるかもしれない。人類にとって、それは、最後の希望だった。
そして、使者が、地球政府に伝えたかったメッセージが明かされる・・・・


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