小型タブレットを用いた
キーボード・マウス・エミュレータの開発The development of keyboard and mouse emulator use of small sized digitizing tablet
畠山 卓朗(星城大学リハビリテーション学部) 佐々木 武, 今岡 克己((株)ワコムアイティ)
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キーワード:重度障がい,入力装置,小型タブレット,パソコン操作
1 はじめに
筆者等は過去に小型タブレットを用いたキーボード・マウス・エミュレータを開発し実用に供してきた1) 2) 障がいがある人が電子ペンによりタブレット盤面上の特定箇所をクリックすることで,キーボード操作とマウスポインター操作を切り換え,狭い範囲のポインティング操作のみでパソコンの基本操作操作を行うことができるようになる.過去に開発した装置2) はパソコン外部に接続するハードウェアによるエミュレータ(模倣装置)であることから市販価格が高くなるという弱点があった.今回エミュレータをソフトウェアで実現し,比較的低価格で提供することができるシステムを開発したので報告する.
2 背景
障がいのある人のパソコン操作を可能にするには,様々な手段が用意されている.パソコンの基本ソフトに標準で内蔵されたユーザー補助(Windows OS)やユニバーサルアクセス(Mac OS X),キーガードやマウススティックなどの入力用補助具,小型キーボードや大型キーボード,オンスクリーンキーボード,さらに1入力操作方式代替入力ソフトなどがある.過去20数年間あまりの間にパソコンは目覚ましい進歩を遂げた.それとともに,障がいのある人を対象として開発された入力装置は短期間で陳腐化してしまい,新しいパソコン環境下ではハード的あるいはソフト的インタフェースが異なるために活用できなくなくなってしまう現象が生じている.一方で,障がいのある人のための入力装置の市場は極端に小さいため市販化までに至るものは非常に限られている.このようなことから筆者等が過去に開発した入力システムも一定期間実用に供したものの,その後のその後の存続が困難になったという経緯がある.以上のことから,一般市場に流通している安価な入力装置を活用し,それに付加的なソフトウェアを組み合わせることで実現できる低廉化システムが望まれている.
3 開発したシステム
3.1 構成と設定
システムは,市販ペンタブレット(ワコム社製 FAVO CTEシリーズ, FAVO Bluetoothなど),新たに開発したソフトウェア ペンKBマウス(対象OS:Windows XP, 98SEなど),タブレット用シートから構成される.シートサイズは4種類あり,小(W80mm×H58mm),中(W104mm×H79mm),大(W127mm×H93mm),特大(W210mm×H148mm),障がいの状況やニーズに応じて選択する.但し,特大サイズシートを利用するためにはA5サイズタブレットが必要となる.パソコンOSにタブレット・ドライバーソフトをインストールした後,今回開発したペンKBマウスソフトウェアを自動起動するようにセットしておく.それにより,パソコンが起動すると同時に,ユーザは電子ペンにより市販アプリケーションソフトを実行させることができるようになる.
3.2 操作方法
図1にタブレットシートを示す.碁盤の目状に方形が並んでいる.領域を大きく2つに分けて,最上段はモード選択領域,その下の領域はキーボード/マウス入力領域となっている.モード選択領域には,キーボード・マウス間のモード切り換えボタンや比較的良く使われるキーを配置した.キーボード/マウス入力領域は,キーボード・モード時には電子ペンの先端でポインティングしたキーがキー入力され,マウス・モード時にはタブレット盤面を電子ペンの先端でなぞった軌跡がマウス入力される.
図1 タブレットシート
3.3 各種モード
(1) キーボード/マウス入力モード
メニューシートのキーボード/マウス入力領域をキーボード入力領域として使用するか,マウス入力領域として使用するかを切り換える.ペンKBマウス起動直後はマウス入力モードに設定される.キーボード入力モードでは,キーボード/マウス入力領域でキー入力を行なうことができる.キーボード入力モードに切り替えるには,メニューシート上の[キーボードモード]をペンタッチする.キーボード入力モードに切り替わると、モードインジケータにアイコンが表示される.
マウス入力モードでは,キーボード/マウス入力領域でマウス入力を行なうことができる.マウス入力は常に相対座標モードで動作する.マウス入力モードに切り替えるには、メニューシート上の[マウスモード]をペンタッチする.マウス入力モードに切り替わると,モードインジケータにアイコンが表示される.
(2) Shift,Ctrl,Altキーモード
キーボード入力モードでのShift,Ctrl,Altキーの状態を切り替える.モードを切り替えるには、メニューシート上の[Shift],[Ctrl],および[Alt],をペンタッチする.ペンタッチするたびにShift,Ctrl,およびAltモード,モード解除が交互に切り替わる.各モード時は,モードインジケータにアイコンが表示される.
図2 電子ペンによる操作
図3 頚髄損傷による四肢マヒがある人の利用イメージ4 おわりに
今回開発したシステムの適用となる対象として,筋ジストロフィ,ALS,頚髄損傷による四肢マヒがある方などを想定している.
なお,本システムの制約上[Ctrl]+[Alt]+[Delete]キーを入力することができない.従ってスクリーンセイバーではパスワードを非設定にする必要がある.今後,ソフトの改良を重ねるとともに,試用希望者にインターネット経由で無償提供する予定である.
本研究開発に対しては星城大学リハビリテーションシステム開発研究所 特別奨励費の助成を受けた.
参考文献
1) 畠山卓朗,他:重度肢体障害者用キーボード・マウス・エミュレータの開発,第1回リハ工学カンファレンス講演論文集,pp.177-182,1986
2) 畠山卓朗,他:重度肢体障害者用パソコン入力装置(KBマウス)の適用,第5回リハ工学カンファレンス講演論文集,pp.269-270,1990
2006 第21回リハ工学カンファレンスにおいて発表
畠山卓朗,政木憲司:小型タブレットを用いたキーボード・マウス・エミュレータの開発,第21回リハ工学カンファレンス講演論文集,pp.317-318(2006)