星の写真の撮り方(星景写真)

S.Kanda著

 はじめに
 一口に天体写真といっても、さまざまなジャンルがあります。
 厳密に定義されている訳ではありませんが、おおまかに下の表のように使われています。

ガイド撮影
…星を追尾して点に写すもの
星野写真 カメラレンズで星座などをガイド(追尾)撮影したもの。望遠レンズで撮影した場合は、はっきり分けにくいがここになると思う。
直焦点撮影 望遠鏡をカメラレンズ替わりにして焦点で直接撮影するもの。焦点距離が一番長く難易度も高い。
固定撮影
… 星を追尾せず、三脚などで固定するもの
星景写真 星景写真と固定撮影の使い分けは厳密にはされていないが、ここでは自分の写真のような星のある風景写真と定義。
固定撮影 カメラをガイドではなく固定して撮影することからこう呼ばれる。風景なしで星空を固定して撮影するような場合はこれ。

 ここでは、その中でも一番手軽に始められる星景写真について説明します。一番手軽といっても、天体写真の中では一番個性が出る分野でもあります。最初から作者より綺麗な写真を撮れる人も多くいるにちがいありません!
 なお、購入金額は実際に私が購入したことのある物の例ですので、これより安く手に入れることは簡単だと思います。

  一.準備するもの

 1.必要なもの

機  材 備                   考 購 入 金 額
カメラ B(バルブ)またはT(タイム)などがあり長時間露出ができるもの。最新のカメラだと逆に使いにくいことも多い。※1 20,000円〜
レンズ できれば、単焦点(ズームレンズでない)の明るいもの。 20,000円〜
三脚 長時間の露出の間にカメラが動かないようにするために必要。安いもので十分。 5,000円〜
レリーズ シャッターを開けたままにしておくのに必要。デジタルカメラの場合は、リモコンやインターバルタイマーなど長時間開放を可能にするためのオプションが必要。 1,000円+
フィルム 感度100〜800程度のもの。感度は高い方が良いというわけでは無い点に注意!低感度の方が色やグラデーションの滑らかさなどで有利で安い。分からなければ、400程度が無難。
ただし、流星の写真を撮る場合にはとにかく高感度のものを用意してください。
300円〜1,000円

※1デジタル一眼レフカメラについて
デジタル一眼レフカメラで固定撮影をするのは、なんでも良いから1枚撮影してみたいという場合と数分程度の短時間の撮影の場合を除いて、すでにデジタル一眼レフカメラをお持ちの方以外には現時点でお勧めしません。理由はバッテリーがすぐに切れる(合計2,3時間の露出が限界だと思われます)ことや、ノイズ処理が必要なこと(現時点でノイズ処理が不要なデジタル一眼レフは存在しません)があります。また、価格も高価なので、これから始めるには不向きだと考えるからです。以下、カメラはフィルムだという前提で書いてあります。


 2.あると良いもの

機  材 備               考 購 入 金 額
レンズフード レンズから不要な光が入るのを防ぐ。また、レンズに露がつきにくくなる。 2,000円〜
懐炉またはヒーター レンズに露がつくのを防ぐ。空気が乾燥していれば不要。懐炉を使う場合は使い捨てではなく燃焼式のものが必要。 1,000円〜
ライト 普段暗く感じるライトも星見の時には明るすぎるように思うはずです。赤セロファンなどで減光しましょう。 100円〜
筆記用具 撮影データや気づいた点をメモします。


  二.組み立てなどの準備


写真.固定撮影時の組み立て例
 一.で準備したものを組み立てて、使える状態にします。(左の写真参照)

注意することは以下の点です。

・明るいうちに三脚の使い方やカメラの各部の動作などをよく見ておく
→夜に実際に撮影しようとしてから、三脚やカメラなどの機材の使い方が分からないということがありがちです。普段の撮影などで、十分機材になじんでおきましょう。また、動作に電池が必要なカメラの場合には、電池の残量が十分にあることを確認しましょう。

