現地発、クロアチア・サッカー報告(8)
クロアチア・リーグ2001/02
前半戦総括
順延されていた「ハイドゥク・スプリトvs.オシエク」が12月5日に取り行われたのを最後に、クロアチア・リーグはウィンターブレークに入った。今年の9月23日に現地生活を始めて以来、カップ戦も含めて21試合をスタジアム観戦。取り続けてきたメモと資料を使い、今回は前半戦の各チームの戦い振りを総括・分析しようと思う(写真も全て自分で撮影)。NKザグレブ、ヴァルテクス・ヴァラジディン、ハイドゥク・スプリト、ディナモ・ザグレブの上位4チームは重点的に取上げ、5位〜8位は簡単にチーム紹介。9位〜16位に関しては割愛させてもらう。
【クロアチア1部リーグのロゴマーク】
まず今季のレギュレーションについて説明しよう。昨季まで12クラブで構成されていたクロアチア一部リーグは今季から16クラブへと拡大した。協会がリーグ改革検討を始めた時点からこの路線は批判を浴び、すったもんだの挙句に決定したのだが、実現してみるとほころびだらけ。2部から上位4チームが昇格し、1部最下位と2部5位のクラブで入替戦を行うはずが、2部3位のクロアチア・セスベッテがディナモとの姉妹関係から1部昇格を拒否、6位のベリシュツェは昇格条件に満たないために参戦を見送られる。結局は1部最下位マルソニアと2部7位のソリン・グラジャと戦い、これに勝利したマルソニアが1部に留まり、2部からはカメン・イングラッド、ポモラッツ、ザダール、トシュク・トポロヴェッツの4チームが加わった。7月29日に2001/2002シーズンが開幕。しかし開幕二日前になって2002/2003シーズンから再度12クラブに戻ることをクロアチア・サッカー協会が決定・発表する。何という計画性の無さであろうか。これにより来季は12〜14位の4クラブが2部降格。10位と11位は南・西地区と北・東地区に分かれた2部リーグの首位2チームと入替戦を戦うという、弱小クラブには戦々恐々のシーズンとなった。また、今季からチャンピオンズリーグに出場枠も「2」から「1」に減らされ、優勝チームのみが予備選2回戦から戦うことになる。レギュレーションは昨年の二段階形式(12チーム総当り22節+決勝&降格リーグ10節)から、16チーム総当り30節へと変更されている。前半戦の結果は以下の通りである。
| 順位 | クラブ名 [昨季順位] | 試合 | 勝 | 分 | 負 | 得点:失点 | 勝点 | ゾーン |
| 1 | ZAGREB [6] | 18 | 14 | 3 | 1 | 47:15 | 45 | CL |
| 2 | VARTEKS VARAZDIN [4] | 18 | 12 | 3 | 3 | 40:20 | 39 | UEFA |
| 3 | HAJDUK SPLIT [1] | 18 | 12 | 2 | 4 | 38:22 | 38 | UEFA |
| 4 | DINAMO ZAGREB [2] | 18 | 11 | 3 | 4 | 30:19 | 36 | ITC |
| 5 | RIJEKA [10] | 18 | 9 | 3 | 6 | 27:20 | 30 | ITC |
| 6 | SLAVEN BELUPO [5] | 18 | 6 | 7 | 5 | 21:20 | 25 | |
| 7 | CAKOVEC [8] | 18 | 7 | 4 | 7 | 22:24 | 25 | |
| 8 | HRVATSKI DRAGOVOLJAC [11] | 18 | 6 | 5 | 7 | 22:26 | 23 | |
| 9 | POMORAC [2部・2位] | 18 | 6 | 3 | 9 | 22:25 | 21 | |
| 10 | OSIJEK [3] | 18 | 6 | 2 | 10 | 24:29 | 20 | |
| 11 | MARSONIA [12] | 18 | 6 | 2 | 10 | 20:25 | 10 | 入替戦 |
| 12 | ZADAR [2部・4位] | 18 | 4 | 6 | 8 | 21:32 | 18 | 入替戦 |
| 13 | KAMEN INGRAD [2部・1位] | 18 | 4 | 5 | 9 | 15:27 | 17 | 降格 |
