表現力を豊かに 6 

平成10年12月16日 教育タイムス掲載

「生きる力は表現力から」

「お母さん、早く明日にならへんかな。明日のバレーボール学校対抗戦ぜったい見に来てや。お父さんはあかんのやろ。朋な、誰もなる人いいひんかったからセッターになったげたんや。今日の練習の時、Sちゃんがいいサーブ打たはってラリーが続いたんやけど、朋が失敗して終わってしもうた。そやけど、最後に朋にサーブにまわってきたときは、2本も連続して相手のとこへ入って点取ったんやで!」と末娘(小4)が先日母親に話をしていました。
「生き生きとした表現力は、『生きる力』につながるのではないか。自分が感じたこと、驚いたこと、不思議に思うことを表現することは、自分が自分として生きる根元的な力ではないか」と、娘の話を聞きながら強く感じました。
しかしながら、最近の傾向として、疲労感がある、受動性が強く待ちの姿勢である、その割に思い上がりが強い、自己意識と対人感情の発達が悪くコミュニケーションをうまくできない子どもが増えていると言われています。
大阪府教育センターの高等学校「国語」研修で渡辺廣之指導主事が行った「書くことの指導」についてのアンケート結果によりますと、「大学入試等の差し迫った必要性がない限り、書くことに関心を示さない」「自分の意見や考えに沿う具体例が書けなかったり、意見の根拠が書けなかったりする」「できごと作文は書けても、自分の意見を表現できない」「文章を書くことをめんどくさがる生徒が多い」などと生徒の受動的な姿勢を先生方は嘆かれているとのことです。
中教審の答申には「いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」、「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」、そして、「たくましく生きるための健康や体力」が「生きる力」の重要な要素として挙げられています。
初回に述べましたように、感動すること、不思議に思うこと、驚くことが大切だと、私は思います。そしてそれを相手に伝える表現力が必要であると。それによって人はコミュニケーションを図ります。そうしたコミュニケーションやふれあいの中で、人はまた、感動したり、憤ったり、驚いたりします。そしてそれが自分を意識するプロセスとなります。そのプロセスが「生きる力」のエネルギーになるのではないかと思います。
幼い頃に持っていた「ものに感動する心」を忘れないでください。積極性を忘れないでください。受動的であると、注意力が散漫になり、物事に気づかなかったり安易な方向に流れやすくなったりします。自分が感じることをことばにしてコミュニケーションを図ってください。生き生きとした表現力、豊かな表現力はあなたの世界を広げるだけでなく、世界観も大きくしてくれます。