・フィルムの装填を確認する
→ 暗いところでフィルムを装填すると失敗することがあります。朝まで写真を撮ったのにフィルムが装填できていなかった・・・なんてことの無いように確認します。作者は何度もこれで泣いています。装填中にフィルムがもったいないと思っても普段より多めにリールに巻き付け、装填を確認した方が良いでしょう。
この写真のようにカメラを三脚にセットします。写真では見にくいですが、シャッターボタンから出ているひも状のものがレリーズです。


  三.構図決め
 構図決めは固定撮影の最大のポイントです。これで、ほとんど写真のできが決まっていると言っても過言ではないでしょう。以下のようなことを考えて自分なりの構図を考えます。ホームページなどを見て、気に入った写真があれば、その写真のどこが良いか考えて、良い点を真似するのも上達のこつかもしれません。


  1.星の動き
 星は一日で約360度回転します。1時間では15度、30分では7.5度程度となります。使っているレンズの画角と星の動き(下の作例参照)をイメージし、露出時間と構図を考えます。長く線を引くように撮りたいなら、長時間の露出・見たままに撮りたいなら1分程度の短時間露出とします。

露出時間の違いと南天作例 ※撮影場所は準備の写真ほぼそのまま
共通データ 撮影地:長野県上村  フィルム:KONICA CENTURIA 400  NFM2+35mmF2.0→4.0
その1.ちょっと露出アンダーです。
2000/7/8 23:19〜23:23(露出4分)
その2.このくらいが適正露出でしょうか?
星の動きもこれくらいが作者の好みです。
2000/7/8 23:23〜23:33(露出10分)
作例3.これは露出オーバーです。天の川が広がりすぎて散漫な印象です。
でも、このくらいじゃないと水面の星は存在感がありません。
2000/7/8 23:33〜23:53(露出20分)


東天の作例 西天の作例
撮影データ
92/8/27 23:25〜24:55(露出90分)
撮影地:乗鞍
フィルム:AGFA PORTLAIT(感度160のネガ)
NFM2+35mmF2.0→4.0
撮影データ
92/5/1 22:45〜23:45(露出60分)
撮影地:長野県上村
フィルム:FUJI SHG400
M645 1000S+80mmF2.8→5.6(50mm相当)
memo:雲海から昇るオリオンを比較的長時間の90分露出でとらえています。
フィルムはかなり珍しいAGFAのPORTLAITというものを使用。これはずっと愛用してました。
memo:フィルムは今は無きSHG400。非常に赤味が強いのが特徴であった。
カメラが中判なので、80mmレンズは50mmに相当する。


北天の作例 撮影データ
91/12/6 24:28〜25:28(露出60分)
撮影地:愛知県下山村
フィルム:フジクロームベルビア(感度50のポジ)
NFM2+35mmF2.0→2.8

memo:昇る北斗七星を60分露出で撮影。
この写真はカメラとレンズを買って初めて撮った星の写真のため思い出がある。
フジのポジフィルム全般にもいえるが、この写真でも緑色に発色がかたよっている。
画面のすみが暗いのは周辺減光という現象のため。レンズをもう少し絞ると解決される。また、空が明るいため露出がオーバーとなっている。


 この3枚(東天・西天・北天)はあえて、私のかけだしのころの写真を選んでみました。
 フィルムをいろいろ変えてみたり、様々な場所に遠征してみたり、試行錯誤をしていた時期です。
 いろいろなトライをして、それを次の成功に結びつけるように、かならず撮影データをメモするのを忘れないようにしてください。毎回あてずっぽうで撮影していては、なかなか上達は難しいでしょう。