| 14 | SIBENIK [7] | 18 | 4 | 5 | 9 | 12:25 | 17 | 降格 |
| 15 | CIBALIA [8] | 18 | 4 | 3 | 11 | 17:28 | 15 | 降格 |
| 16 | TSK TOPOLOVEC [2部・5位] | 18 | 4 | 2 | 12 | 26:47 | 14 | 降格 |
CL…チャンピオンズリーグ、UEFA…UEFAカップ、ITC…インタートトカップ |
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まずは首位のNKザグレブから。「前半戦の戦い」「選手」「戦術」「後半戦の展望」の4項目に分けて、上位4チームを分析しよう。
| 1位 NKザグレブ (NK ZAGREB) | ![]() |
| 18戦14勝3分1敗 得点47・失点15 勝点45 |
[基本布陣:4-2-3-1]
[得点] [監督] |
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〔前半戦の戦い〕
【写真:新戦術でリーグを席巻する
ズラトコ・クラニチャール監督】
現地発の第1弾レポート「ピッチの上の詩人達」でも紹介したが、知将ズラトコ・クラニチャール監督の下、クロアチアでは初めてとなる4-2-3-1システムを導入し、クロアチアリーグ前半の台風の目となった。得点47はリーグ最高で、失点15はリーグ最小。ディナモ・ザクレブの陰に隠れ続けていたこの小クラブは、今年のオフに戦術に見合った補強を重ね、クラニチャールは「イマジネーション」と「コレクティブ」という相反する理念を融合させた攻撃的サッカーを生み出した。これまでのクロアチア・リーグで存在しなかった痛快なサッカーは四方から大絶賛を浴び、「NKザグレブこそリーグを制覇すべきだ」とメディアは口を揃え、対戦相手の監督は「彼等こそ優勝候補の筆頭たと思う」と白旗を挙げる。得点は「地獄のダイヤモンド」と呼ばれるイビツァ・オリッチ、アドミール・ハサンチッチ、アントニオ・フラニャ、クルノスラフ・ロヴレクの前線の4人に集中する。よって、誰か一人でも欠けたら勢いは止まると思われた。まずは右ウィンガーのロヴレクが怪我で戦線離脱。しかし彼の穴は今季マルソニアから移籍したベルナルト・ブルニッチが埋めた。また前半戦のベストバウト・第13節ディナモ戦においてフラニャが怪我を負ったことで、クラニチャールは右SBのヨシップ・ブラトをボランチへと上げた4-1-3-2システムも併用。第15節のカメン・イングラッド戦では、オリッチが前半20分に脳震盪で退場したこともあって初の敗北を喫する。オリッチが欠場した翌節のフルヴァツキ・トラゴヴォリャッツ戦が最大の山場となったが、控えのフルヴォイエ・シュトロクが貴重なゴールを挙げてチームを救った。そして事実上の首位決戦となった第18節のハイドゥク戦を迎える。押された時間はあったものの、アウェーの地ににて彼ら本来の攻撃的サッカーを展開、MFダリヴォール・ポルドルガチュとDFマリオ・オシボフのゴールで2-0の勝利を収める。クラニチャールの哲学を叩き込まれた選手達は自らのサッカーに自信と誇りを感じており、事実、試合を重ねる度に内容が洗練されつつある。2位のヴァルテクスに勝点差6を付けて「秋の王者(Jesenski
prvak)」に輝いたことは妥当な結果なのかもしれない。
〔選手〕
【写真:得点王でアシスト王の
イビツァ・オリッチ】
現在リーグ最高の選手とされるFW、イビツァ・オリッチ無くしてこのチームは語れない。多少のムラっ気はあるが、スピードのドリブル、簡単に倒れないフィジカルの強さ、そして両足からの決定力だけでなくアシストも配給できる点は特筆すべきだ。前半戦で彼は得点王(16)に加え、アシスト王(10)にも輝いている。左サイドのウィンガー、アントニオ・フラニャの変幻自在なドリブルもこのチームのアクセントだ。またトップ下のアドミール・ハサンチッチはFWが本職だけに、ここぞという決定力は素晴らしい。中盤のゲームメークは左利きのテクニシャン、イブラヒム・ドゥロ。熱血漢である主将ヨシップ・ブラトは左右のサイドバックとボランチをこなせ、ヴェドラン・イェシェ、ゴラン・スタブレブスキ、マリオ・オシボフといったセンターバックは高いラインを築くものの、一対一に強くてカウンターの危険を充分に回避出来る。GKのヴラジミール・ヴァシーリもディナモ時代にくすぶっていた実力を謳歌している。また心配された攻撃面のバックアップ選手も、MFフルヴォイエ・シュトロク、MFベルナルト・ブルニッチが遜色無い働きを見せている。
