秋田県 大深(おおぶか)温泉

泉質:

酸性明礬線、源泉85-93度

所在地:

秋田県田沢湖町字大深国有林内

訪れた時期:

2002年9月

個人的評価:

酸性の高温泉。草津の煮川に通じる気持ちよさはどうやら酸性明礬泉に特有で共通の「感じ」だと確信。湯はかなり好み。

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確かに深い。八幡平アスピーテラインを挟んで山を反対側の谷に下っていく。看板を目印に、結構な傾斜の細い道をどんどん下る。雪が深ければもう絶対に二度と這い上がれないのではないかと言う雰囲気(あくまでも雰囲気)の坂道を下りきると、小さな駐車スペースと山小屋風の建物が現れた。見上げると、さっきまでの通り雨で緩んだ地面とは対照的な水色の空が美しく広がっている。

入浴料金を払いに建物に入る。お客さんとの話に夢中になっているおばちゃんに声をかけると、愛想よく「どちらからきなすった?」と聞かれた。「東京です」と答えると、何故だか「あー、あー、そりゃあ、ご苦労様です」と言ってくれた。こっちは好きでやっている事なのではあるが「ああ、ここまで来て本当によかったなぁ」と感激した。加えて、手加減はあったかもしれないが、なんにせよ難しいに違いないと思っていた年配者との会話で言葉が通じたのも驚きであり喜びであった。が、しかし重要な任務を控え、感動に浸っている余裕はあまりない。ここで入浴料金を払って、タオルも買ったら、別の建物になっている風呂方面へとすばやく移動する。

オンドル小屋風呂の建物は、メインの建物のすぐそばだが、ちょっとした雑木林や崖に隠されていてちょっといい雰囲気になっている。すかさず、すぐ横の小さな坂道を上がっていくと、小さいながらオンドル小屋があった。その先は行き止まりになっていて、湿地っぽい場所から噴気が上がっている。小さいながらも立派な噴気地獄である。風呂も小さな共同浴場というような風情で、すべてがこじんまりとしていて人がおらず静かで、そして渋い。噴気の吹き出る音があたりを包んでいるのではないかという気になる。まるでミニ玉川かミニ後生掛という風情だ。入浴を急ぐ身とはいえ、貴重な旅なので、周囲を見学する余裕は忘れてはならない。やっと風呂に戻って、脱衣場からまずは風呂場を覗いてみる。見かけと雰囲気ほどの濃さは持っていないと思われるおそらくは硫黄泉の湯が賭け流しで贅沢に使われているものと推察できた。

勢い良く湯が注がれるきれいな木造の浴槽には水色白濁で多少透明度のある湯がなみなみと湛えられ、景気良く溢れでる湯が、きらきら光る美しい流れを作っていた。体を流してから、素早く浴槽に浸かって手足を伸ばして落ち着いたら、思い出したのが福島の岳温泉、草津の煮川源泉、万座の苦湯。どれにも少しづつ似ているが、どれとも全く違う湯は、新鮮な硫黄系の湯に特有な肌触りや匂いが顕著で、なんだか妙に落ち着いた。こういう湯には何かの力のようなものを感じるが、ここの湯も例外ではなく力があった。言葉が適切ではないかもしれないが、長湯をすると体にどぉーっとくる「きつさ」のようなものを持っている。こういう湯には長湯は控えて、長めに入るなら休み休みに楽しむのがいい。(現場に泉質表見あたらず。後の調べで酸性明礬線とわかる。名前の限りでは草津と同じ類の泉質らしい。源泉は85-93度の高温との事。我ながら読みの的確さに驚いた。元は硫黄鉱山だったとの事。)

大深温泉の湯船少しぬるいかなと思って注意深く湯船に注がれる流れを見てみたら、確かに湯はかけ流しであったが、やや甘味を持った水(おそらくは沢水または湧水)で薄められていた。味からして水道の水ではないと思うが、記憶の中では最近飲んだ盛岡あたりの上水道なんかも全く油断ならないくらいに美味しかったので、これが本当に上水道ではないと言い切るまでの自信はない。もっともこんな山の上の上まで上水道が来ているのかどうかが、そもそも怪しいが。それにしても都会の水や調味料などで性能が低下しているであろう自分の舌が悔やまれるのであった。湯の方を味見すると、予期したとおりやや苦酸っぱい味がした。水のほうで口を濯いで、、、水も悪くないなと弱気に意を新たにしてみたりするのであった。

実際、あくまでも「薄めなしの源泉かけ流し」が最高と思うものの、こういう薄め方ならなかなか悪くない。なにせ、もともとたっぷりの熱い源泉湯がざぶざぶと文字通り湯水のごとく贅沢に使われている浴槽に対しての自然な水なのであり、足りない源泉湯を加熱した水で薄めて補っているわけではないし、塩素たっぷりの水道水を使用しているわけでもないのだ。窓も開けてあって換気もしてありそれでも十分に冷めないからの処置なのだろう。新鮮で熱い湯と少し古くなるが冷ました湯を混ぜるという方法もあるのだが、冷まし用の湯樋(それなりの距離も必要)ないしは熱交換設備などを揃えるのも難しいだろうし、その上調整も困難だろう。コストだってかかるし、コストは入浴料に跳ね返るかもしれない。そうすると今度は「それに見合った」(入浴客にわかりやすいが、こういう所には不似合いな)設備を要求する入浴客も出てくるだろう。こういういい湯に恵まれたからには、そんな悪循環は絶対に避けるべきだろう。ここにはこの薄め方が最良の方法なのだと思う。極めて高温で新鮮な湯の持ち味(ここの場合はある種の「きつさ」)を楽しむには、冷まして新鮮さを失った湯と混ぜるより、新鮮な自然な水を適量混ぜるのが、もしかしたら最高の方法なのかもしれない。それに熱過ぎる湯は、人を選ぶだろう。もともとこの日、ここには人もまばらだったが、もしもそれで更に衰退するとしたら、それはまた死活問題だろう。

大深温泉 裏の噴気地獄実は、ここの湯は、出発直前にこのあたりの情報を調べていてたまたま見つけた。地元の温泉ガイドはいざしらず全国区のガイドには殆ど出ていないようで、ほんとうにたまたま知る事ができたと言っていい。地図によっては確かに大深温泉と出てはいるのだが、出ていない地図もあるようで、実のところ全国区ではあまり知られていないのかもしれない。

旅はまだ二日目の昼下がり。先を急ぐ旅ゆえに、あまり長湯する事はできなかった。縁あって出会うことのできたすばらしい湯との別れを惜しみつつ、短い後ろ髪を引かれる思いで湯を後にした。またいつか縁あって、ここに来る事はあるだろうか。湯上りのすべすべを感じながら、傾斜のある坂道をゆっくりゆっくりと車で登っていった。

泉質

現場に泉質表見あたらず。後の調べで酸性明礬線とわかる。源泉85-93度

  


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