現地発、クロアチア・サッカー報告(12)

ヴァトレニ・ビッグバン


2002/4/17 親善試合「クロアチアvs.ボスニア・ヘルツェゴビナ」


 戦略家か、それとも博打師か。ミルコ・ヨジッチ監督は奇想天外なアイデアで自らの危機を脱した。泥沼的な得点力不足は、ダヴォール・シュケルのMF起用と「2-4-2-2」システム採用という二つの賭けに出たことで、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の前半44分、イヴィツァ・オリッチのゴールという形で報われたのだ。

 4月11日、ヨジッチは代表メンバーを発表。その場で彼はこう語った。「チーム構成と基本概念の決定が近付いている。残念ながら今は連続して選手を失っている。ダリオ・シミッチはイゴール・シュティマッツ(既に現役引退を発表)、イゴール・トゥドールに続いて怪我をしてしまった。今はバランスを考え、最適な解決を求めている。」
スロベニア戦で良いプレーを見せたマリオ・トキッチやスルジャン・アンドリッチ、ヤスミン・アギッチらの名前は無く、ハイドゥクのDFゴラン・サブリッチに初召集の声が掛かった。その一方で、パナシナイコスでレギュラーでプレーしているSBダニエル・シャリッチはまたも外され、「大変失望している。今の代表での同ポジションの選手はクラブでレギュラーでプレーしてないというのに。ヨジッチは私に対して何か個人的な感情を持っているのでは?」と怒りを見せた。ボシュコ・バラバンに至っては「ヨジッチは雑巾のように私を扱い、そして捨てられた」とマスコミを通じて批判。ヨジッチは彼に対してこう批評している。「アストン・ヴィラで残り試合をプレーするならば、自らを証明しなくてはならない。彼は私にとっての代表候補だ。しかし付け加えるならはディナモでのバラバンは今日のオリッチよりも良く無かった。オリッチが代表の常時のメンバーで無かったとしてもね。」

【写真:代表バスを仮運転するシュケル。
同様に試合では舵取り役を担った】

 またヨジッチはスロベニア戦でゴールゲッターとしての限界を露呈したシュケルに関し、MFに転向させることを会見の場で発表した。昨年4月25日、僕はヴァラジディンで行われたギリシャとの親善試合を観戦した。これはシュケルが初めてスタメンを外され、彼のトレードマークである「9」ではなくて背番号「15」を付けた試合である。0-2で負けている状態にて61分に途中交替出場。ヨジッチの指示にてミッドフィルダーでプレーしたのだが、巧みなゲームメイクと統率能力を見せて2-2に追いつき、観客からは「ブラボー、シュケル!」の声が飛んだものだった。しかし彼はこの試合後、MF起用を本意に思わないコメントを残す。ラトビア戦、スコットランド戦も似たようなポジションで起用されたのだが、シュケル同様に"プレーメーカーとしての"プロシネツキの限界が見えてきた今、彼をMFとして完全説得させるタイミングが来た。ブラジェヴィッチ前代表監督も先のインタビュー取材で、「私はシュケルはまだまだ代表で活躍出来る余地かあると思っている。それはトップではなくて、少し引いた位置でのプレーだ」とコメントしている。13日のフライブルグ戦でリーグ戦通算200ゴールを決めて幾らかご機嫌なシュケルも「何も問題は無い。MFとしての起用がFW起用での私よりも悪いわけでは無い。それに最初から2,3人の相手の注意を逸らすことが出来るだろう」と受け入れ姿勢を見せた。

 ヨジッチは代表メンバー発表後、これまた怪我人続出に泣かされることになる。選手達は14日にザグレブで集合したのだが、同日にFAカップ準決勝を戦ったアレン・ボクシッチとマリオ・スタニッチが共に怪我を負って帰国は見送り。代りにハイドゥクのMFイヴァン・ボシュニャクを召集した。この状況下にヨジッチは「残念ながら悪魔が眠ることは無い。まずトゥドールとシミッチというディフェンスの二人が欠け、今はボクシッチとスタニッチという攻撃の両人を失った。しかし我々の最も弱い部分である中盤に関しては選手が残っている」と望みを残す。ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下BiH)との戦いに関しては、「スロベニア戦と比較すれば、全てにおいて違ってくるだろう。BiHは後方が薄い分、(スロベニア戦のように)60回ものファウルが起こることは無い。したがって両者にとって楽にプレー出来るだろう。プレッシャーとゴールに我々は向って行く。ブラジュ・スリシュコヴィッチBiH監督率いる中盤と攻撃陣はかなり危険ではあるが。」 一方でスリシュコヴィッチ監督は「もし我々はクオリティを持ってプレーするならば、素晴らしいプレゼンテーションを提供することが出来る。常に特別な何かを作り出し、どの相手も驚かせる選手を4,5人持っている。サリハミジッチであり、バルバレス、ボリッチ、トピッチ、ピピリッツァらである。ザグレブで成功すればBiHの国民を確実に熱狂させるだろう。先のマケドニア戦(結果4-4)の前半の時のように、プレーにおいて実力を証明していく」と語った。