〔戦術〕
クラニチャールの攻撃的哲学のもと、4-2-3-1での全員攻撃・全員守備が基本。中盤でのボールタッチは少なく、速い展開でボールを回し、相手に隙が出たところで一気に攻め込む。両サイドバックは常にオーバーラップ状態で、最終ラインはハーフウェー近くまで上がる。とはいえ、空いたスペースは攻撃参加してない選手が埋めるといった約束事がきちんと守られている。カウンターのピンチに遭っても誰かが必ずシュートコースを遮ろうとし、その闘争心がリーグ最小失点に繋がった。前線は頻繁にポジションチェンジが行われ、コンビネーションも絶妙。しかし集中力が切れたり、ピッチコンデションか悪いと全く噛合わなくなることは問題だ。またポモラッツのような4バックのカウンターチーム相手にはサイドを思うように攻められず苦戦を強いられた。
〔後半戦の展望〕
ユベントスをはじめとする国外クラブの移籍が進められていたオリッチが今季末まで残留することが決定。ミロスラフ・マルチンコヴィッチ会長は既に来季のチャンピオンズ・リーグを視野に入れた補強を行い、オシエクから俊足FWのペタール・クルパン、またリエカからも代表歴のあるDFダミール・ミリノヴィッチを獲得。その一方で主力は誰一人放出させず秋から更に戦力アップ、初のリーグ優勝に向けて独走出来るはずだ。優勝経験の無いクラブだけに、リーグ終盤でのプレッシャーを乗り越えられるかが大きな鍵となるだろう。1998-99シーズンのリエカ、2000-01シーズンのオシエクの二の舞になるかならないかは、クラニチャール監督の舵取りに掛かっている。
| 2位 ヴァルテクス・ヴァラジディン (NK VARTEKS VARAZDIN) | ![]() |
| 18戦12勝3分3敗 得点40・失点22 勝点39 |
[基本布陣:3-5-2]
[得点] [監督] |
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〔前半戦の戦い〕
【写真:シュマイケルとペナント交換する
主将のミリエンコ・ムムレク】
司令塔ミリエンコ・ムムレクの復帰、FWサシャ・ビエラノヴィッチの急成長もあって、強豪相手でも勝利をもぎ取れるチームへと成長した。初戦のカメン・イングラッド戦は引き分けたものの、自慢の攻撃力でスタートダッシュに成功。大物食いを得意とし、第4節のハイドゥク戦ではムムレクのハットトリックもあって5-1と撃破。またUEFAカップ一回戦でもイングランドの名門アストン・ヴィラを葬り去るなど(詳しくは「計画されたアップセット」にて)、センセーショナルな結果を残した。ホームでは8勝1分とめっきり強いが、アウェーは苦手で4勝2分3敗。今季2部に昇格した田舎チーム、トシュク戦(第9節,1-4)とポモラッツ戦(第13節,1-2)を取りこぼしたのは痛い。またUEFAカップ二回戦においてもブロンビーをホームで3-1と勝っておきながら、アウェーで0-5と大敗を喫して敗退している。その一方でディナモに対しては滅法強く、第14節ではビエラノヴィッチの2ゴールで勝利、ディナモ相手に4連勝している。
〔選手〕
NKザクレブのゴールマシンがオリッチならば、ヴァルテクスのゴールマシンは同じく22歳のサシャ・ビエラノヴィッチだ。188cmの長身でヘディングに強いだけでなく、右足からの決定力、そしてグラウンダーのアーリークロスに合わせる技術も兼ね備える。オリッチと並ぶリーグ得点王(16点)だが、欧州カップ戦の7得点も含めれば今季最もゴールを挙げているFWである。またツートップを組むヴェルディン・カーリッチは経験豊富で、クロアチア代表の韓国遠征にも選出された。今季ディナモから復帰した司令塔ミリエンコ・ムムレクがチームをまとめ、両ウィングのシルベスタル・サボルチュキ、ダニエル・フルマンもサイドで質の高い動きを見せている。DFでは新加入のリベロのゴラン・グラニッチが統率力を備えている。
