北欧のたび

2004年夏

スウェーデンを中心に、ノルウェーなど北欧を旅しました。自然の風景を紹介します。


北欧の旅はストックホルムから始まります。街全体が博物館かと思うほどの落ち着きと統一感のある町並みです。
ストックホルムは水の街。バイキングラインなど大型フェリーが行き来します。
バイキングラインでおとなりフィンランドの島まで。乗客の多くは、目的地到着後も船を降りずに折り返し便で戻っていきました。いったい何が目的でしょう? 

・・・船内で免税品を買うためです。国境を越えるため船内の売店では免税になるのですね。

観光船はノルウエーのソグネフィヨルドへ入っていきます。このフィヨルドは世界最長で、河口から180kmも内陸まで入り込んでいます。なんと、この地点の深さは水深1000m!落ちたらひとたまりもありません。
湾のいちばん奥にはちいさな集落がありました。ここに上陸してフローム渓谷を鉄道で登りベルゲン急行へ合流。人を容易に寄せつけない険しさがあります。
フィヨルド海面上で近づいてくる一隻の船。二隻はどんどん接近し、とうとう接触しました。やがて大きな荷物を抱えた人々が乗り移ってきました。海賊か! 
・・・と思いきや違いました。海上のバスを乗り換えていたのです。ホッ。 平らな土地がほとんどないため、人の移動には昔から船が使われているのですね。
高速鉄道がない北欧では、長距離移動に飛行機を使います。みな、新幹線に乗るような感覚で国内線に乗っています。
ストックホルム・アーランダ空港から一路、北へ。北極圏のキルナまで高飛びです。キルナは鉱山都市。LKABという会社が鉄鉱石を掘り続けています。
キルナからアビスコ、そしてノルウエーのナルビクへ続く世界最北の鉄道。ストックホルムからはるばる12時間以上かけて寝台列車が森と湖の中を通ります。スカンジナビア山脈を越えれば、もうすぐ大西洋岸の積出港ナルビク。もともとは鉄鉱石の積み出しに使っていた鉄道です。今でも夏冬昼夜問わず長〜い貨物列車が1日10往復以上しています。
客車はこの地ではむしろ少数派。アビスコでは一日4往復ほどしか来ません。しかも何時間も遅れるのが当たり前。
ビスタ〜〜リ
ローカル列車では降りたい駅を車掌に言わないと停まりません。では乗るときはどうする? 

答えは写真の黄色の看板。この看板は左右に回せるようになっていて、乗りたい列車がきたら回転させて運転手に見せるのです。一人のためにわざわざ停まってくれてすみません。

