表現力を豊かに 4
平成10年11月25日 教育タイムス掲載 「コミュニケーション」
我が家のある日の会話を紹介しましょう。
妻:真人(高1の息子)、今日の晩は、みんなで外へ食べに行こう。お母さんもその方が楽やし。
息子:ええわ。コンビニで何んか買って食べとく。
妻:何んでやな。お姉ちゃんも朋(小4の娘)も行くて言うてるで。外に食べに行くのがいやなんか。それともお母さんらと一緒に行くのがいやなんか。
息子:両方や。
妻:えらいはっきり言うてくれるやんか。
娘(小4):お母さん、ほんまのこと言わなあかんにゃで。うそついたらあかんにゃで。
我が家の親子の会話から、それぞれがどのような考えや気持ちを抱いているかをうかがえると思います。人と人との結びつきはコミュニケーションによって作り出されるものだと実感します。
さて、コミュニケーションはよくキャッチボールだと言われます。相手が受け取れるような「ことばのボール」を投げ、相手がそれを投げ返す──これを繰り返して行うことがコミュニケーションだと。相手が受け取れないようなボールを投げてはコミュニケーションは成り立たないとも言われます。
しかしながら、受け取りやすい直球ばかりを投げていては、コミュニケーションは単調になります。変化球を投げることも必要です。ですから、コミュニケーションには豊かな表現力が大切となります。
それでは、コミュニケーションは何のために行うのでしょうか。何のために行うのかを踏まえていないとコミュニケーションに必要な表現はできません。
お互いに、または相手に自分の思いや考え(メッセージ)を伝えたいためにコミュニケーションは行われます。そして、それは、単にある情報を伝えたいということから社会的な人間関係を深めるためにと様々な目的や内容を持っています。
最近の言語教育では、パターン・プラクティスのようにある表現形式の置き換え練習をしたり、読んだ(又は聞いた)内容を理解したかどうかを、答えが決まっている事実について尋ねるディスプレイ・クエスチョン(display question)で確認したりするするのではなく、コミュニケーションという観点から「あなたはどう思いますか」といった答えが決まっていないことを尋ねるレファレンシャル・クエスチョン(referential question)が多く用いられて、自分の思いや考えを表現することに重点が置かれるようになってきました。
その思いや考え、情報を的確に伝えるためにはそれにふさわしい表現をしなければなりません。ジェスチャーなどのことばを使わない表現も大切です。語彙が豊富でなければなりません。音声的にはイントネーションや強調、ポーズといったことも大切になります。
コミュニケーションは自分と相手の双方にとっての自己表現です。世界の人々と協調、国際交流を行っていくこれからの時代、ますますこのコミュニケーションという概念が大切なものになるでしょう。