 試合当日、いつものようにSportske Novosti紙を購入。トップ紙面に掲載された予想フォーメーションの形を見て僕は仰天した。2-4-2-2。ツーバックなどクライフ時代のバルセロナ以来、耳にしたことが無い。ヨジッチは語る。「ジブコヴィッチとヤルニはセンターの位置まで押し上げ、彼らは高い位置で最初の壁とならなくてはならない。個人間で異なるのは明らかで、だからこそ私の要求も違ってくる。この二人が前へと上がったことで、トマスとソルドが彼らの後方をカバーすることになる。」 ロベルト・コバチとヨシップ・シムニッチは対人に強いとは言え、付け焼刃的なシステムではBiHの攻撃を封じ切れないだろう。"追い込まれている"というイメージを拭い切れないヨジッチの決断を信用出来ず、僕はこの日、クラディオニッツァ(スポーツくじ)でBiHの勝利に賭けたのだった。

【写真:整列するスターティングメンバー】
 この日は朝から雨が降りしきり、屋根の無いマクシミール・スタジアムまで濡れに来る観客は極僅かであった。ゴール裏の電光掲示板の下に宿るBiHサポーターを含めて3000人ほど。バックスタンドのチケットはBBB(バッド・ブルー・ボーイズ/ディナモ・サポーター)の事務所にて無料で配られたにも関わらず、この観客動因の低さは如何に現代表への関心が低いかを物語るものだろう。試合中、最も声を出していたのは、ボシュニャクの地元ヴィンコブチからやってきたチバリア・ヴィンコブチのサポーター「ウルトラス」。スロベニア戦の時と同様に、BBBによるボスニア・サポーターへの襲撃が予想されたのだが、この沈滞ムードが逆に平和をもたらした。またクロアチアとBiHは2008年の欧州選手権開催地に立候補しており、「United in Football, United in Europa」と書かれたキャンペーンの横断幕がピッチに運び込まれ、入場した両チームの選手22人によって掲げられた。インフラの問題から開催地に選ばれる可能性は有り得ないだろうが、スロベニア戦とは違った友好的なムードに僕は幾らか安堵した。両国の国歌が流れたのち、この試合で代表キャップが50となったゴラン・ブラオヴィッチが特別表彰を受け、クロアチアの主将シュケルとBiHの主将ミルサド・ヒビッチがペナント交換する。右サイドに位置したクロアチアは綺麗に2-4-2-2の布陣が出来ていた。GKスティペ・プレティコサ、ツーバックは左にヨシップ・シムニッチ、右にロベルト・コバチ。その前列が左からロベルト・ヤルニ、スティエパン・トマス、ズボニミール・ソルド、ボリス・ジブコヴィッチ。攻撃的MFにダヴォール・シュケルとロベルト・プロシネツキが位置し、ツートップはイヴィツァ・オリッチとゴラン・ヴラオヴィッチ。一方、BiHは4-5-1。Gトミスラフ・ピピリツァ(エネルギー・コットブス所属)が怪我をしたためGKはアルミール・トリャ(チェリク・ゼニツァ)。DFラインは左からサシャ・パパッチ(カルンテン)、ムハメド・コンイッチ(コベントリー・シティ)、ミルサド・ヒビッチ(アトレティコ・マドリー)、サミール・ドゥロ(NKサラエボ)。ドイスボランチは右がブルノ・アクラポヴィッチ(エネルギー・コットブス)、左がネルミン・シャヴィッチ(NKザグレブ)。右ウィングがハサン・サリハミジッチ(バイエルン・ミュンヘン)、左ウィングがヴェディン・ムシッチ(コモ)。ワントップにエルヴィル・ボリッチ(ラージョ・バジェカーノ)、その引き気味にセルゲイ・バルバレス(HSV)だ。隣りに座るサラエボからのジャーナリストに「なぜエルヴィル・バリッチは代表に呼ばれないのか?」と尋ねたところ、スリュシュコヴィッチ監督はクラブでプレーしていない選手は代表でも起用しない主義とのことだ。18時。オリッチのキックオフでゲームはスタートした。

