Abstract : A system to operate a camera by breathing sip and puff has been developed for the severely physically disabled. The user can operate the camera at his or her will while watching a small sized display and with auditory feedback. By breathing sip and puff, the user can make the camera body rotate horizontally or vertically, and use the zoom facility. As the user gets used to operating the system, he/she may no longer need the help of the display and may be also to operate the camera by only using the auditory feedback support.
Keywords. Camera control system,; Severely physically disabled; Quality of life;
1.はじめに
高位頚髄損傷による四肢まひ者が,市販一眼レフカメラの操作を可能にする小型コントローラを開発した.操作は,呼気および吸気を利用して行う.操作者は小型のディスプレイと電子音フィードバックをたよりに,カメラのピント調整,シャッターのレリーズ操作,ズーム,そしてカメラ雲台のパン(左右)およびチルト(上下)を自由にコントロールすることができる.また,ピントを合わせたままでの雲台操作(フォーカス・ロック)も可能である.
操作にある程度慣れると,ディスプレイを見ることなしに,電子音フィードバックだけでの操作が可能となる.2.設計指針
今回開発したカメラ・コントローラの設計指針を以下に示す.
(1) 残存機能として呼吸気を利用する
(2) カメラの基本操作をひとりで行うことができること
(3) ファインダーを覗きながらの操作が可能なこと
(4) 操作方法がわかりやすいこと
(5) 野外での使用が可能なこと(1)については,今回開発するカメラ・コントローラの対象者がC4 レベル頚髄損傷者であることから,呼吸気を利用する.すなわち息を吹く・吸うの2入力操作とした.
(2)でいう基本操作とは,ピント合わせ,シャッター操作,ズーム(望遠,広角),雲台のチルト(上下),パン(左右)などである.ただし,カメラ本体および後述する電動雲台の電源スイッチ,およびカメラ・コントローラの主電源操作だけは介助者の手を借りることとする.
(3)については,環境制御装置などではディスプレイを見ながら操作するのが一般的であるのにたいして,今回の操作対象がカメラであるという特殊性,すなわちファインダーを覗きながらカメラの操作をする必要があることから,小型ディスプレイとは別に,電子ブザーによる聴覚フィードバックを付加することで音を頼りに操作することを考えた.
(4)については,操作すべき項目を単に直列的に並べるのではなく,基本選択項目の数は極力減らし,操作に一環性をもたせながら多くの機能を選択できる方法を考える.また,万が一自分の位置を見失っても,いつでも迷路から抜け出すことができるよう操作方式を考える.
(5)については,車いすなどに取り付けて野外で利用するためには,装置の小型化と,どこでも入手しやすいアルカリ電池により長時間作動できることを目標とした.3.システムの構成
図2に,今回開発したコントローラとカメラ・システムの構成を示す.呼吸気圧センサーとしては,市販圧力センサー(CKD製:UPS−02)を2個使用している.コントローラの心臓部には電池駆動が可能な市販CMOSシングルボードコンピュータ(中日電工製:ZB12C)を利用した.ソフトウェアはBASIC言語により記述する.また,呼吸気圧センサー,カメラ本体および電動雲台等との専用インタフェースを新たに開発した.専用インタフェースには,電池の消耗を防止するためのパワーセーブ回路(約4分間使用しないと自動的に電源が切れる)を内蔵させた.また,聴覚フィードバック用に電子ブザーを設け,ブザー音の数や音の持続時間を組み合わせてシステムの状態提示を行う.カメラ本体に取り付ける小型ディスプレイには,電源ON表示のほか機能選択表示(撮影,チルト,パン,ズーム,AFロック)さらにバッテリー電圧低下警報表示,以上7個のLED(発光ダイオード)を並べた.
電動雲台(カメラ本体の角度を上下左右に回転させる装置)には市販製品(King社製:電動パンヘッド)を利用した.これは,コントローラとは別に単三アルカリ電池4本で動作できる.カメラは市販一眼レフカメラ(オリンパス光学工業製:L1)を利用したが,基本的にはどこのメーカのものをも利用可能である.また,カメラ本体への信号線のつなぎ込みは,カメラ・メーカの協力を得て行った.
