コモロの日本語使い
コモロの旅は失敗だった。
首都モロニに着いた途端、愕然とした。
唯一の国際空港に両替所がない。
しかたないのでタクシーでまず銀行まで行ってもらい、そこで両替してから宿に行った。
町の中心でも店が何件かあるくらいで、建物はみなぼろぼろですごく寂れていた。
ガイアナやスリナムに行った時もひどかったが、ここはそれ以上だ。
本当に何もない。
こんな町で何をしたらいいのだろうか。
観光案内所に行こうとしたら、この国にはそんなものはないと言う。
コモロは旅行客、公的な訪問者、要するに外国から来る人は全て合わせても年間二百人というような国なのだ。そんな国に観光案内所がなくても不思議ではない。
外国人をあまり扱いなれていないからか、この国に入国する時、ビザなしで入ってしまった。
本当は空港でビザを所得する事になっているのだが、係官がしらないのかビザなしのパスポートにいきなりハンコを押されてしまった。
どうしよかと迷ったが、ビザ代免除されたので、ラッキーと思いそのまま入国してしまった。
出国する時問題にならないかと気になったが、あれ!?お前ビザないのか、と係官に聞かれ、うん、とうなづいたら、そのまま出国用のハンコをあっさりと押してくれた。
そんなコモロでどうしようかと町を歩くが、やはりやる事が見つからない。
食事を取る所すらほとんどなかったので、ビスケットばかりかじっていた。
英語も全然通じなかった。
まあ、コモロは観光する国じゃないというのは分かっていたが、あまりにも何をなさ過ぎるので、これでは散歩しても面白くない。
結局、タクシーを大枚四千円を払い、島を一周してもらう事にした。
この国は世界最貧国のうちの一つのくせに、物価はかなり高いのだ。
案の定、見所など何もなく、近くの山に登ったり、島を散策するくらいだった。博物館にも行ったが、めったに人が来ないのか、管理人に鍵を開けてもらってようやく入れた。展示物もたいした物はない。
ところが、南部の小さな村にやって来た時、思いもよらない出会いが会った。
一人のコモロ人が日本語で話しかけて来たのだ。
コモロという辺境の国の、そのまた辺境の村に日本語が喋れる人がいるとは思わなかった。
彼はこの村出身で英語の教師をしていると言う。
日本語はマダガスカルに留学して学んだらしい。日本語の留学にマダガスカルに行くと言うのもすごい話しだ。
彼が日本語を学び始めた理由を尋ねると、彼の父が日本で働いていたからだ、と答える。
明日、コモロを出るんだ、と言うと、彼は残念そうだった。自分に日本語をもっと教えてもらいたかったらしい。
彼は日本語の学校をこのコモロにつくり、コモロ中に日本語を広めるのが夢だ、と語るが、どう考えてもそれは夢にしかならないだろう。
コモロを訪れる日本人なんてほとんどいないだろう。
事実、自分は彼が初めて会った日本人だった。
コモロの人達もここではなんの役にもたたない日本語を学ぶとは思えない。
だが、こんな辺境で日本語を勉強する人がいるのはうれしかった。
彼は今でも日本語を勉強しているのであろうか。