【写真:手前サイドで対峙するハリサミジッチとヤルニ】

 雨が本降りとなる中、クロアチアのイレブンは常にアグレッシブに戦い、何度も好機を作り出した。4分、プロシネツキが左サイドからオリッチへとパスを出し、彼のチーム初シュートはサイドネットに。その1分後にはシュケルから左スペースへと走り出すオリッチへとワンタッチでパスが出て、オリッチの折り返しをペナルティエリアへと飛び込んだシュケルがボレーシュートを試みる。GK正面だったが、これで一本も枠内シュートが無かったスロベニア戦を越えることが出来た。7分にはトマスが大きくサイドチェンジしたボールにシュケルがワンタッチで中へ、これにオリッチが飛び込むがGKと交錯。前半10分で三度の好機が生まれた。プロシネツキは中盤でフリーとなった分、シュケルは左右のスペースへと飛び出す。守勢に回ったとしてもオリッチが前線で激しいチェースを掛け、また三列目の4人がボールを持った選手を囲い込む。この列が突破されたとしても、一対一に強いコバチ弟とシムニッチが身体を張ってボールを奪いに行く。2-4-2-2は守備面においても予想以上に機能していた。12分、BiHが初のチャンスとしてムシッチの左クロスからバルバレスが頭で合わせに行くも届かず。BiHはボールを持ってからの連動性が無く、パスの出し所に困るケースがしばしば。17分、カウンターからプロシネツキが右のヴラオヴィッチへパス。彼はDFを縦に交わしてシュートを放つも角度が無かった分、ポストから逸れてしまった。この時間帯からプロシネツキの球離れの遅さが目立ち、ボスニアは最終ラインを上げることで、オリッチ、ブラオヴィッチ、シュケルが矢継ぎ早にオフサイドトラップに引っ掛かる。事実、そのうち幾つかは誤審であったのだが、試合を通じて13回のオフサイドは多過ぎた。またヤルニも左サイドを駆け上がることは無い分、何度もアーリークロスを狙うがことごとくオフサイドとなる。26分、ヤルニは左でフリーとなったにも関わらずクロスボールをまともに上げられない。スロベニア戦ではW杯仕様のボールが扱い辛いと責任逃れをしていたが、試合感の無さを明らかに露呈した。

【写真:ヴラオヴィッチに指示するシュケル】
 その代りにシュケルがFWとのリンク役となり、27分にはDFにクリアされるものの左から好クロスを放り込む。逆に31分、プロシネツキがボールを奪われ、BiHのカウンター。ボリッチの右からのシュートはジブコヴィッチがクリア。この直後のCK失敗から逆にクロアチアがカウンターを仕掛け、ボールはシュケルからオリッチへ。オリッチは持ち味である爆発力と馬力を活かしてドリブルでDFを抜き、ペナルティエリアでGKと向かい合うもシュートは打たずに右のヴラオヴィッチへ。ヴラオヴィッチのシュートはGKに防がれ、最大のチャンスをみすみす逃してしまった。前半最後の10分間は共に好機を迎える。35分、サイドチェンジからサリハミジッチが右から放ったミドルシュートはバーの上に。36分、プロシネツキから右のシュケルへ。ループシュートでGKの頭上を狙うがDFがクリア。その後のショートコーナーからはシュケルがドリブルを加え、クロスを入れるが誰にも届かず。40分、サリハミジッチが右からドリブルし、ペナルティエリアのボリッチにパスを通そうとするがシムニッチが足を伸ばしてクリアする。その直後のカウンターで、再びシュケルからダッシュするオリッチへ縦一本のスルーパス。ピッチが滑る分ボールは幾分と跳ね、GKトリャが飛び出して間一髪クリア。しかしこれが学習効果を生んだ。44分、シュケルから浮き球で縦パスが出て、これにオリッチがDFの裏へと飛び出す。今度は足元にボールを収め、ドリブルを加えてGKと一対一の形を作り、フェイントでGKを右へと交わしてから冷静にシュートを放り込んだ。ブルガリア戦以来、224分間の沈黙を破る2002年のクロアチア代表初ゴールだ。オリッチ自身も代表初ゴールに歓喜、ユニフォームの裾を頭へと被せたのち、ガッツポーズをして膝からピッチへと滑り込んだ。そしてシュケルと抱き合う。これは「オリッチ−シュケル」という新たなホットラインが誕生した瞬間であった。同時にヨジッチが苦痛なプレッシャーから逃れた瞬間でもあったのだ。

