手づくりパン「ポッポ」を訪ねて
八王子・生活者ネットワーク 佐久間寛子
●住宅や家内工場のまちで (大阪市西成区長橋2−5−11)
10月20日(木)午前10時30分、JR今宮駅から徒歩で15分ぐらいのところにある、住まいと仕事場を兼ねた住宅街に、モルタル木造2階建て(17坪)のパン工場がありました。路地を挟んで隣は個人経営の靴工場や関西でよく見かける文化住宅、5階建て市営団地のまちとつながっています。1階の工場では丁度、イギリスパンの焼きあがった、香ばしいパンの香りが外まで広がっていました。
●手づくり無添加パンの店 障害者と健常者の協働の場づくり、設立趣旨と経過
1985年10月立ち上げまでの思いとこれまでを代表森本秀治さんに伺いました。
障害者と健常者の共働の場づくりを目指し、両者が経済的にも成り立つような仕事をやりたいと思いを実現させてきました。当時、森本さん自身、15年間
施設生活を余儀なくせざるを得ない中、18歳を向かえ、児童福祉の対象から成人福祉の対象という年齢になり、いったん自宅に戻り家族と生活を始めたものの、家には自分がいる場がなくなっている現実がありました。
そのため、障がい者のための仕事場として、生活も共同の印刷工場へ就職しました。しかし、「障がい者ばっかの仕事と生活は変だ」と思い、自ら障がい者だけではない地域の中の生活、また共に働く場づくりを目指します。まず、従来の作業所とは違い、できる限り生産性も考えて、なおかつその中で、障がい者が中心となった当事者主体のものを目指しています。
障がい者の仕事というと洗濯ばさみ組み立てなどの内職的作業所ではなく、儲ける仕事を探すことから始めたとのこと。そして、指導員の下で働くのではなく、障がい者ペースが守れる、障がい者も健常者も50%と50%で作っていく。そして仕事の効率も上がる、仕事場を目指しました。また、大きな集団になりがちな作業所ではなくメンバーの人数や条件等も限定しました。ないことは無いと、仕事はやれるとの思いが人のつながりを広げていきました。
●なぜパンを選んだのか。そして、味のこだわりと市場性とメンバー
19年前、大西、川上、森本、石田さんの4人で個人的な借金300万円を元に西成区津守で無添加パ手づくりパン「ポッポ」を立ち上げとなりました。障がい者1人と健常者3人がその仕事でみんなが生活できるぐらいの給料出る仕事をやりたいねとということがきっかです。なぜパンを選んだか。食べればおしまいなので、回転が速い。

当時無添加、天然酵母(ほしの)のパン屋少なかったことから、うたい文句としての市場性がある。まったくの素人の森本さんが名古屋のわっぱの会で2週間研修を受け開業したのです。失敗品も知り合いの学童保育所で食べてもらうなど、経営は大変厳しかったと、当時の森本さんの生活の困窮が伝わってくる様子でした。
しかし、5年で返済したのです。その後障がい者4人増え、健常者も2人増え、現在も10人前後で障がい者、健常者の割合も半々のところは変わっていません。運営の主導権も障がい者が握っています。製造現場での主導権は健常者ですが、持ち場持ち場で障がい当事者の技術、経験が発揮されています。勤続19年の方は中卒で34歳。予約注文に応じて、毎朝、午前2時より天然酵母パンの仕込が始まります。長年の経験と手抜きをしないことがパンの味の評判につながっています。営業や配達を得意としている方も売り上げに大きく貢献しています。
●運営と経営状況:1991年 大阪市より作業所の助成を受ける。(当時7人枠だったのが5人枠になり、700万円と家賃月16万円、光熱水費つき10万円)
1992年 西成区に移転。(設備投資600万円)、第2工場大黒町にも
2005年 売り上げ 年2400万円(月200万円)
販売先 生協(自然派)80%、事業連合、保育所、他生協、他作業所
給料 基本給7万円(健常者14万円)と障害年金(7万円)と技術、扶養など加算。売り上げを伸ばすことも難しい中、年金も合わせての計算となっている、障がい者にしわ寄せされていることを悩みつつ。
●視察を終えて
今回、私にも共同の実感が伝わってきた。
共に生き、共に働く場の保障のために、自ら仕事を作ってきた自負と自信、共同でありとあらゆる差別をなくすことを目指す現場を訪ねることができた。
誰もが一人ひとりの生活があるように、その生活を支える収入も自ら働いてまかなうという、当たり前の生活を手に入れること、これが今日大変厳しい状況にあるのは誰の身にも同じだ。しかし、障がい者は、自らの思いを仕事につなげ、収入とするのはさらに厳しい状況を余儀なくされている。労働への参加によって、どんな障がいがある人もすべて、社会的・経済的に自立できるような事業体を育てていくことが必要。この共同連の人たちの実践によって、障がい者の労働権保障の確立のため取り組みが全国に広がっている。
パン屋として「ポッポ」のメンバーは材料にこだわり、味にこだわった、まちに必要な機能として工場を動かしている。そこで働いている人として一人ひとりが存在している。行政には、そのために必要な制度を福祉からだけではなく、経産省へも労働権保障を求める運動を展開している。この10月末に、障害者自立支援法が成立した。応分の負担を求める前にすべきことは明らかだ。
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