〔戦術〕
【写真:曲者的なFWヴェルディン・カーリッチ】
クロアチアにおいて典型的な3-5-2のフォーメーションを敷く。DFラインでボールを奪うと、ムムレクにボールを渡し、そこから左右のフルマン、サボルチュキへと展開。ビエラノヴィッチの頭に合わせてクロスボールを挙げるというのが必勝パターン。もしくはカーリッチ、デイヴィット・ムカイ、ムムレクの3人のパスワークで中央突破というのも一つの手である。カーリッチが神出鬼没なFWでケアをしずらく、それがビエラノヴィッチの得点能力を際立たせてるとも言えよう。ディフェンスはリベロのグラニッチ、左右のストッパーであるイヴァン・レジッチ、マティヤ・クリスティッチがハードマークを見せている。しかしながら3-5-2以外のバージョンを持ち合わせておらず、相手や試合展開によって戦術を変えられない点に適応力の低さを感じる。
〔後半戦の展望〕
大きな補強は無かったが経営面は安定しており、チーム内紛も少ないことから、後半戦においても安定した力を発揮出来るものと思われる。クラブと町の密着度も強く、きちんと市民の支援が得られているのも大きい。ただレギュラーとバックアップの選手の間に実力差があることから、核となる選手が怪我で離脱した場合に急降下してしまう可能性は否めない。クロアチア・カップでは準々決勝でハイドゥクを下し、NKザグレブも既に姿を消していることから、リーグ優勝は出来なくともクラブ創立70年目の記念の年に初タイトルを獲得するかもしれない。それは昨年に交通事故で亡くなったクラブ会長アンジェリコ・ヘリャノヴィッチへの大きな弔いとなるだろう。
| 3位 ハイドゥク・スプリト (HNK HAJDUK SPLIT) | ![]() |
| 18戦12勝2分4敗 得点38・失点20 勝点38 |
[基本布陣:3-4-1-2]
[得点] [監督] |
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〔前半戦の戦い〕
昨季、6シーズンぶりの優勝を果たしたハイドゥクは、ゾラン・ヴリッチ監督が勇退し、MFイヴァン・レコ、FWスタンコ・ブバロ、DFイゴール・ジュゼロフが国外移籍。ネナド・グラツァンが新監督に就任し、イゴール・シュティマッツ、アリョーシャ・アサノヴィッチ、スラヴェン・ビリッチといったハイドゥク出身の選手がフロント入りするなど新たな体制が築かれた(シュティマッツ、アサノヴィッチ[→引退]は選手としてもプレー)。最大の目標であったチャンピオンズ・リーグ本選出場を賭け、初戦のフェレンツェバロシュをPK戦で退けたものの、予備選3回戦においてマジョルカ相手に延長の末に敗退。そちらに気を取られている間に第3節ザグレブ戦、第4節ヴァルテクス戦で連敗してしまうが、第5節からは13節までは破竹の9連勝。第11節ではディナモを敵地マクシミールにて9年ぶりに勝利を収めた(詳しくは「120回目のフルヴァツキ・デルビ[試合編]」にて)。FWマテ・ビリッチがサラゴサに移籍したものの、新加入のドミトリー・ラドチェンコ、トミスラフ・エルチェグの2人のベテランFWもチームにフィット。しかし第14節のフルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ戦で引き分け、第15節のスラベン・ベルーポ戦に完敗したあとにグラツァン監督の身辺が騒がしくなり、11月21日のクロアチア・カップ準々決勝第1戦でヴァルテクスに1-3で敗れた直後にグラツァンは解任。スラヴェン・ビリッチが新監督に就く。解任事件の裏側にはシュティマッツを首謀者とした追放劇とされている。ビリッチはオシエク、リエカのアウェー2戦は退けたものの、NKザグレブとの首位決戦で敗れ、更に順延となっていたオシエク戦もビリッチの采配ミスで引き分けてしまった。
〔選手〕
【写真:極悪人イゴール・シュティマッツ】
