表現力を豊かに 5
平成10年12月9日 教育タイムス掲載 「言葉遣い」
先日、テレビを見ていたら、現在の若者言葉の特徴が話題になっていました。みなさんは「仲居くんてかっこよくない」という文をどう解釈されますか。
私は「仲居くんはかっこわるい」という意味だと思いましたが、若い人たちはこの文の最後を上げ調子で読んで「仲居くんてすごくかっこいい」ととらえるのだそうです。英語でならIsn't Mr. Nakai attractive?と下降調で言う感じなのです。
今の若い人たちの流行り言葉は、自分の回りの人たちだけに通じればよいという考えで生み出されているので、これまでの日本語の言い方にとらわれない形になっています。それが新鮮で(人によっては醜悪と思えるのですが)連鎖的に広がっていくようです。
大平浩哉「音声言語教育に関する基礎的研究」(大平浩哉『世紀末国語教育論』有朋堂、1995)によると、音声言語に関する生徒の共通的な特徴として、
@早口の傾向があること。
A言葉遣いに男女差が少なくなったこと。
Bパターン化した表現が多いこと。
C独特のアクセント、イントネーションがみられること。
Dぼかした表現を好んで使うこと。(例、別に・とか・という感じ等)
E饒舌と寡言の二極化現象がみられること。(友達同士の猛烈なおしゃぺり・一語や二語ですます無言化傾向)
F方言が減り、共通語化の傾向が著しいこと。
G人の話がきちんときけない子ども、聞く・話すを積み重ねていく話し合いが苦手な子どもが増えていること。
が挙げられています。
ある時、学年HRの講演会の司会役を務めていた生徒が「今日の講師を軽く紹介します」といって講師のことみんなに話しました。「軽く」と言えば講師に対して少し失礼ならないかな、たぶん「簡単に」というところを「軽く」と言ったんだなと思いましたが、ひょっとして、聴衆のみんなを退屈させるような「重苦しい」紹介ではなくて、さらりとしたという意味で「軽く」と言う方がこのようなときにはいいと若い人たちは思っているパターン化した言い方なのだろうかと考え込みました。
上記のDにあるような曖昧でぼかした表現が使われる傾向は、相手をなるべく傷つけない、自分も傷つけられないために発生しているのではないかと言われています。
ことばは文化です。そして新しい文化が生まれることはいいことです。ただ、先回に述べましたように、コミュニケーションとして、ことばは分かりやすく、明確で、筋が通っていなければ相手にうまく伝わりません。誰が聞いても、読んでも分かる言葉遣いもできるようにしなければ、せっかくの表現が意味をなさないようになります。
試験の解答などを見ていると、何が言いたいのか分からない文章や、異なった意味にとらえてしまう文章に出くわすときがあります。そのような結果にならないようにみなさんもご用心!