トナカイの群が草をはみはみ移動しています。首にベルをつけているので野生ではないようです。そもそもトナカイは交配種だから野生はいないのかな。
カルケバッゲの斜面には舌状の形が浮かび上がっています。斜面の下の方に何かがだら〜っと流れてきているようですね。ローソクを溶かして流して固まったような感じ。これはいったい何なのでしょう??
土の動きなどを調べてみました。かれこれ8年目になります。土が動いていることが分かりました。年間に数cm、場所によっては1m近くも移動している! これは冬に凍った地面(季節凍土)が溶けるときに地中がびしゃびしゃの状態になって土壌の粘着力が弱まることにより流動するということがわかりました。エンジンを持っていって凍土をドリルした結果、特に地面の中にできた氷の層(アイスレンズ)の存在が大きい。凍土を甘く見てはいけません。コンクリートのように硬いのです!
さて、今回の旅のいちばんの目的は現地調査です。何を調べるのか? まあ難しいことはさておいて、ここは調査対象地のカルケバッゲの谷。英語に訳せば「ボルダーバレー」。つまり岩の谷です。氷河が消え、U字谷とその底に膨大な数の堆石が残されました。
この谷にはスウェーデン王立科学アカデミーの研究施設があります。正確には研究所が設置した現地調査用の気象観測&簡易宿泊施設。自然科学の研究者が一定の期間、使用できます。アメリカやドイツからの研究者と寝食を共にしました。
この施設、管理人はいませんので自炊です。ガスはありますが、水は川から取ってきます。シャワーはありませんが、薪サウナがあります。娯楽はありませんが、調べるフィールドは無限大です。
岩壁にひずみ計を取り付けて、クラックの動きを調べています。夜に結露した水分が岩の透き間に入り込んで、夜になるとそれが凍る。凍ると体積が膨張して岩を砕く。だから凍結と融解が繰り返す季節に落石が多い。それが正しければ、水分がより多い地表付近で岩壁の破壊が先に進む。するとオーバーハングした岩壁の上部が不安定になって次々に崩れていく。結果的に岩壁はどんどん後退していく。・・・という仮説が証明できればいいのですが。
研究とは長い道のりです。
ラップランドの象徴ラポーテン。英語でラピッシュゲート(ラップ人の門)。一対のU字谷というわけではありませんが、氷河の作用でできた地形です。
レンタカーで一路、北へ。
右側通行、左ハンドル、右手でギアチェンジ、ロータリーの交差点に初めは面くらいますが、慣れればたいしたことありません。
スウェーデンからノルウェーへ。国境はシンプルで誰もいない。パスポートを出すこともない。車で国境を越える感覚は日本では味わえないですね。
スカンジナビア山脈の脊梁部は森林限界を超えていて荒涼としています。この辺はボスニア湾に向かって東に緩やかに傾斜していますが、氷河期には大陸氷河が大西洋、つまり西に向かって流れていました。地面の傾斜と氷河の流れの向きが逆なんて、なんか不思議です。水ではありえないことです。
フィヨルドの湾口には今は橋が架かっていますが、橋ができる前はそうとう不便です。フィヨルドごとに内陸までぐっと迂回しなくては隣の町に行けません。むしろ人の足は船でした。
ヨーロッパ道10号線と別れ5号線に入り、ヨーロッパ最北の地を目ざす。ロシアとの国境近くのヒルケネスまで1022km!こんな距離が書いてある標識、見たことありません。試しに日本で当てはめてみると、東京の日本橋を起点に国道1号線で大阪まで568km、接続する2号線で山口県防府市まで行ってやっと1024km。
日本橋で「防府市へ1024km」 う〜む、おもしろい。
海まで達するほどの氷河が次々に現れます。
キルナを出てから1000km以上もきましたが、信号など一つもありません。ひたすら道は北に続きます。
ヨーロッパ道5号線(E5)と別れマーゲロイ島に近づくと、道路の主役は車ではなくトナカイになっていました。トナカイの群がどくまで、車はじっと待つしかありません。クラクションなど禁物です。
ホニングスボーグでは庭先にもトナカイ。ここではソリを引いてサンタクロースを連れてくる、なんていう非日常の感慨はないようです。
またまた舌状の地形を発見! ソリフラクションロウブというこの地形、北欧では生活域にもあるありふれたものなのですね。日本では北海道の大雪山や日本アルプスにしかない寒冷地特有の珍しい地形なのですが。
それにしても生き物のようにぞろぞろとたくさん垂れてきています。

山の上に見えるのは天体観測施設のドーム。

土の山。よく見るとなにやら窓らしきものがある。これはラップ人(サーメ人)の伝統的な住居です。自然と一体化して住んでいるのですね。
マーゲロイ島のイエスバルという小さな村に2泊しました。お店もないさびしい村でしたが、鳥はにぎやかでした。観光船に乗ってペリカンのコロニーなど眺められます。
とうとうヨーロッパ最北の地へ到着。ノールカップの先にはバレンツ海があるだけ。ただ、海に着きだした岬が横に見えます。あちらの方が北なんじゃない? と調べてみたら47秒だけ確かに北にある。ノールカップではヨーロッパ大陸最北とは言えない! むむむム あちらのクニブシェロデンという岬に行くしかない! 
というわけで、駐車場から2時間歩いてきました。やっと満足です。


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