 

  
【シュート体勢に入るオリッチ】

  【フェイントでGKを交わし、ゴール!】

 
【代表初ゴールに喜ぶオリッチ】   【アシストのシュケルと抱きつく】

 

【写真:2点目のPKを決めるシュケル】
 後半頭からヨジッチは4選手を交代させたものの、ブルガリア戦、スロベニア戦の時のようにシステムまで変更することは無かった。引き続き2-4-2-2の陣形は維持され、ヤルニからアンソニー・シェーリッチへ、オリッチからダヴォール・ヴグリネツへ、プロシネツキからはニコ・コバチへと入れ替わった。48分、左サイドからヴグリネツ、シュケルと渡り、ヴラオヴィッチがシュートを狙うが打ち切れず。51分、ヴラオヴィッチが左から内へとドリブルし、ペナルティエリア手前からシュートを放つがバーの上に。しかし直後の52分、トマスがパス・アンド・ゴーでヴラオヴィッチの浮き球パスをペナルティエリアで再び貰い、そのトマスにGKトリャが足を掛けてPK。これをシュケルがGKの右に放り込んで2-0。シュケルはバックスタンドの観客に向い、何度もコールを呼ぶ仕草をした。後半に入ってからというものボランチのソルドとトマスは頻繁に攻撃参加するようになる。また怪我から復帰して久し振りの出場となるコバチ兄もまずまずの出来。54分、右からヴグリネツがドリブルを加えてミドルシュートするが球威は弱くGKの腕元に。56分、サリハミジッチが低い弾道のミドルシュートを放ち、これがBiH初の枠内シュートとなるがプレティコサの正面へ。59分、右からシュケルがクロス、クリア後のこぼれ球をソルドがミドルシュートするがバーの上へ。60分、GKがプレティコサからトミスラフ・ブティナへ、またヴラオヴィッチに代えてミラン・ラパイッチがピッチへ。BBB達が溺愛するブティナには「ブティナ、スティスニ!!(前へと上がれ!!)」との声援が飛ぶ。63分、左サイドからのラパイッチのクロスにシムニッチがヘディングで合わせるも、GKトリャがラインを割る直前でボールを掻き出す。65分には再びラパイッチの左クロスにシュケルがフリーでボレーシュートするが、ボールバーの上に。ラパイッチはスピードと変化の大きいクロスボールで充分に持ち味を出していた。BiHは68分、ムシッチが右サイドからミドルシュートを放つものの、弾道はわずか10cmほど枠の右上を逸れてしまう。75分、立役者のシュケルが交替、拍手と共に代りに入ったイヴァン・ボシュニャクに対し、BBBは大ブーイング。10日前のハイドゥクvs.ディナモ戦で、ボシュニャクはシュミレーション気味にペナルティエリアで倒れ、疑惑のPKを得た経緯があるからだ。一方で故郷ヴィンコヴチから来たウルトラスは大声援を送る。76分、カウンターからラパイッチが右のヴグリネツに好パスを通すが、ヴグリネツのシュートはGKがパンチング。80分、再びヴグリネツがラパイッチとのワンツーで絶好のシュートチャンスを迎えるもボールは右へ。86分、今度はヴグリネツを噛ませたワンツーでラパイッチがシュートするがGK正面。88分、ラパイッチの右CKからコバチ兄が中へと折り返し、ヴグリネツがシュートチャンスを迎えるも打ち切れず。90分にもヴグリネツはミドルシュートを枠の右へと外す。ロスタイム2分間を終え、タイムアップ。ゲームを通してヴァトレニはアトラクティブなサッカーを続けることが出来た。消え掛けていた炎は雨で掻き消されることなく、再び煌煌と燃え始めたのだ。 