 なお、35mmF2.0→2.8の意味は、35mmレンズ(解放F2.0)を2.8に絞って使っているという意味です。


 2.構図
 1で露出時間を決めたこととも密接に関係するのですが、前述のとおり一番大事な構図決めです。
固定撮影での要素は前景と星空の2つの要素からなります。前景には木・山・海・湖・夜景などがあるのですが、これらをバランスよく切り取ることが大事です。
 基本的には美しい風景写真を撮るのとそう変わらないのですが、空が星空となることが一番の違いです。これは教えてもらってどうこうできる問題では無いので、とりあえず撮ってみてください。

 作者の撮影プランと実際の作例についてどのように考えて写真が撮影されているか別ページでより詳しく書いてみましたので、こちらもご覧下さい。


 3.絞りと露出時間

 構図が決まったら、絞りを決めます。普通の写真では露出はシャッター速度と絞りとフィルム感度で決めるのですが、すでに絞り以外は決めているので、露出は絞りで調整します。しぼり解放では、あまり画質が良くないので、1段か2段絞ります。おそらく、絞りはほとんど選べないということになるでしょう。
 右の露出時間早見表を参考にしてみて下さい。一般的な感度400のフィルムを使った場合、F5.6だと60分が適正露出となってしまします。よって、F4.0程度が実際的なF値となることになり一般的な(開放F値の大きな)ズームレンズでは撮影が難しいのが分かると思います。

  絞   り (F)
1.4 2.0 2.8 4.0 5.6
フィルム
感  度
100 15分 30分 60分 120分 240分
200 8分 15分 30分 60分 120分
400 4分 8分 15分 30分 60分
800 2分 4分 8分 15分 30分
1600 1分 2分 4分 8分 15分

※この露出時間はかなり暗い星空の場合の参考 です。ちょっとした山中くらいなら通常この半分から3分の1程度で良いと思います。
デジタルの場合は、相反則不軌がありませんので、この半分から4分の1程度の露出で良いようです。ただし、デジタルは撮像素子や画像処理エンジンによって大きく特性が異なりますので、テスト撮影が必須だと思います。


  四.撮影

 三までで、あとはシャッターを切るばかりになっているはずです。でも、その前に

  ・ピントが無限遠になっているか?

  ・絞りは適切か?

  ・シャッター速度はBまたはTになっているか?


  ・・・を確認しましょう。これができていないと、現像ができたときに悲しい思いをすることになります。
 OKだったら、シャッターを切って露出時間が終わるまで、星空や望遠鏡でも見て過ごしましょう。間違っても寝てしまわないように!!
 1枚の撮影が終わったらレンズが曇っていないかも必ず確認しましょう。


  五.現像
 撮影が終わったら、できるだけ早く現像しましょう。フィルムがもったいないと思うかもしれませんが、フィルムは生ものです。
 現像に出す店は、”1時間仕上げの店”とかでは無く、なるべくしっかりとした店に出しましょう。出すときには”星の写真です”とはっきり断ってから出すと、お店も困らなくて良いと思います。星の写真はしっかり見ないと何も写っていないように見えるのでプリントされないなどのトラブルがあるからです。
 初めての店だと、現像からあがってきた写真がとんでもないプリント(真っ黒・真っ白)の可能性があります。そういう場合には、”濃く”または”薄く”などと注文をして、再プリントを依頼しましょう。同じネガからでも、驚くほど違うプリントが得られることがあります。

  六.流星の写真の撮り方
 流星の写真を撮る場合には、少しだけ事情がちがいます。とにかく高感度フィルムと明るいレンズが必要です。具体的には感度はISO800以上・レンズの絞りはF4.0よりも最低でも明るくないとほとんど流星は写らないでしょう。流星を写す確率をあげるためには、カメラを複数台使うというのも手です。

  終わりに
 以上長々と書いてきましたが、これで撮影できるはずです。まずは撮影してみましょう!!思ったより簡単に撮れるものです。
 また、分からないことがありましたら、作者までメールをいただければお答えします。
 メールアドレスは です

次ページ撮影プランと実際の作例について

2008年10月22日 写真のジャンル、デジタル関係の露出など加筆修正
2008年11月11日 撮影プランをどのように考えているかを書いてみました。

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