ズボニミール・デラニャがリーグ優勝後に天狗になり過ぎたためか本調子では無く、エースとしての仕事をこなしてない。イヴァン・ボシュニャクも怪我がちで本来のキレを失っている。そんな中で復帰組のFWトミスラフ・エルチェグがベテランらしい働きをしている。中盤ではU-21代表のスルジャン・アンドリッチが今季からレギュラーに定着、ボール奪取能力、展開力、強烈な右足のシュートを兼ね備える。また中央もしくは左ウィングに入るマリオ・ツァレヴィッチ(アシストランク2位)、右ウィングのダリオ・スルナの19歳コンビもイキの良さを感じさせる。NKザグレブから獲得したフルヴォイエ・ヴェイッチもユーティリティなディフェンスのプレーヤーとして、ビリッチ監督になってから大きな信用を得ている。リベロには主将と幹部も兼ねるイゴール・シュティマッツ。ピッチ外では暴行事件や監督追放劇、スポーツくじでの八百長疑惑など遣りたい放題で、チャンピオンズ・リーグではマジョルカ戦後に相手選手へ暴行を働き、第2戦には出場出来なかった。代表の正GKでもあるスティペ・プレティコサは安定感が増した感がある。
〔戦術〕
昨季はヴリッチ前監督が中央にダブル司令塔を置いた攻撃的な3-4-1-2を構築して成功したのだが(詳しくは「Hajduk zivi vjecno!(4)」にて)、グラツァン監督も同システムを採用し、抜けた穴をアンドリッチ、スルナ、ツァレヴィッチといったユース組で埋めた。しかし中盤でゲームを作れたとしてもFWの決定力不足は致命的で、昨季終盤のような圧倒的な強さを感じさせなかった。よって得点のおおよそはセットプレーに限られた。言い換えれるとしたら、右足のアンドリッチ、左足のツァレヴィッチという非常に優れたキッカーを備えている。しかしながら、ビリッチ新監督になって4-4-2を採用して新路線を打ち出し、それが単なる付け焼刃に終っており、DF陣に混乱が見られた。このままでは個人技とセットプレー頼りのサッカーとなりそうだ。
〔後半戦の展望〕
【写真:昔の謙虚な青年に戻れるか、
FWズボニミール・デラニャ】
ビリッチ監督はリーグ最終戦となる対オシエク戦において、後半60分に3選手を同時に変えるというバクチを打ったが為に、75分にプレティコサが退場したのを受けてDFヴコヴィッチがGKを務めることとなり、最終的な結果は2-2のドロー。この試合をきっかけに「ビリッチ・監督不適格論」が涌き上がっており、今後も采配ミスをする度に"素人監督"としてわめき立てられることだろう。またチーム内にはシュティマッツという爆弾も抱えて、このまま空中分解する可能性も高い。補強面ではガンバ大阪からFWニーノ・ブーレを獲得。彼が日本同様の働きを見せれば、FW陣の得点力不足も解消出来る。各ポジションにタレントは揃っており、ビリッチが持論の4-4-2システムをきちんと確立出来れば、後半の巻き返しもあるだろう。
| 4位 ディナモ・ザクレブ (NK DINAMO ZAGREB) | ![]() |
| 18戦11勝3分3敗 得点30・失点19 勝点36 |
[基本布陣:4-4-2]
[得点] [監督] |
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〔前半戦の戦い〕
【写真:救世主となったイゴール・ツビタノヴィッチ】
前職がディナモ・ユースのコーチであるイリヤ・ロンチェレヴィッチ監督のもと、大胆な世代交替が進められている。「"ミウラ"の亡霊に悩まされたディナモ・ザグレブ"」と「120回目のフルヴァツキ・デルビ[データ編]」において、財政難に追い込まれているがため、自前のユースから引き上げらざる得ない状況については説明した。よってスターティング・メンバーの平均年齢は16クラブで最も若い。昨季のレギュラーだったトミスラフ・ショコタ、イゴール・ツビタノヴィッチ、ボシュコ・バラバンの3人のアタッカー全てを放出したものの、リーグ開幕から19歳のダリオ・ザホーラと17歳のニコ・クラニチャールが活躍。対戦相手に恵まれていたこともあったが、7節まで6勝1分のハイペースで勝ち進んだ。しかし8節でカメン・イングラッドに足元をすくわれて国内無敗記録は21でストップ。同時期にUEFAカップでもマッカビ・ハイファ相手に敗退してしまう。ザホーラが怪我で調子を落とすとチームはたちまち得点力不足へと陥り、第10節から14節までは泥沼状態(2分3敗)となった。「ディナモ危機説」が流れ始めた中、チームを救ったのがツビタノヴィッチだった。彼は給与の高さから昨季終了時で戦力外とされていたのだが、半年ぶりにチームに復帰、見事にチームの救世主となった。とりわけ第16節のトシュク戦では2ゴール1アシストの大活躍。ツビタノヴィッチ復帰後はカップ戦(対リエカ)も含めて6連勝と盛り返した。