【写真:記者会見でのミルコ・ヨジッチ】
  記者会見に現れたヨジッチは雨で髪の毛を濡らしていたものの、圧力からの解放感からか晴れ晴れとした笑顔をしていた。憮然としたスリシュコヴィッチ監督にボスニアのメディアから幾つも厳しい質問が飛ぶのだが、それにフォローを入れる余裕すら見せた。先にコメントしたスリシュコヴィッチは「試合は9月から始まる欧州選手権予選のテストと判断している。今年のヴァトレニの二試合スコアレスドローという結果に騙されたわけではない。クロアチアがヨーロッパで質の高い代表の一つであり、明らかに危険なチームとなるものと意識している。それはレギュラーの4人が欠けていたにも関わらずだ。敗戦すれば満足出来るはずが無い。クロアチアが再びワールドカップで結果を残すことを望んでいる。」 続いてヨジッチはこう語る。「試合を通してファウルが30回前後ということで、プレーの構築と勝利を可能にした。BiH相手に充分に価値を証明し、こちらの魅力を見せつけた。我々はディフェンスもしっかりしていたし、中盤でのパスプレーにおいても充分にオーガナイズしていた。攻撃に関してもシュートへの意識があった。実際に何度も素晴らしいシュートを放ったが、多分、ピッチのコンデションが悪影響した。要求するとしたら正確性のあるプレーだろう。スリシュコヴィッチが言及した4人は欠けていたものの、遜色することの無い代りの選手達がいる。特にオリッチは危険性を漂わせたし、シムニッチは正確にプレーし、ニコ・コバチは単純性だけが欠けていたがチームへと戻ってきた。我々はもっと良くプレー出来るし、プレーせねばならない。これが限界では無い。今の時期にスペクタクルなフォームを期待しておらず、6月の日本でフォームが維持出来ることが願わしい。これまでシュケルを無理して使っていたということで私は批判されてきたが、今日のようなシュケルを待って迎え入れた今となってはどう批判するというのだ。選手達は何をすべきか解っており、今は一つの段階を指し示した。」
 MFとして生まれ変わったシュケルは「この成功がワールドカップ前の雰囲気にとっては重要となる。我々はもっとゴールを決めることが出来たが、雨が邪魔した。このような天候の下、マクシミールで声援を送ってくれた観客に感謝したい。ワールドカップではクロアチア国民にサッカーの完全なる楽しみを提供したい。」と。またレギュラーポジションを確定させたオリッチは「勝利とゴールのお陰で非常に幸せだ。我々が正しい道の上にいることを信じている。ハンガリー戦でも新たなゴールを決めることを望み、ワールドカップでもゴールを決め続けたい。」とコメント。またシュケルのMF転向は私がヨジッチに助言したと言い張るミロスラフ・ブラジェヴィッチ前監督は「おめでとう、ヨジッチ。この試合はワールドカップで我々が最高の結果を希望出来ることを差し示した。シュケルに関して私は怒っている。なぜなら私の下では決してこんな良いプレーをしなかったからだ。オリッチはヨーロッパのセンターフォワードの中でも最高の一人であることを差し示した。彼にボクシッチが加わった時、誰が止めることが出来るというのだ。シュケルとプロシネツキが彼らを真珠で養っていく(好パスを送り続ける)と尚更だ。」と語る。
 しかしクロアチアの名将の一人オットー・バリッチ(現ザルツブルグ・ディレクター)はこう指摘する。「シュケルはオリッチへのラストパスを含め多くの素晴らしいプレーを提供したが、次の試合でも同様とは限らない。BiHの選手達は彼にスペースを与え過ぎた。時間も空間も与えないポール・インスのような選手と対峙した時に、何が起こせるのか疑問だ。今日のヨジッチは素晴らしくチームを配置したが、私にはプロシネツキとシュケルが共存出来ないと考える。一人だけがプレーする必要があるだろう。BiH戦では両者とも良かったのは事実だが、より強い相手との試合でも彼らが同様にプレー出来ることは疑わしい。」

