青森県 谷地温泉

泉質:

単純硫化水素泉(緊張、低張性高温泉)無色透明38度と白濁42度の二本

所在地:

青森県上北郡十和田湖町八甲田谷地温泉

訪れた時期:

2002年9月

個人的評価:

山小屋的存在ではあるが湯治にも対応する湯は、人間の力を感じる湯だった

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谷地湿原を望むというよりも、ほぼそのほとりに位置する谷地温泉は、登山基地とされているらしいが、さて、どの山への基地なのかはよくわからないまま、山小屋風の建物に入る。表からして軽食のメニューなどが掲げまくってあり、いかにも基地らしくもあり旅館なのかお店なのかよくわからない深山のコンビニ的佇まいである。建物入り口の脇には、わき水がひいてある蛇口とコップが置いてあり、旅路で乾ききった喉を潤す事ができるが、この蛇口周辺に日本秘湯を守る会の会員である事を示す小さなプレートが貼ってあり、途端に旅情高まるという仕掛けになっている。

建物に入ると売店然とした雰囲気と頼りない山小屋風照明により、薄暗い混沌が演出されて気分は一気に山男と化す。かもしれない。料金を支払い、奥の風呂へと建物の中を進む。南極基地はこんな風なのだろうかと想像しつつ廊下を進むと、あちらこちら修理中なのか、痛みを補修しつつ運営しているような気配があり、ここが山小屋であるのだという認識を新たにする。間違えても上品な和風旅館ではなく山小屋的な男の登山基地的温泉付き宿なのである。実際には女の人もいたわけだが、登山好きであろうと思われるお母ちゃんばかりであり、間違えても山奥の秘湯で温泉好きな美女とひっそりこっそりというような感じではなかった。山奥の秘湯で彼女としっぽり的温泉旅行を企む軟弱な男にはすすめられないので要注意である。

脱衣場からして効能豊かという言葉が浮かんできそうな脱衣場にはすでに修行場という雰囲気が漂っている。見れば「湯治の仕方」が壁に掲げてあり、長期滞在湯治も任せとけ的雰囲気である。古びたガラスのはめてある木の扉を開くと、ミニ鹿の湯(鹿の湯は栃木県那須湯本にある)という趣の浴場で、手前には打たせ湯があり、その前には小さな細い浴槽がある。さらに奥に向かって同じような浴槽が二つありそれぞれが木の壁で仕切られている。窮屈にも感じられるが、落ち着いて入浴するにはいいのかもしれない。惜しむらくは、じっくり浸かる人が多い割に浴槽の空きがなかなかないので、混雑時にタイミングを逃すと、いつまでも入れない事になってしまう点だろう。あるいは意地になって長湯しかねないという事も考えられる。そういうわけで予期せずして体力自慢の山男との熱い裸の攻防に巻き込まれてしまった。本来なら温度の低い方の浴槽から入るべきなのだが空きがない上にこちらは急いでいる。熱いとされる奥の浴槽に向かうと我慢しながら入っているお父さん数人。さらに熱い所に至っては体を冷まして入れないでいるおとっつぁんもいたので、しめしめとばかりにすかさずかけ湯をして体を流してするりと熱い湯に滑り込む。湯は白濁していて硫黄臭があり、とろみを感じたが、優しいという事はなく、荒々しい強さを持っている。熱いとされる浴槽はしかし大した熱さではなく拍子抜けであり、熱い湯好きとしては残念な所ではあったが、ゆっくりじっくり落ち着いて疲れを落とすにはちょうどよい温度なのかもしれない。

汗が額にうっすら浮かぶまでじっくり無心で浸かっていると、突然に湯治客らしい人同士の会話が聞こえてきて、東北にいるのだという事を思い出させてくれた。話の内容は相変わらずよくわからなかったのではあったが。

湯上がりに宿のすぐ横の小さな展望台から湿原を眺めた後、いけすのイワナを見ながら涼んだ。そうか、君らが、すぐそこで塩焼きになるんだな... 僕の背後では旨そうな塩焼きが串刺しのまま炭火であたためられていて、山男か誰かの胃袋に収まるのを静かに待っていた。

泉質

単純硫化水素泉(緊張、低張性高温泉)無色透明38度と白濁42度の二本

  


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