史上最凶の町



  ヨハネスブルグ、そこは魑魅魍魎の跋扈する世界であった。
  犯罪発生率は世界一、殺人事件はニューヨークの十倍、レイプは24秒に一回。この町の女性の三人に一人はレイプの経験があると言われている。レイプ被害者の半分が15歳以下の少女で、犯人の44%が教師、21%が身内である。おまけにエイズポジティブは国民の20%に及ぶ。0歳児ですらレイプされる事すらあった。というのも、アフリカでは処女とセックスするとエイズが治ると信じられているので、乳児がしばしばレイプされるのだ。
  その中でも特に危ないと言われているダウンタウンは、人々から北斗の拳の世界と呼ばれ、町には異様な雰囲気が漂っており、十分歩けば百パーセント強盗に出会えると言われている。ここを通る車は赤信号でも無視するし、警察からも無視するように通達がされている。律義に赤信号で停車して強盗に殺された日本人は翌日の新聞で非常識呼ばわりされていた。
  また、ヨハネスブルクではエンストを起こした時のために携帯電話は必需で、エンストを起こした場合はすみやかに修理屋と警察に連絡しなくてはならない。もし、ヨハネスブルグでエンストを起こして、携帯電話を持っていなかった場合、それは死を意味する。
  団体なら安全だろうと歩いた八人組みのバックパッカーは二十人組みの強盗に襲われた。しかも、襲うにしてもホールドアップと言ってくれる強盗は良心的で、たいていは有無を言わさずいきなり殴り掛かったり、ナイフで刺したりしてくる。また、歩道を歩いている人を跳ね飛ばし、瀕死の重傷を負わせた後で悠々と盗みを働くなんて事もあった。こんな話しを冗談だろうと思って外出した旅行者は一分後に血だらけになって戻ってきた。手ぶらなら大丈夫だろうと思って外出した旅行者は靴を取られて帰ってきた。バスに乗れば安全だろうと思ったら、バスの乗客が全員強盗だった事もあるそうだ。
  宿ですら安全でなく、旅行者は当然金を持っているので、それを目当てに武装強盗にもよく押し入られた。その時、男も女も全員レイプされたなんて話しすら聞いた。
 刑務所に入っても安心できない。南アフリカの刑務所ではレイプが相次いで起きており、刑務所内での同性愛を認めるべきだという案まで出ている。
 ガイドブックにはヨーロッパの犯罪は頭を使うが、アフリカ人は体を使うとかかれていた。一見差別のようだが事実である。
  そんなヨハネスブルグに私はいきなり夜中に着いた。泣きそうである。
  空港の中はさすがに危なそうには見えなかった。でも、後であった日本人は空港内で盗難があって、犯人を追いかけたらナイフで切りつけられたそうだ。
  まずはお金を両替して、空港の待合室に行ってみた。ガイドブックなどを読むと、ヨハネスブルグは治安が悪いので、空港までバックパッカーズが客引きに着ているとの事だった。しかし、いくら探せどもそんな様子はどこにもなかった。もう夜も遅いからだろうか。
  私はしかたなくタクシーでバックパッカーズまで行く事にした。普段なら流しのタクシーを使う所だが、さすがにここは怖いので、タクシーカウンターを捜す事にした。ところが、どこにもそんなものはない。空港の守衛に尋ねると、外にたむろしている黒人の流しのタクシーを指差される。彼らを利用するのはかなり避けたかったが、正規のタクシーなどないようなので、利用せざるおえなかった。
  運転手は皆黒人。はっきり言ってかなり怖い。差別するわけではないが、南アの凶悪犯罪はほとんど黒人によって引き起こされているので、彼らが強盗に早変わりしないか心配だった。また、空港からタクシーを追跡して、強盗を働く輩もこの国には多かった。
  歩き方に一軒だけ書かれたゲストハウスへと向かう。住所の辺りで探すが見つからない。いくら治安のいいサントン地区だからと言って、この時間に車から降りて探すのはかなり怖い。辺りは真っ暗で人通りがない。実際、サントン地区のバックパッカーズですらよく押込み強盗に入られているのだ。どの家も頑丈な鉄格子をはめている。
  結局見つからないので、運転手が電話をかけてみると二年前に引っ越している事が分かった。ここからはかなり遠いので、280R要求される。日本円で3000円くらいだ。はっきり言って高いが、ここで放り出されたら百パーセント強盗に遭うので、乗せていってもらう事にする。
  ゲストハウスは相当遠く、ヨハネスブルクの郊外まで来てしまった。後で分かった事だが、ヨハネスブルグ市内にはバックパッカーズが何軒もあって、こんな所まで来る必要がなかった。
  何はともあれ、私は無事に宿までたどり着く事ができた。
  余談だが、後にヨハネスブルグのダウンタウンを歩いた人に何十人と会ったが、十分以上歩いて強盗に遭わなかった人はたったの一人だけだった。もっとも、その彼もマラウィで強盗にあった。
 警察所に被害届を出しに行った人が言うには、警官が随時三人くらい座ったデスクがあり、何を取られたか聞かれ、あっと言う間に被害届を書いてくれたそうだ。犯罪が非常に頻繁に起こるので、すぐに被害届を出してくれるようになっているようだが、そんな事をする暇があったら、犯罪の方を取り締まれよ。