 今回のシステムが得点力不足という批判凌ぎのためだけに終えるには惜しすぎる。「2-4-2-2」はこれまで代表が抱えていたバランスの悪さという問題点を上手く解決出来そうだ。守勢に回る時はボランチの一人もしくはMFの両翼を最終ラインへと下げれば良いわけだし、とかく今のクロアチア代表に必要なのは攻撃的かつアグレッシブな姿勢であった。多少のリスクを抱えた方が、BiH戦のようにベテランを含めた選手個々に緊張感と集中力が伴うだろう。また「シュケルのMF起用」を始めとして、持ち駒の個性を当てはめることも出来る。ツートップにはオリッチとボクシッチ、それにシュケルが背後から絡めば旧タンデムと新ホットラインを同時に活かせるはずだ。プロシネツキが不調ならバランス感あるコバチ兄を使えば良い。ボランチにはトマス(orソルド)とトゥドール。左右のヤルニ、ジブコヴィッチは守備7割で働けば良く、両者の代りにシミッチ(orトマス)をどちらに置いても問題は無いだろう。またストッパーとしての能力において、シムニッチはシミッチを上回る。よってツーバックはシムニッチとコバチ弟。GKは好みはあるものの、僕はプレティコサよりブティナの方に信頼感を持っている。ウグリネツ、ラパイッチといった攻撃的オプションがあり、これにもう一枚加えるとしたら復活の兆しがあるシルビオ・マリッチ、もしくは一発屋的なトミスラフ・マリッチか。残るテストマッチは5月8日ハンガリー戦の1試合。今回、BiH戦で見せたヨジッチの決断は代表における「ビッグバン」であった。それは雨中から始まった革新的かつ新たな方向性であり、宇宙のように膨張すればと期待している。

 

[参考資料] ボスニア・ヘルツェゴビナ戦における選手採点

position player play-time Vecernjii-List Jutarnji-List Spotske Novosti 長束
GK 1.Stipe Pletikosa 60min 6.5 6.5
DF 5.Robert Kovac 90min 6.5 6.5
DF 5.Josip Simunic 90min 6.5
MF 2.Boris Zivkovic 78min
MF 3.Robert Jarni 45min
MF 4.Zvonimir Soldo 90min 6.5 6.5
MF 7.Stjepan Tomas 90min 6.5
MF 8.Robert Prosinecki 45min 5.5
MF 9.Davor Suker 72min 7.5 7.5
FW 10.Goran Vlaovic 60min 5.5
FW 11.Ivica Olic 45min 7.5 7.5
 

途中交替

         
GK 12.Tomislav Butina 30min
MF 13.Anthony Seric 45min
DF 14.Goran Sablic 12min
MF 15.Niko Kovac 45min
FW 16.Davor Vugrinec 45min
FW 17.Milan Rapaic 30min 5.5 6.5
FW 18.Ivan Bosnjak 18min
 

欠場

欠場理由

MF Mario Stanic  怪我
FW Alen Boksic  怪我

 

Friendly match

CROATIA vs. BOSNIA i HERCEGOVINA
2002.4.17  Maksimir Stadion in Zagreb

CROTIA BOSNIA i HERCEGOVINA
position name position name
GK 1. Stipe Pletikosa
[60'-12.Tomislav Butina]
GK 1.Almir Tolja
DF 5. Robert Kovac DF 2. Samir Duro
[71'-15. Almedin Hota]
DF 6. Josip Simunic DF 3. Sasa Papac
MF 2. Boris Zivkovic
[78'-14. Goran Sablic]
DF 4. Muhamed Konjic
MF 3. Robert Jarni
[46'-13. Anthony Seric]
DF 6. Mirsad Hibic
MF 4. Zvonimir Soldo MF 7. Bruno Akrapovic
[83'-13. Elvedin Beganovic]
MF 7. Stjepan Tomas MF 8. Nermin Sabic
[59'-16. Bulend Biscevic]
MF 8. Robert Prosinecki
[46'-15. Niko Kovac]
MF 10. Hasan Salihamidzic
[66'-18. Marko Topic]
MF 9. Davor Suker
[72'-18. Ivan Bosnjak]
MF 11. Vedin Music
FW 10. Goran Vlaovic
[60'-17. Milan Rapaic]
FW 7. Elvir Bolic
[76'-17. Samir Muratovic]
FW 11. Ivica Olic
[46'-16. Davor Vugrinec]
FW 9. Sergej Barbarez
[76'-14. Miro Katic]
COACH Mirko Jozic COACH Blaz Sliskovic
CROATIA 2−0 BOSNIA i HERCEGOVINA
44min.  Ivica Olic
52min.  Davor Suker (PK)

ホームページ掲載の記事・写真などの無断転載を禁じます。全ての著作権は長束恭行に属します。

現地発!! クロアチア・サッカーレポートに戻る