〔選手〕
【写真:ドマゴイ・アブラモヴィッチに
もっと出場機会を与えるべきだ】
昨季は2部リーグで経験を積んだダリオ・ザホーラ、そして天才児ニコ・クラニチャールの二人のFWが前半戦を引っ張った。ミハエル・ミキッチの調子の波が激しくロンチェレヴィッチ監督を失望させたが、右MFにはユーティリティプレーヤーのイェルコ・レコが定着した。DFの駒は揃っており、セットプレーに強いゴシェ・セドロスキ、終盤は怪我をしたもののフィジカルに優れたダリオ・スモイエ、そして"新トゥドール"として期待される19歳のボシュトヤン・チェサールがいる。GKトミスラフ・ブティナもA代表に相応しい堅守を見せる。忘れてならないのは、ディナモに欠けていたゲームメイカーの役割をイゴール・ツビタノヴィッチが真っ当したことだ。しかしながら、MFトミスラフ・ゴンジッチ、FWドマゴイ・アブラモヴィッチといった才能ある若手に充分な機会が与えられないのは残念な状況といえる。
〔戦術〕
クロアチアでは先駆けて4-4-2システムを採用しており、守備は安定しているのの、NKザグレブのようなサイドバックの攻撃参加は少ない。 MFヴラジミール・ペトロヴィッチが左サイドに大きく張り、一見4-3-3とも取れるフォーメーションであるが、攻撃をまとめる選手が存在しなかった。上位3チームに大きく引き離された総得点(30)が如実にディナモの攻撃力不足を物語っている。司令塔のヤスミン・アギッチは決定的なラストパスを送るタイプでは無く、レナート・ピリポヴィッチ、レコは職人タイプなMFだけにクリエイティブな攻撃は見られなかった。それだけにツビタノヴィッチの復帰は大きい。しかしプレスキッカーが、ザホーラ、ツビタノヴィッチ、アギッチといったように左利きばかりというのはバランスの悪さを感じた。あと、ドリブルとスピードが武器のミキッチに決定力さえ備われば、彼が重要なオプションとなってくるだろう。
〔後半戦の展望〕
当初、残り12節で対抗馬として浮上してくるチームはディナモ・ザグレブだと予想していた。しかしツビタノヴィッチが条件面で折り合わずに退団。この冬に獲得したボスニア代表歴のあるFWエネス・メシャノヴィッチ、斜陽状態のシルビオ・マリッチがツビタノビッチ以上の働きを見せるとは思えない。フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツから獲得したスポメンコ・ボシュニャクは計算出来るMFだ。この移籍の差し引きがどのような結果へと転じるのか。たとえ今季のディナモが優勝出来ずに終ったとしても、若手達が得た経験は来季へと繋がることだろう。
5〜8位
| 5位 リエカ (HNK RIJEKA) | ![]() |
| 18戦9勝3分6敗 得点27・失点20 勝点30 |
昨季は10位と低迷したリエカだが、ハイドゥクを2度リーグ優勝に導き、代表ではヨジッチ監督の補佐を務める名将イヴァン・カタリニッチ監督のもとで脆弱な戦力ながら5位につけた。第5節から第14節からは土付かずの7勝2分で2番手グループに付けていたが、残りの4節で1分3敗と尻切れ状態に終った。フォーメーションは3-5-2。DF陣には代表経験のあるダミール・ミリノヴィッチ(→NKザグレブに移籍)、エルビス・ブライコヴィッチに加え、前U-21代表のアンドレ・ミヤトヴィッチ、ザグレブに移籍の話もあるスティエパン・スコチブシッチと駒が揃う。中盤にはゴラン・ブライコヴィッチを底にして、マリオ・メシュトロヴィッチがアシストを配給する。攻撃では20歳になったばかりの175cmと小柄なFWマトコ・ラチュキが、出場試合数(12)の少ない割にリーグトップのゴール(7)を決めている。
| 6位 スラベン・ベルーポ (NK SLAVEN BELUPO) | ![]() |
