現地発、クロアチア・サッカー報告(9)

Idemo na rizu!!〜熱烈サポーターW杯観戦計画


【写真:毎週土曜日はプレステの"実況ウィニングイレブン"大会が仲間内
開かれる。左が僕。勿論、中にはフランス大会に行ったメンバーもいる。】

 12月1日、プサンでワールドカップ本大会の抽選会が行われ、クロアチアはG組でイタリア、メキシコ、エクアドルと同組となった。4年前のマルセイユでの抽選会、僕は奇遇にも会場のベロドローム・スタジアムに在席し、日本と同組になった瞬間、クロアチアを応援することを再確認したものだ。しかし、今回は日本とだけは対戦を避けて欲しかった。あの狂った状況を再び味わうのは御免なのと、日本が敵国となった場合にクロアチアでの生活にも支障をきたすと考えたからである。あと一つ密かな願いがあった。予選ラウンドは韓国でやって欲しいということ。クロアチアの友人達の中には僕をアテにして日本行きを考えている者もいて、予選が韓国ならば断り易いと考えたからだ。現在通っている語学学校は6月15日まで講義が行われる。また僕自身も成金趣味のワールドカップ観戦に執着心は無い。ザグレブの広場に設置された大画面を前にし、クロアチアだけのサポーターに囲まれて応援した方が価値ある体験だと考えていた。よって僕はクロアチアの「TST-7F」の権利を持っていたものの払い込みはしなかった。プサンでの抽選の結果、日本との同グループからは逃れた、しかし予選は日本ラウンド。それも新潟→茨城→横浜という移動距離に恵まれた日程だ。うーむ....。しかしいざ蓋を開けてみると状況は異なっていた。日本旅行は高嶺の花であるということはザグレブ通信「クロアチアから日本に行こう!?」でも紹介したが、冷静に考えてワールドカップ観戦に大金を費やすほどの裕福なクロアチア人などそうそう居ないのが現実なのである。4年前のフランスを経験した友人達ですら「行きたいけど、やっぱり飛行機代すら捻出が難しいから諦めるよ」とあっさり白旗を挙げた状態。ワールドカップの最終予選・対ベルギー戦の時に「Idemo na rizu!!(お米の国に行こう!!)」という垂れ幕が掲げられ、メディアやヨジッチ監督もこの言葉を好んで使った。しかし、極東の「日出る国」のお米を食べられるクロアチア人は僅かであろう。

【写真:コンパスのウィンドウに張られた広告】

 そんな中、街中でワールドカップ観戦ツアーの広告を目にした。老舗の旅行代理店コンパス(KOMPAS)は6つのプログラムを主催。予選三試合を観戦する12泊15日のツアーは、6月1日にマレーシア航空でザグレブを発ち、6月16日に帰国。宿泊は全て東京の同じ三ツ星ホテルで、試合の行われる新潟・茨城・横浜まではミニバスを使用。しかし代金は一般的な年収とさほど変わらない26,700クーナ(1クーナ=16円換算。42万7200円)なのだ。また一試合のみの3泊5日のツアーは13,900クーナ(22万2400円)〜14,800クーナ(23万6800円)。二試合観戦の7泊10日のツアーが19,700クーナ(31万5200円)〜20,600クーナ(32万9600円)。これらにはチケット代金は含まれず、自分でクロアチア・サッカー協会を通して購入する必要がある(※もちろん日本在住の方は買えませんし、私も斡旋等はしてません。あしからず。)予約者はそういないだろうと思い、窓口で尋ねたところ、2月5日現在で約50人の申し込みがあるそうだ。一番人気はイタリア戦のみ3泊5日の14,300クーナ(22万8800円)。しかしこの参加者も言ってしまえば、金に余裕のある上級階級か中年層であって、幾分とお行儀の良いクロアチア人であろう。それ以外にやって来られるサポーターはアメリカやオーストラリアなどに移民し、中産階級以上の生活を送ることに成功したクロアチア人ぐらいだ。"一般的な"クロアチア・サポーターが極東の地を踏むのは皆無なのでは、と僕は予想していた。しかし、2月4日のクロアチアの日刊紙「Jutarnji-List」に衝撃の記事を発見した。「ザグレブのサポーター達は毎日お米一杯、ビール二本というトレーニングをしている。500ドルでワールドカップを体験し、ソウルでの準々決勝後にザグレブに帰ることを希望している」とのキャプション付きで、その壮大な計画が紙面に紹介されていた。


【写真:観戦旅行の高額さを伝える国内の紙面。
左下が今回翻訳したJutarnji-List紙】

 「日本でクロアチアを見るために何も我々を妨害することは出来ない。世界の端でさえ代表のために応援するだろう。これまで我々が逃した獲物はないよ。」−日本に行く約20人のサポーターの一人、トモはこう話す。極度に高い食事と飲み物のせいで、サポーター達は最も低い目標を設定し、こんな経験を重ねていた。
「我々は食事とビールからの習慣を絶っているところだ。一杯のお米と二本のビールでお腹いっぱいにならなくてはならない。旅の一ヶ月前から水を飲む習慣すら絶つだろう。なぜなら水にもお金が必要だからだ。」−こうトモは話す。

【フランス・ワールドカップへ行った    
友人のスナップ写真(提供:
LUPILLJUS)】

 日本において最も安いのはファーストフード店で食べることだ。とにかくクラブやキャバレーは避ける必要がある。芸者遊びや、キャバレーでは数時間で瓶ビール二本飲むだけで100ドル以上も払うことになるだろう。居酒屋(ろばた焼きor焼鳥屋)か赤提灯のついた屋台も良い決断だ。