電動雲台の車いすへの固定には,市販のコミュニケーションエイド用のオプション製品(キャノン製:車いすアタッチメント)を利用した.4.操作方法
システムの操作は息を短く吹く・吸う,長く吹く・吸うの組み合せで行う.
システムの操作の流れを図3に示す.操作の概略は,息を短く吹く回数で各モード(撮影→チルト→パン→ズーム→撮影→・・・)を順次選択する.そして,選択されたモードに応じた表示器のLEDが点灯する.息入力とともに電子音「ピッ」が鳴り入力が確実に行われていることを操作者にフィードバックする.撮影モードに戻ってきた時には電子音が2回「ピッピッ」と鳴るため,いちいちディスプレイを見なくてもスタート位置を知ることができる.また,選択項目が比較的少ないため,操作者自身が入力回数を頭の中で数え雲台の動きのイメージを思い浮かべることで,表示器を見ることなしに,今自分がどのモードを選択しているかを容易に知ることができる.また,約 1.5秒以上,入力が保持されると,どのモードからでも即座に撮影モードに戻ることができる.
選んだモードでの,機能の実行は息を吸うことで行う.例えば電動雲台を右にパン(回転)するためには,まずパン・モードを選択しさらに息を吸い続けている間だけ右に雲台がパンする.左にパンさせたい時は,最初に短く息を吸い,その後いったん吸うのを止め,さらに続けて息を吸うと,吸い続けている間だけ左にパンする.同様に,撮影モードから息を吸うとピント合わせ(1R ON)が行われ,さらに息を吸うことでシャッター操作(2R ON)が完了する.また,ピント合わせが完了した時点で,息を短く吹くとAFロック雲台操作モードへ移行する.ここで,AF(オート・フォーカス)ロックは,目的の被写体にピントを合わせたままの状態で,パンあるいはチルトする場合に使用する.これは,撮りたい被写体がファインダーの中心に無いような時に用いるテクニックである.このモードに移行する時,電子音が「ピッピー」と鳴りこれまでとは異なったモードに移行したことが耳で確認できる.
どのモードの状態からも約4分間,センサー入力が行われないとコントローラの電源が自動的に切れ,スタンバイ状態(パワー・セーブ・モード)へ移行する.再びセンサー入力が行われると,電源が自動的に入り撮影モードが選択される.5.聴覚フィードバックの役割
呼吸気を利用したセンサー操作において比較的困難が予想されるのは,はたして短点入力と長点入力(ある一定時間以上,入力する)を区別しながら入力ができるかという疑問である.
当初,電子ブザーによる聴覚フィードバックがない状態で被験者に操作してもらったところ,とくに長点入力において必要以上の圧力をかけてしまう傾向が強く,操作者の操作負担が増大した.そこで,図4に示すような聴覚フィードバックを与えたところ,センサー操作による負担は大幅に軽減することができた.但し,雲台やズーム操作など実際の動きをともなうものについては,聴覚フィードバックは設けていない.6.評価
現在,交通事故の後遺症により首から下の身体部位が完全にまひした高位頚髄損傷四肢まひ者において長期モニターを行っている.
これまで行った評価テストでは,ほとんどの被験者が短時間内(数分〜5分程度)に操作の習得が可能であった.ただし,テレ(望遠)状態でパンあるいはチルトするような場合,雲台が速く動き過ぎてなかなか目標となる被写体に合わせにくいという問題点が指摘された.これにたいしては,テレ状態での雲台の移動スピードを低く抑えることを検討している.
また,カメラ以外のニーズとして,ビデオカメラの操作,メモ帳代りのテープレコーダの操作など,新たなニーズがあげられている.7.おわりに
今回報告したような極小量生産品をどのようなシステムで供給して行くかについて検討を進めている.
本システムの開発を強力に推進できた背景に,技術ボランティア(共同発表者)の存在がある.このような企業および技術ボランティアなど人的および技術資源をいかにしたら障害をもつ人のための道具作りに導入していけるかが一つのカギを握っていると考えている.参考資料
1)上村数洋:私にも撮せます!− 頚髄損傷者のカメラ撮影について−,リハビリテーション工学協会誌,5‐1,37〜40,1990
(1992年 第8回ヒューマン・インタフェース・シンポジウムにおいて発表)