| 18戦6勝7分5敗 得点21・失点20 勝点25 |
【写真:還俗したミリエンコ・コヴァチッチ】
クロアチア北部、コプリヴニッツァに本拠地を置くスラベン・ベルーポは昨季5位と躍進。その原動力は昨季17ゴール(得点王ランク2位)を挙げたボスニア出身のFWマリオ・ドディクだったのだが、今季の彼は不振で2ゴールに留まっている。その代わりに新加入のFWミリエンコ・コヴァチッチがスピードを活かしたプレーを見せて、チームのトップスコアラーとなっている(6)。コヴァチッチはセリエAのブレシアに所属していた98-99シーズン途中に、僧侶になるという理由で一度現役を引退した変わり種。15節では彼の活躍もあってハイドゥク相手に3-1の金星を挙げた。フォーメーションは3-4-3、3-5-2、3-4-1-2などを併用。この冬に守備の要であったハサン・カチッチがリエーセ(ベルギー)に移籍したが、移籍の話題があったコヴァチッチは引き留めに成功している。
| 7位 チャコベツ (NK CAKOVEC) | ![]() |
| 18戦7勝4分7敗 得点22・失点24 勝点25 |
開幕2連勝後に2分3敗と低迷し、ライコ・マギッチ監督が解任。助監督のミリエンコ・ドヴェチェルが新監督に就任したものの第10節から16節まで2分4敗、その間には5試合連続して無得点と苦しい戦いを強いられた。しかし最後の3試合はいずれも3得点ずつ決めて勝利を収めて7位へと急浮上。フォーメーションは4-3-3。昨季のトップスコアラーでもあるジェリコ・ドムヤニッチが頂点となり、ロングパス主体の攻撃を展開する。今季前半戦のトップスコアラーは右ウィンガーのヴェリボール・ヴェイッチ(6)。最終ラインには元ベルマーレ平塚のブランコ・フチカがいて、DFだけではなく中盤でもプレーする。またGKのイリツァ・ペリッチも高い評価を得ている。ドヴェチェル監督はこの調子を維持し、インタートト・カップ出場を目標に掲げている。
| 8位 フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ (NK HRVATSKI DRAGOVOLJAC) | ![]() |
| 18戦6勝5分7敗 得点22・失点26 勝点23 |
【写真:名物会長スティエパン・スパイッチ】
ザグレブ第3のクラブであるフルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツは、選手以上に会長のスティエパン・スパイッチが目立つクラブである。"キュウリの瓶詰め"工場の社長で愛国主義者であるスパイッチ会長は、戦争時に兵隊用の非常食として瓶詰めを売りさばいて財をなし、ザグレブ郊外のベリカ・ゴリツァのクラブを買い取って、「HRVATSKI
DRAGOVOLJAC("クロアチア義勇軍"の意)」と命名。スタジアムに足を運べば、選手がミスをする度に帽子を地面に叩き付ける彼を見るだけで充分楽しめる。実績のあるルカ・ボナチッチ監督を早々と解任、熱血漢のヴィエラン・シムニッチを新監督に迎えた。フォーメーションは3-5-2。ディフェンスでは前U-21代表のGKシルビオ・チャブリナが安定し、左ストッパーのイヴァン・フミッチはFKが武器。中盤ではトップ下のマリン・ラリッチがテクニシャンぶりを発揮し、8得点とチームトップ。左MFのマリオ・アンドラチッチにはスピードがあり、中盤の底のレオナルド・ビサクも運動量が豊富。しかし起用面で不満を持っていたFWアドリアン・ゴズニク(フランスW杯メンバー)がこの冬に契約破棄、主将のリベロ[/MF]スポメンコ・ボシュニャクがディナモに移籍。スパイッチは補強に私財を投げ打てなかったが、17歳のスター候補生MFマルコ・ヤニェトヴィッチは期待できそうだ。
クロアチア・リーグの再開は2002年2月23日。2ヶ月半という期間はチームを再構築するには充分過ぎるほどの時間だ。NKザクレブが今後も突っ走るか、それともハイドゥク、ディナモといった古豪が巻き返すか。欧州ではマイナーな部類ではあるものの、これを機にクロアチア・リーグに興味を持って頂けたら幸いである。
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