「我々はフランスもイングランドもエストニアも体験した。日本も体験することになるだろう」
彼らは昔の過ちで日本入国を拒否されるのではという恐怖から苗字を隠している。理由は、クロアチア・サッカー協会が試合のチケットの購入者の全ての名前をクロアチア警察省に送らねばならないからだ。その後に確認が続く。警察省の担当者はクロアチア国内のサポーターの情報を求めていた。それは人数や行動傾向、もしくは明らかな名前といったものである。警察省はリストを送ったが、日本と韓国の警察がそれをどう取り扱うかは解らない。警察省の広報アシスタント、ニナ・ジャクリンの言葉によると現在、クロアチア人の日本入国は誰一人も拒まれてないそうだ。

【写真:同じく友人提供のスナップ写真。
フランスではヒッチハイクで移動した。(
LUPILLJUS)】
 サポーター達は既に航空券を購入している。リュブリャナから東京までの往復切符に6000クーナ(96,000円)を支払った。サッカーへの愛情は2年間の分割払いとなる。「旅の支払いは友人達のクレジットカードを利用した。試合のチケットについてはスポンサーを探している。ロゴタイプを運ぶことでスポンサーに報いるつもりだ」−トモは語る。日本と韓国の20日間で約500ドル(約65,000円)があれば十分だと彼らは予測している。
 でも彼らのうちに幾人かは列車で行くことに決めている。シベリア鉄道の旅はウラジオストクまで900クーナ(14,400円)で、所要152時間、9300kmの長さだ。そこから日本までは飛行機を使う。島における最初の計画は新潟まで到着することだ。そこでは6月3日に最初の試合(メキシコ戦)が行われる。最も単純な方法は上越新幹線で、東京から新潟まで300kmをちょうど100分で運行する。しかしこの超特急は高すぎる。よって最も安い鈍行で行くのが良いだろう。最も賢いのは夜行バスで行くことで、これならば宿泊という問題を解決する。東京から新潟までは関越自動車道を使えば車で4時間で行ける。「(宿泊に関しては)我々をもてなしてくれるようなキリスト教徒を見つけることを希望している。もしくはオーストラリアからの人達の助けを希望する。駄目だったら寝袋を持っていくよ。」−フラニャは語る。

 決勝トーナメントに進むという予想が実現すれば、サポーター達は韓国へと移動することになるだろう。そこでは安い食料品と共に、住居という新たな可能性が開かれる。多くの韓国人が外国人を受け入れるために自分の家を25ドルの代金で用意してくれている。「我々はクロアチアが韓国へ、準々決勝まで進むことを考慮に入れている。そのため、ソウルからの帰りの切符を予約した」−ザグレブからのサポーター達は語る。もし全てがプラン通り行くならば、彼らの帰国は6月20日だ。

 日本へ行くための涙ぐましい忍耐力と、代表への底知れぬ愛情。それでも一日二本のビールは欠かせない憎めなさ。クロアチア代表が決勝へとコマを進めることが出来たら奇跡だろうが、このサポーター達がもし決勝の地、横浜国際競技場へと姿を現したならば、代表以上の奇跡が起きたに違いない。
 実はこの記事が最初にアップした3週間後、僕はNKザグレブのスタジアムで2年前にスロバキアのU-21欧州選手権で知合ったサポーターと偶然に会ったのだが、彼等がこのインタビューに応えたサポーターグループだと判明した。彼等は2年前と変わらず、友好的で義理堅い若者達だ。以来、僕は彼等の日本滞在計画のために情報収集している。「クロアチア代表が火星で試合をしたとしても、俺達は火星に行くつもりだ」−そう語る彼等の現地滞在費は一人当り250ユーロ。「まずザグレブに帰ったら空腹感から脱出するために、家へと戻ったらまず腹いっぱい何処かで食事をするだろう」−ある程度の日本滞在費を試算をしたあとにフラニョはそう語った。彼等が日本から帰ってきて、「日本人は俺達に親切にしてくれたよ」との言葉が聞けたなら、日本人として生まれて良かったと心から感じる。いずれ第二弾として、彼等のストレートな意見と奮闘振りを書くつもりである。

 

クロアチア発日本旅行の豆情報(Jutarnji-List紙から)
日本までの最も安い手段は3900クーナ

東京までの旅で最も早いのは飛行機だ。ミュンヘンもしくはフランクフルト経由でのザグレブ発往復切符は約7200クーナ(13万6800円)。それは週末以外で帰りの日付を決めておかねばならないことが条件だ(FIXチケット)。リュブリャナ発だと1000クーナ(1万6000円)ほど安い。最も手頃なのはウラジオストクまでのヒッチハイクだが、これは遠い。ザグレブからモスクワを越えてウラジオストクまでの列車は約1900クーナ(3万400円)。ウラジオストクからクロアチアの最初の試合が行われる新潟まで飛行機で旅した場合、ウラジオストク・アジア航空のチケットは約2000クーナ(3万2000円)である。
サポーターのための日本語辞書

「jishin」…potres
「Kuroatia no taishikan ni renraku shinakereba narimasen.」…Moram kontaktirati s hrvatskom ambasadom.
「Boku niwa biru o kudasai.」…Pivo za mene, Morim.
「Ima nanji desu ka?」…Koliko je sati?
「Ikura desu ka?」…Koliko to kosta?
「Domo」…Hvala lijepa.
「Naifu to hoku motte kite kudasai masu ka?」…Mozete li mi donijeti noz i vilicu, molim vas?
「Kissaten」…kafic

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